M&Aによる事業承継の特徴とそのメリット・デメリットについて

事業承継には、親族に事業を承継させる親族内承継や、社内から従業員などを登用する親族外承継をはじめ、さまざまな手法があります。

それらの手法のひとつとして、近年注目を浴びているのがM&Aです。かつてM&Aという言葉に馴染みがなかったころは、M&Aといえば外資系企業や大企業同士で行うイメージが強かったのですが、最近では中小企業はもちろんのこと、個人事業でも頻繁に行われています。

そこでこの記事では、M&Aに興味がある方や、事業承継の手法の一つとして検討してみたい方のために、M&Aの特徴やメリット・デメリット、そして他の承継方法とのちがいなどについて解説していきます。

事業承継とその方法について

事業承継とは、企業の経営権や資産・負債だけでなく、経営理念や企業風土など、承継する事業に関する有形無形のすべてのものを現経営者から次の経営者に引き継ぐことをいいます。

事業承継の手法は5

事業承継には、全部で5つの手法があります。

  1. 親族内承継
  2. 親族外承継
  3. M&A
  4. 清算・廃業
  5. 株式上場

1、親族内承継

親族内承継とは、経営者の親族(おもに子供など)に事業を承継させる方法のことをいいます。

2、親族外承継

親族外承継とは、経営者の親族でない人物に事業を承継させる方法のことをいいます。なお、親族外承継で後継者となる人物は社内から登用される場合が多く、生え抜きの社員や役員などがおもに選ばれます。

3、M&A

M&Aとは、会社や事業の一部を他の会社に譲渡することにより事業の存続を図る承継方法のことをいいます。譲渡側は対価を得ることができ、譲受側は事業拡大や新規事業への参入が容易になります。

4、清算・廃業

清算・廃業とは、事業承継を行わず、事業を廃止することをいいます。清算や廃業を選んでしまうと、創業者利益を確保することができず、また、従業員の雇用も喪失してしまいます。

さらに、廃業時の廃業費用も必要となります。

5、株式上場

株式上場とは、会社の株式を株式市場で売買することにより市場から直接資金調達を可能にすることをいいます。

上場前と比べると会社の株式は分散してしまいますが、その分自社の株式を市場で売買することができるため、資金の調達が容易になります。

株式上場は多くの起業家にとっての夢ではありますが、努力だけで達成できるわけではないため、ハードルは極めて高いといえます。

なお、企業経営者が事業承継を考えた場合、必ずこれら5つのどれかを選択することになります。

M&Aとは

M&Aとは、「Mergers(合併)」and 「Acquisitions(買収)」の略語で、企業の合併や買収を総称してこう呼びます。

中小企業のM&A

大企業のM&Aは、「国際競争力をつけるため」「国内市場競争力強化のため」「破綻企業再生のため」などの目的で行われることが多いのに対し、中小企業のM&Aは後継者不在問題の解決や、事業規模の拡大などのために行われることが多いです。

また、上場企業の株式は市場で売買されているため、TOBによる敵対的買収がしばしば行われることもありますが、中小企業の場合、株式の購入は株主との相対取引でなければできず、また株式そのものが譲渡制限株式である場合が多いため、ほとんどのM&Aが友好的に行われます。

M&Aの手法

中小企業のM&Aで用いられる代表的な手法としては、以下の2つがあります。

  • 株式譲渡
  • 事業譲渡

株式譲渡

会社の発行済み株式を譲渡希望会社の株主から譲受希望会社が買い取ることにより、会社を丸ごと譲渡する方法を株式譲渡といいます。

譲渡された会社は譲り受けた会社の子会社として残るため、株主や役員の構成が変わる以外は基本的に変わることはありません。

譲渡後は親会社の資本力を背景に事業展開ができるようになるため、より発展できる可能性が高くなります。

事業譲渡

事業譲渡とは、事業の一部を切り取って譲渡希望企業に譲り渡すことをいいます。売り手にとっては残したい部分を残すことができ、また買い手にとっては欲しい部分だけを買うことができるため、小規模事業者の間でも活発に行われています。

具体的には、譲渡事業にかかわる資産や負債などを個別に移動させるため株式譲渡と比べると手間と時間はかかりますが、その分簿外債務などのリスクを低減することができます。

事業譲渡は、特に美容院や飲食店などの店舗型事業で頻繁に用いられています。

M&Aの費用

M&Aを行う場合、一般的には仲介会社などの専門家に依頼し、対象企業の選定からクロージングまですべての段階でサポートを受けながら進んでいきます。そのため、手数料が必要となります。

また、M&Aの手法によっては別途税金の納税義務が発生します。

なお、M&Aの費用に関する詳しい内容については、こちらをご覧ください。

【承継方法別】いくら必要?事業承継に必要な費用を徹底解説!

