【テンプレートあり】事業承継のお知らせや通知・案内に記載すべきことや注意点などを徹底解説!!

事業承継が無事完了すると、さまざまな関係者に対してお知らせや通知、案内などを出します。これらは法的に義務付けられているわけではありませんが、事業承継をおこなったほぼすべての企業は実際にこのような挨拶状を出しています。

こういった挨拶状は、前述のように法的に義務付けられているわけではないため、特別に記載すべき内容が定められているわけではありません。しかしそれでも、最低限記載しておいたほうがよい内容などは存在します。

なぜなら事業承継はその方式によって債権や債務の権利義務が承継後に変わる可能性があるため、今後の取引のためにそれらを明記しておく必要があるからです。

またそれだけでなく、この挨拶状は事業承継後の関係者との新たな始まりにもなります。

債権者や債務者、得意先などすべての関係者は、事業承継後に会社がどう変わっていくのかをじっと見ています。「取引を継続してくれるのだろうか?」「本当に信用できる会社なのだろうか?」と不安に思っている得意先に対して、最初に届く案内状に不手際があっては今後の取引に対する不安をあおってしまうことになりかねません。

そこで本日は、事業承継後の船出を無事に乗り切るため、事業承継のお知らせや通知・案内などの書き方や記載事項、注意点などについて各種のテンプレートを交えながらじっくりと解説していきたいと思います。

企業にとっての事業承継とは

事業承継のお知らせや通知、案内などについてご説明する前に、企業にとって事業承継が果たす役割と、得意先に与える影響などについて整理してみたいと思います。

事業承継とは

事業承継とは、起業家やオーナー経営者が育ててきた会社を次の経営者にバトンタッチすることにより、経営者だけでなく企業全体の若返りを図り、より大きく飛躍するための経営手段の一つです。

企業にとっての事業承継とは

企業が事業承継をする目的は、単に経営者の高齢化対策のためだけではありません。一般に、事業承継が遅れ経営者が高齢化していくにつれ、企業の売上高や利益率は低下していく傾向にあります。

この低下を食い止め、より発展していくためには、企業は積極的に事業承継に取り組まなければならないのです。

事業承継にお知らせや通知は必要?

得意先への事業承継のお知らせや通知は、法律などで義務づけられているわけではありません。しかし、上述のように事業承継後に関係者や得意先との取引をスムーズにおこなうためには、事業承継のお知らせや通知などは欠かせません。

事実、事業承継を済ませた会社のほとんどは、関係者や得意先などに向けてお知らせや通知をおこなっています。

そこでこの章では、事業承継のお知らせや通知の重要性について多角的に考えてみたいと思います。

株式譲渡による事業承継のお知らせの重要性について

株式譲渡とは、譲渡企業の株主が譲受企業に株式を譲渡することにより事業承継を完成させる事業承継の手法のひとつです。事業承継後も、譲渡企業のオーナーが従来の株主から譲受企業へと変わったにすぎないため外形上の変化は特になく、商号も屋号も住所も従業員も基本的にはそのままです。

そして引継ぎが終わるまでの間は、譲渡企業の経営者が役員などに残る場合がほとんどです。

つまり、外から見た限り事業承継前と後とではそれほどの差はありません。しかし会社の株主が変わったわけですから、当然今までと同じというわけではありません。

得意先や取引先からは、「これまでの取引が継続されるのか?」「このまま取引を継続しても大丈夫なのか」と不安に思われることも考えられます。

このような得意先や取引先などの不安や懸念を払拭し、今後も順調に取引を継続していくためには事業承継のお知らせをすることはとても大切です。

また、譲受企業側についても事業承継のお知らせを得意先や取引先におこなうことは重要です。会社を丸ごとM&Aしたのは、より一層の飛躍を目指してのことです。そのためには、これまで以上に得意先や取引先との関係強化が必要だからです。

場合によっては値下げなどの協力もお願いしなければならない時も出てくるでしょうから、相手の不安や懸念を払拭し、安心して取引を継続できるようにするためにも事業承継のお知らせは大切です。

