
会社を休業させる手続きには、事業停止や休業届の提出があります。これらの手続きに不備があると、将来的に問題が生じかねないため注意しましょう。この記事では、休業の手続きやメリット・デメリットを紹介します。
会社の休業(休眠)とは

会社の休業とは、登記簿上に記録を残した状態のままで、会社が手掛けている事業活動をすべてストップさせて、会社を眠らせた状態にすることです。別名、休眠とも呼ばれています。なお、一般的に休業の状態にある会社は休眠会社と呼ばれますが、会社法上では最後に登記を行った日から12年以上経過している株式会社のことを休眠会社と表します。
休業と廃業の違い
休業と類似する言葉に、廃業があります。廃業とは、いかなる理由・原因に関わらず事業をやめることです。廃業では会社の解散登記および清算手続きを行う必要があり、清算手続きの完了によって会社は消滅します。その一方で、休業では会社が消滅しません。つまり、会社の存続の有無によって、両者を区別することが可能です。
会社を休業させる方法
会社を休業させるには、税務署および都道府県税事務所/市区町村役場に対して届出を提出する必要があります。
もともと会社には、国税(法人税)と地方税(法人事業税/法人住民税)が課されます。このうち、国税は税務署、地方税は都道府県税事務所および市区町村役場がそれぞれ管轄していることから、会社を休眠させる際はこれらの役所に対する届出が必要です。
会社を休業させる際に提出する届出は、一般的に休業届(休眠届)と呼ばれていますが、実際に提出が求められる書類の名称は「異動届出書」です。つまり、この異動届出書に会社を休業させる旨を記載し提出することが求められます。
会社を休業させるメリット・デメリット
休業は会社にとって悪影響を及ぼすイメージを抱いている経営者の方も多く見られますが、会社の休業にはメリットも存在していることから、これに魅力を感じて休眠会社になることを選択するケースも少なくありません。
そこで、本章では休業がもたらす具体的なメリット・デメリットを順番に取り上げます。
休業のメリット
もしも事業を行わないままの状態で会社を放置する場合、休業させた方が無駄な費用を発生させずに済む可能性があります。
仮に会社を廃業する場合、解散登記や清算手続きが求められることから、税理士や司法書士など専門家や法務局に対して支払う費用が多くかかります。これに対して、休業させる場合は、税務署と市区町村に休業届を提出するのみで済むため費用がかかりません。
また、たとえ所得が発生していない場合でも、会社には法人住民税の均等割が課せられます。しかし、休業届を提出することで、自治体によっては均等割が免除・減免されるケースもあるのです。
さらに、都道府県と市町村に対しては、休業届の提出時と同じように「異動届出書」の提出により事業を再開できるため、非常に手続きが簡単です。以上のことから、「一定期間のみ事業を休止したいケース」や「将来的に事業を再開する見込みのあるケース」などでは、会社を休業させるメリットが大きいといえます。
休業のデメリット
たとえ会社を休業させたとしても、納税義務は消滅しないため、当然ながら税務申告が求められます。また、休業中の会社に対して法人住民税の均等割が発生するケースもあるため、税負担が完全に消滅するわけではないという点を把握しておきましょう。
さらに、休眠中であっても、役員の任期満了時には役員変更の登記申請が必要です。仮に登記を怠ってしまえば、代表者が100万円以下の過料に処せられるおそれがあります。そのほか、最終登記から12年が経過すると「みなし解散」として扱われる点も注意すべきです。
会社を休業させる手続き・流れ

