事業譲渡の際の消費税の取り扱いは?消費税の計算方法や納税の仕方について解説!

事業承継において、会社の引継ぎを行う方法としては、株式譲渡と事業譲渡があります。

この際、事業譲渡の場合には、消費税の処理が買い手側、売り手側の双方において発生します。通常の取引とは異なり事業譲渡特有の留意点などもありますので、この記事では事業譲渡時の消費税の取り扱いや計算方法、納付の仕方について解説させていただきます。

1 事業譲渡における消費税とは?

事業譲渡は、売り手側の企業が所有する「事業」を買い手側の企業に対して売却することですが、この際に発生する税金は「消費税」と「法人税」の2種類です。

消費税

事業譲渡の場合は、株式譲渡と異なり、消費税が発生します。具体的には、事業譲渡においては、事業に必要な資産や負債、人材、ブランドといった会社の財産を売買するため、この中に税法上の「課税資産」が含まれている場合、「課税資産額×8%」の消費税が発生するのです。

例えば、事業譲渡における「全資産額」が1億円で、「非課税資産」が2千万円の場合、「8千万円(1億円-2千万円)×8%=640万円」が消費税として発生します。

この消費税は事業を譲渡した側が申告して納付する必要があるため、資金繰りとして念頭に入れておく必要があります。

法人税

事業譲渡の際には、「法人税」も同様に発生します。売り手側の企業には、事業を売却した金額を受け取ることとなるため、事業譲渡における売却利益は「法人税」の対象となります。

事業譲渡においては、譲渡対象の事業の「資産と負債の差額」を超えた売却金額が「事業譲渡における売却益」となります。

法人税には、地方法人税、事業税、法人住民税などがあり、これらの税金にすべての税率を合わせたものである「実行税率」が約30%となっています。

なお、「株式譲渡」では、株主が個人の場合、発生するのは法人税ではなく、所得税です。株式売却によって獲得した利益は「譲渡所得」となり、所得税が課税されます。

2 譲渡された事業の課税資産と非課税資産とを分類

事業譲渡における消費税を計算するには、上述のように譲渡される事業資産を「課税資産」と「非課税資産」とに分類しなければなりません。

課税資産として分類される資産は?のれん代はどうしたよい?

事業譲渡で売却される資産のうち、以下のものは「課税資産」として分類されます。

  • 有形固定資産(土地を除く)
  • 無形固定資産
  • 棚卸資産
  • のれん代

有形固定資産

有形固定資産は、課税資産として最も多く起こりうるものです。有形固定資産とは、譲渡される事業において用いられる「建物」「器具備品」「車両運搬具」「機械装置」「船舶」などです。なお、「土地」も通常「有形固定資産」とみなされますが、消費税換算の際には「土地」は、課税対象から除外されます。

無形固定資産

無形固定資産は、「形の無い資産」であり、「長い期間にわたって利用ができる資産」が該当します。具体的には、「特許権」や「商標権」「意匠権」といった知的財産や、「漁業権」などの営業利権がこの無形固定資産に当たります。

棚卸資産

「棚卸資産」とは、企業が販売や加工をすることを目的に所有している資産のことを指します。例えば、販売予定のある「商品」や、商品を加工して作るための「原材料」がこの「棚卸資産」に当たります。「在庫」と表現されることもあります。

のれん代

「営業権」や「のれん代」も「課税資産」の一つです。「のれん代」とは、譲渡される事業の「利益を生み出す力」であり、例えば「独自のノウハウ」や「顧客」「取引相手」などのことを指します。「のれん代」の計算方法の一例としては、「営業キャッシュフローの3~5年分」として算出されます。「営業キャッシュフロー」とは、事業活動から企業が得ることができる利益を「現金収支」として計算したもので、「営業利益+減価償却費」で概算されます。

非課税資産に分類される資産は?