M&Aと他の手法との違い

では次に、M&Aが他の事業承継の手法と比べどのようにことなるのかを見てみましょう。

  1. 譲受企業の子会社(もしくは一部門)となる
  2. PMIを行わなければならない
  3. 譲渡所得に対して課税される

違い① 譲受企業の子会社(もしくは一部門)となる

株式譲渡により事業承継を行うと、株式を譲り受けた企業の子会社として新たにスタートすることになります。通常は社名や住所は変わらず、従業員の雇用も引き続き継続されますが、役員の構成はすべて変わります。

また事業譲渡の場合、資産や負債、そして従業員などが譲渡先へ移動し、その一部門として再出発します。

これに対し親族内や親族外の承継の場合、株主や代表取締役が事業承継者に変わる以外は基本的に何も変わりません。

違い② PMIを行わなければならない

PMIとは「Post Merger Integration:ポスト・マージャー・インテグレーション」の略で、M&A成立後に発生する様々なすり合わせ事項の確認と統合プロセスを意味します。

親族内や親族外の事業承継とはちがい、当初予定していたシナジー効果を発揮させるための準備が必要となります。

違い③ 譲渡所得に対して課税される

親族内承継や親族外承継の場合、事業承継税制を活用すると贈与税や相続税が納税猶予され、さらに次の承継者へ承継が完了すれば、納税自体が免税となります。

しかしM&Aの場合、対価をもって株式や事業用資産を譲渡するため、株式の譲渡であれば譲渡所得税が、資産の譲渡であればその譲渡益に対して法人税(もしくは所得税)が課税されます。

M&Aによる事業譲渡のメリットやデメリット

それでは最後に、M&Aを他の手法と比較した場合のメリットやデメリットについて解説します。

メリット① 創業者利益が獲得できる

M&Aによる事業承継は、他の承継方法とは違い、創業者としての利益を獲得することができます。会社の株式は対価と引き換えに譲渡するため、企業価値が高ければ高いほど、その対価も高額になります。

リスクを抱えて起業し、長年にわたって心労に耐えながら従業員の雇用を支え続けた経営者にとって、M&Aとはその苦労が対価として報われる瞬間でもあります。

株式上場でも創業者利益は獲得できますが、これはあまり一般的ではありません。しかしM&Aであれば、多くの経営者にとってハッピーリタイアを迎えるための創業者利益を得るチャンスを手にすることが出来ます。

メリット② 事業承継後に事業規模を拡大することができる

一般的に譲受希望会社は譲渡希望会社よりも資本力があるため、事業承継が完了後は、親会社の資本力や工場などの設備、また営業力を活かして事業規模をより拡大するチャンスを得ることが出来ます。

親族内や親族外の承継では基本的に資本の構成は変わらないため、M&Aを活用すると、苦労して育てた会社がより一層飛躍するチャンスを得ることになります。

メリット③ 幅広く後継者にふさわしい人材を選ぶことができる

親族内や親族外の承継ではどうしても後継者候補の選定に制限がありますが、M&Aであれば数多くの希望企業の中から最もふさわしいと思われる企業を選び、譲渡することができます。

そのため、親族内や親族外の承継と比べると、より広く、ふさわしい人材を後継者に迎え入れることができるようになります。

デメリット 仲介会社などの専門家への手数料が必要になる。

M&Aによる事業承継を行う場合、仲介会社などの専門家へ依頼して行うのが一般的です。M&Aは高度な専門知識が必要なため、こういった専門家のサポートは不可欠ですが、そのための手数料の支払いが発生します。

ただし、2020年に創設された「経営資源引継ぎ補助金」を活用すると、M&Aの仲介手数料の補助を受けることができるため、以前と比べるとこういったハードルはかなり下がっているといえます。10月から2次公募も開始されるので、補助金をうまく活用しながら費用を抑えM&Aを検討されることをお勧めします。

M&Aによる事業承継をお考えの方はぜひ専門家へご相談を

M&Aによる事業承継は、他の承継方法と比べ、創業者の苦労が対価で報われるという特性があります。

しかし、M&Aのすべてが成功するわけではありません。自社の隠れた魅力を最大限引き出し、それを最も高く評価している企業とマッチングさせていかなければ、お互いにとって最良のM&Aにはなりません。

そのためには、事業承継の経験が豊富な専門家に依頼しなければなりません。

当社は、経営知識や実務経験が一定以上である認定経営革新等支援機関に認定されており、税理士や弁護士などの士業専門家と提携しつつ、事業承継をはじめさまざまな経営支援に日夜取り組んでいます。

また、日本中のネットワークを生かし、豊富な実績と幅広い視野で経営者のみなさんを万全の体制でサポートしています。専任の担当者が丁寧にお話を伺い、貴社にとって最善の進め方をご提案いたします(方針のご提案は無料です)。

「事業承継について検討してみたい」と思われた方はぜひ一度お気軽にご相談ください。


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