実際に会社を休業させる際は、以下の流れで手続きを進めます。
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事業の停止
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休業届の作成・提出
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休業届の受理・休眠状態
それぞれの手続きを順番に詳しく解説をします。
①事業の停止
休業させる際は、会社の手掛けるすべての事業をストップさせなければなりません。ここでいう事業の停止とは、収入や支出のない状態にさせることを意味します。また、電話がかかってきたり郵便が届いたりする状態では、休業しているとは言えません。
つまり、会社を休業させる際は、事業活動を行う体制そのものをストップさせる必要があります。
②休業届の作成・提出
会社の事業すべてをストップさせたら、税務署に対して休業届(異動届出書)を提出し、休眠中である旨を届け出ましょう。異動届出書の用紙は税務署で入手できますが、国税庁のWebサイトからダウンロードすることも可能です。
上記に加えて、税務署には「給与支払事務所等の廃止届出書」および「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」も提出する必要があります。
さらに、休業届は、都道府県税事務所や市区町村役場にも提出が求められます。休業届の書式および手続き方法は自治体ごとに異なるため、あらかじめ問い合わせておきましょう。
なお、食品衛生法関係上では廃業(休業)届という様式も存在しており、自社の事業で該当する場合にはこちらの提出も求められる点に注意が必要です。
③休業届の受理・休眠状態
休業届が受理されることで休眠状態に入り、登記簿上でのみ存在する会社として扱われます。ただし、最後に登記を行った日から12年以上経過してしまうと、会社の実態がないと判断されて解散したものとみなされるおそれがあるため注意しましょう。
みなし解散から脱するには、以下の手続きを行う必要があります。
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株主総会の開催(会社を継続する旨の決議/新たな役員の選任/定款変更の決議)
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清算人および代表清算人の登記
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会社継続および役員変更の登記
上記の手続きにはおよそ8万円程度の費用がかかるため、余計な費用を発生させないためにも、みなし解散の状態は回避しましょう。
会社の休業中に必要な手続き
前項で取り上げた手続きを済ませれば、会社は休業状態に入ります。ただし、会社の休業中においても、以下の手続きが求められるため把握しておきましょう。
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税務申告
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役員変更登記
それぞれの手続き内容について順番に解説します。
税務申告
休業中であっても、税務申告は求められます。休業中は所得がないため法人税は課されず、たとえ未申告でも課税には悪影響を及ぼしません。ただし、地方法人税の均等割については、納税を求められるケースがあります。
また、2年連続して期限内に税務申告を行わなかった場合、青色申告の承認が取り消されてしまうため注意しましょう。さらに、休業中に税務申告のない年度があれば、繰越欠損金を適用できなくなる点も要注意です。
税務申告を行う際は、確定申告書に「休業中」と記載したうえで、申告所得をゼロとして提出します(経理処理などは不要)。なお、事業年度の途中から会社を休業させる場合、営業最終日までの税務申告を怠らずに行ってください。
役員変更登記
休業中は、役員変更登記も求められます。会社の役員(取締役など)には任期が設定されているため、任期満了時には役員の改選および役員変更の登記を行わなければなりません。このときに、同じ人物を継続して役員に選ぶ場合は、重任登記が必要です。日本では取締役の任期を2年に設定している会社が多く、2年に1回は役員変更登記が求められます。
会社法の定めにより、役員変更の登記を怠ると、代表者は100万円以下の過料に処せられます。出費を増やさないためにも、休業中の役員変更登記は忘れずに行いましょう。
このように、会社を休業させた後も、税務申告や役員変更登記などの手続きが必要です。将来的にも事業を再開する予定がない場合は、休業ではなくM&Aによる譲渡を選んだ方がメリットを得られる可能性があります。休業の実施については、専門家に相談したうえで決めると良いでしょう。
休業から事業を再開する際の手続き
会社の休業後は、事業の再開を検討する経営者の方が多いです。そもそも会社を休業させる場合、事業で赤字が発生しているケースが少なくありません。1つの事業年度で計上された赤字は10年間にわたり繰り越しできるため、事業の再開後に黒字が発生した際に節税効果を得られるメリットがあります。
休業から事業を再開する際は、以下の手続きが必要です。
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異動届出書の提出
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休業中の会計処理・確定申告
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青色申告の再申請
それぞれの手続き内容を順番に詳しく解説します。
異動届出書の提出
休業状態から事業を再開させたい場合、はじめに異動届出書(休業届)を提出した税務署/都道府県税事務所/市区町村役場に対して、それぞれ事業を再開する旨の届出を行います。
休業中の会計処理・確定申告
次に、休業中における預貯金の動き/売掛金の回収/買掛金の支払いなどを中心に会計処理を行ったうえで、未実施であれば過去の確定申告をまとめて実施してしまうのも良いです。これにより、事業再開後の期首簿価を確定させられます。
青色申告の再申請
休業中、税務署より青色申告の取り消し通知が送付されるケースがあります。青色申告を取り消されると、繰越欠損金を利用できなくなるため要注意です。
また、一度取り消されてしまうと、その後は2期にわたり青色申告承認請求を行えなくなるため、青色申告の取消日は確実に把握しておきましょう。取り消し通知が送付されていたかどうか不明な場合、所轄の税務署に問い合わせることをおすすめします。
青色申告を取り消されており、申請できない期間が経過している場合には、事業の再開に伴い即座に青色申告承認申請書を提出しましょう。
会社の休業にかかる費用

最後に、会社の休業にかかる費用として、「専門家への依頼費用」と「課税の負担」の2種類を紹介します。なお、休業届の提出そのものに費用はかかりません。
専門家への依頼費用
会社の休業に伴い、諸手続きを行政書士/司法書士/税理士などに依頼する際は費用が発生します。具体的な費用は依頼内容や範囲、事務所ごとに設定している報酬体系などによって異なります。無料相談に応じてくれる専門家がほとんどであるため、依頼前に問い合わせておきましょう。
課税の負担
休業中は、所得がないため法人税は課されません。ただし、自治体によっては、法人住民税の均等割を負担しなければならないケースがあるため注意しましょう。
会社を休業させる前にM&Aによる譲渡も検討すべし

この記事では、会社の休業を検討している経営者の方に向けて、手続き内容やメリット・デメリットを中心に紹介しました。
会社を休業させる際は、大まかに「事業の停止」と「異動届出書の提出」という2つの手続きが求められます。ただし、休業中も税務申告や役員変更登記などの手続きを行わなければなりません。また、休業から事業を再開させる際は、主に「異動届出書の提出」「休業中の会計処理・確定申告」「青色申告の再申請」という手続きを行う必要があります。
なお、会社の休業手続き自体に費用は発生しないものの、「専門家に依頼するケース」や「法人住民税の均等割が課せられるケース」においては、費用負担が発生するため注意しましょう。休業手続きに関して不安や不明点があれば、行政書士/司法書士/税理士などに相談することをおすすめします。
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