事業譲渡による事業承継のお知らせの重要性について

事業譲渡とは、会社の一部を譲渡企業から切り取り、それを譲受企業の事業部門の一部とすることにより事業承継を完成させる事業承継の手法のひとつです。

譲渡企業側は事業規模を縮小して継続していく場合もありますが、残った事業部門を整理して廃業していく場合もあります。

いっぽう譲受企業側は新規事業部門を手に入れたわけですから、これから一気に飛躍するチャンスです。

事業を縮小する場合も、廃業に向かっていく場合も、そしてより一層の飛躍を目指す場合も、どの場合であっても、得意先や取引先との関係を良好にしておくことは大切です。

そのためには、事業承継のお知らせをして得意先などにこちらの状況を理解しておいてもらった方が今後のやりとりがスムーズに進みます。

事業承継のお知らせや通知・案内に記載すべきこと

それでは、実際に事業承継のお知らせや通知・案内状をどのように書くのかについて説明していきます。

まず、お知らせや通知などには決まったフォームなどはありません。だからといって何でも好きなことを書けばよいというわけでもありません。

最低限押さえておきたいこと、伝えておきたい必要事項を記載し、最後にひと言添える程度が読み手にとっても負担がかからず一番です。

そこでこの章では、お知らせや通知などに最低限記載すべき事項についてご紹介していきます。

文頭の挨拶

挨拶文とは、「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。」などで始まるビジネスレターのテンプレートによくある一文のことをいいます。

これを書いても書かなくても、この後に続く伝えなければならないことには何の影響もありませんが、こういった形式的なことはビジネスをしていく上で通例とされています。

読んでいる相手に事業承継についての理解を求め、誤解や不安を与えないようにするためには、こういった配慮はしておいた方がよいでしょう。

事業承継が完了した日

事業承継の手法によっては、事業承継日の前後で債権や債務に関する権利義務が変わる場合があります。

このように、事業承継が完了した日は譲渡企業や譲受企業だけでなく得意先や取引先などにとっても大切なことですから、必ず記載します。

事業の引継ぎ先

得意先や取引先が最も聞きたいことの一つが、事業承継後の事業の引継ぎ先です。株式譲渡による事業承継であれば承継後も会社はそのまま残るため権利や義務の移動はありませんが、事業譲渡による事業承継などの場合には、債権や債務の権利義務が変わる場合があります。

そのため、誰(どの企業)が事業を引き継いだのかは必ず記載しておかなければなりません。

本社の住所や問い合わせ先

事業承継によって本社の住所や問い合わせ先が変わることがあります。事業承継後はどこの誰に問い合わせてもらえばよいのかを得意先などに明確にしておくために、本社の住所や問い合わせ先などは必ず記載しておきましょう。

株式譲渡による事業承継のお知らせ・通知・案内のテンプレート

株式譲渡による事業譲渡のお知らせや通知・案内をする場合、必ず記載すべき事項は以下のとおりです。

  • 冒頭の挨拶
  • 株式譲渡日
  • 譲受企業名
  • 新しい代表取締役(代表取締役などが交代した場合)
  • 送り主の社名と住所

冒頭の挨拶

冒頭の挨拶の大切さについては、上述したとおりです。なお、冒頭の挨拶としてよく用いられる文言としては、以下のようなものがあります。

  • 拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
  • 拝啓 貴社ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
  • 拝啓 貴社ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
  • 拝啓 〇〇の候、貴社ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

これらの中から相応しいと思うものを選び、多少のアレンジを加えて文頭に添えます。

株式譲渡日

株式譲渡日以降権利義務が変わるため、必ず記載しておきます。

譲受企業名

譲渡企業がどこへ譲り受けられたのかを記載することにより、事業の引継ぎ先の紹介にもなります。

新しい代表取締役(代表取締役などが交代した場合)

株式譲渡により会社のオーナーが変わると、多くの場合代表取締役や取締役が変更されます。その場合は新しい代表取締役などを記載しておきます。

こうしておくと、挨拶状が得意先などに対する代表取締役の紹介状も兼ねることができます。

送り主の社名と住所

株式譲渡による事業承継は会社のオーナーが変わるだけで外形上の変更はほとんどありません。ですから大抵の場合は社名も住所も変わりませんが、そのことを得意先や関係者に知らせるためにも送り主の社名や住所は必ず記載しておきましょう。