続いて、事業譲渡における「非課税資産」の分類について解説されます。非課税資産に分類されるのは次のような資産です。

  • 土地
  • 有価証券
  • 債権

土地

上記の「課税資産」の部分でも触れましたが、「土地」有形固定資産でありながら、「非課税資産」として分類されます。土地は、消費されないものであるため、消費税の対象外とされています。

有価証券

有価証券とは、企業が保有する「株式」や「商品券」「小切手」「手形」などを指します。

債権

債権も非課税資産として、消費税の対象とはなりません。なぜなら、売掛金などのように債権が発生した時点で売上として計上されており、この時点で消費税が課税されているため、2重で課税することになるためです。

3 事業譲渡の際の消費税の計算方法と仕訳方法

それでは、具体的な消費税の計算方法と、仕訳方法についてみていきましょう。

事業譲渡の内容が以下のような場合、消費税はいくらになるでしょうか?

【売却金額:2億円】

建物:5,000万円

土地:1億円

のれん代:1,000万円

棚卸資産:,1000万円

特許権:1,000万円

債権:2,000万円

まずは、上記の資産を「課税資産」と「非課税資産」に分類します。

課税資産の合計額は

「建物『5,000万円』+のれん代『1,000万円』+棚卸資産『1,000万円』+特許権『1,000万円』=8,000万円」となります。

非課税資産の合計額は

「土地『1億円』+債権『2,000万円』=1億2,000万円」です。

事業譲渡にかかる消費税は、「課税資産」に「消費税率」を掛けることで算出されますので、「8,000万円×0.8%=640万円」がこの事業譲渡における消費税となります。

売り手側の仕訳

それでは、売り手側の仕訳を見ていきましょう。

売り手側の仕訳では、事業移転直前の帳簿価格に基づいて算出される「株主資本相当額」と「譲渡価格」との差額が、「移転損益」として計算されます。また、事業譲渡の際の支出は、その支出が発生した事業年度の費用として仕訳に計上が可能です。

【譲渡側の仕訳例】

譲渡資産の帳簿価格:500

譲渡負債の帳簿価格:200

付随費用:50

譲渡価格:350

貸方借方
譲渡負債200譲渡資産500
現預金350事業譲渡益50
付随費用50現預金50

買い手側の仕訳

続いて、買い手(譲受側)の仕訳の仕方について解説します。事業の譲受価格は、譲受した資産と負債を、譲り受けた時点での時価を基準に算出されます。また、譲受価格と取得原価(譲り受けた事業の帳簿状の資産と負債の差分)の差額は「のれん代」として計上され、のれん代は20年間にわたって減価償却されていきます。

【譲受側の仕訳例】

譲受資産の帳簿価格:500

譲受負債の帳簿価格:200

付随費用:50

譲受価格:400

貸方借方
譲受資産500譲受負債200
のれん100譲受価格400

4 事業譲渡の際の消費税の納税義務がない場合は?

通常、事業譲渡側の企業は、売り手側から買い手側に対して移転がされた課税資産に消費税率を掛け合わせた額を「事業譲受側」から徴収し、消費税の申告時に納付する必要があります。利益を得た、事業の譲渡側ではなく、事業の譲り受けた買い手側が負担するのが通例です。

なお、会社分割を行って事業を譲渡した場合は、消費税は課税されません。なぜなら、事業譲渡は資産の売買のため、消費税の課税対象になりますが、会社分割は資産の譲渡に該当せず「組織再編行為」とされているためです。

5 事業譲渡の際の消費税に関する注意点

最後に、事業譲渡を行う場合の消費税について注意するべき点をみていきましょう。

のれん代が高いと消費税も高額に

事業譲渡の対象が強いブランド力を持っていたり、資産にのれんを多く計上たりしている場合、消費税も高額になる傾向にあります。そのため、事業譲渡を選択するよりも消費税の課税がされない会社分割を選択する方が税法上のメリットを得られるでしょう。

消費税率が変わります

消費税率は、2019年10月には8%から10%(消費税〈国税〉7.8%・地方消費税〈地方税〉2.2%)に変更が予定されています。そのため、事業譲渡を行う際には、消費税の税率の変動時期に注意しておくべきでしょう。

売り手側は簡易課税の場合の注意点!

事業譲受側が事業譲渡時に支払った消費税のうち、「仕入控除税額」として認識されるものは、消費税申告時に還付できる可能性があります。ただし、売り手側が「簡易課税」を採用している場合は還付が受けられなくなるため、要注意です。

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