株式譲渡による事業承継の挨拶状のテンプレート

拝啓 〇〇の候、貴社ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

さて この度弊社は令和〇〇年〇月〇日をもちまして〇〇〇株式会社に株式を譲渡いたしました。

また弊社株主総会ならびに取締役会におきまして左記のとおり役員が選任されそれぞれ就任いたしました。
つきましては今後〇〇〇グループの一員となり、新体制のもと一層の社業の発展に努力いたす所存でございます。
なにとぞ倍旧のご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

まずは略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます  敬具

令和〇〇年〇月吉日 株式会社〇〇〇〇
代表取締役社長 〇〇〇〇
————————————————

代表取締役会長 〇〇〇〇(新任)
代表取締役社長 〇〇〇〇
取締役副社長 〇〇〇〇(新任)
取締役 〇〇〇〇
監査役 〇〇〇〇(新任)

事業譲渡による事業承継のお知らせ・通知・案内のテンプレート

事業譲渡による事業承継のお知らせなどに記載すべき事項も基本的には株式譲渡の場合と同じですが、株式譲渡とは違い譲渡する事業部門は譲受企業の一部となります。

そのため、事業譲渡日や譲渡先企業名、そして送り主の所在地や社名などは必ず記載するように心がけましょう。

事業譲渡による事業承継の挨拶状を出す場合に気を付けるべき点

事業譲渡による事業承継の挨拶状を書くとき、つい力が入って「〇〇会社の事業は△△会社が責任をもって引き継いでいきます」と書いてしまいがちですが、この書き方には注意しなければなりません。

間違えて「責任をもって債務を引き継ぐ」などと書いてしまうと、債務引受広告とみなされてしまう可能性があります。

事業譲渡で商号や屋号をそのまま引き継がないのであれば、譲渡企業の債務の弁済義務を引き継ぐことはありませんが、債務引受広告を出した場合は別です。

会社法第23条1項には、

譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用しない場合においても、譲渡会社の事業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡会社の債権者は、その譲受会社に対して弁済の請求をすることができる。

と書かれています。

そのため、債務引受広告と間違えられてしまいそうな表現を挨拶状で使うのはできるだけ避けておくのが賢明でしょう。

事業譲渡による事業承継の挨拶状のテンプレート

拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。

さて、このたび〇〇株式会社は令和 〇〇年〇月〇日をもちまして、〇〇に関する事業を株式会社〇〇に譲渡することとなりました。長年にわたり賜りましたご愛顧、ご厚情に対しまして、誠にありがたく心より御礼申し上げます。

同事業部門従業員一同、新たな体制で皆様のご要望にお応えしていく所存で ございますので、なにとぞ倍旧のご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

まずは略儀ながら書面をもちましてご挨拶申し上げます。

敬具

令和〇年〇月吉日

株式会社〇〇
代表取締役社長 〇〇
株式会社△△
代表取締役社長 △△

【事業譲受会社】
株式会社△△
(所在地) 〒〇〇〇-〇〇〇〇 東京都〇〇区
(電話番号) 〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇

【事業譲渡会社】
株式会社〇〇
(所在地) 〒〇〇〇-〇〇〇〇 埼玉県〇〇市
(電話番号) 〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇

なお、本件に対するお問い合わせは、株式会社〇〇までお願いいたします。

最後に

事業譲渡が完了すると、それを得意先などへ知らせるための挨拶状を送付します。たかが挨拶状ではありますが、これが各関係者との今後の関係を構築するためのスタートラインでもあります。好印象を持ってもらえるかどうかで、今後のビジネス展開が大きく変わる可能性もあります。

少なくとも、「挨拶状もまともに書けないのでは今後が思いやられる」と思われないようにしなければなりません。

もし少しでもご心配であれば、事業承継の仲介機関などにチェックしてもらうことをおすすめします。こういった会社は何百・何千もの事業承継をこなした経験があるため、事業承継に関するあらゆるノウハウと成功パターンだけでなく、失敗のデータも豊富に持っています。

なお当社は、経営知識や実務経験が一定以上である認定経営革新等支援機関に認定されており、税理士や弁護士などの士業専門家と提携しつつ、事業承継をはじめさまざまな経営支援からM&Aまで、幅広い視野に立ち経営者のみなさんを万全の態勢でサポートしています。

「事業譲渡を検討してみたい」と思われた方はぜひ一度お気軽にご相談ください。


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