後継者不足問題の解決策とは?その現状を知り、効率よく事業承継しよう

中小企業の後継者不足問題が、新聞やTV・雑誌などのメディアで取り上げられるようになってから随分と経ちます。しかし、今のことろそれらが解決されたという話を聞いたことがありません。

政府により事業承継を円滑に進めるための事業承継税制が導入され、何度かの改正を経て今では事実上、誰が承継者となっても税金の負担を全くすることなく事業を引き継ぐことができるようにまでなりました。

また、全国の都道府県には事業引継ぎ支援センターが設置され、2014年からは後継者人材バンクによる企業と後継者候補によるマッチングサービスも提供されています。

このような公的機関によるサービスだけでなく、民間企業もM&Aの支援機関をはじめ士業専門家や金融機関などが中小企業の後継者不足問題を解決するために、全力でバックアップを行っています。

しかし残念ながら、後継者不足問題に対するこのような公的・私的機関によるサポートにも関わらず、現実にはいまだにその解決の目処が立っていません。

そこで本日は、今だからこそもう一度最初に立ち返り、そもそも後継者不足問題がどうして起きているのか、その原因と今後の予測、そして解決策を探っていきたいと思います。

そもそも、後継者不足問題とは何か?

そもそも、後継者不足問題とは何でしょうか?中小企業の後継者が不足している状態が後継者不足問題なのですが、それだけではなく、「それにより起きていること」そして「そのためにこれから起きること」をすべて含めたものを「後継者不足問題」といいます。

中小企業の後継者が不足すると何が起きるのか

それでは、中小企業の後継者が不足するといったい何が起きるのでしょうか?

また、後継者がいなければ最終的には廃業を選ばざるを得ませんが、後継者不足により廃業を選んだ場合、その後でいったい何が起きるのでしょうか?

日本経済における中小企業の役割

それらを考える前に、まず中小企業が日本経済においてどのような役割を果たしているのかを考えてみましょう。

下の図をご覧ください。

出典:「2019年度版中小企業白書」中小企業庁編

中小企業は日本経済において、企業数では99.7%、雇用では労働人口の約70%、そして付加価値額では約53%を占めています。

大企業に雇用されている人の方が多いイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に日本の雇用を支え、品質の良い製品を製造して付加価値を生み出しているのは中小企業であることがこのデータが証明しています。

中小企業数の変化

次に、日本の雇用を支えている中小企業の数が、ここ十数年の間どのように推移しているのかを見てみましょう。

出典:「2019年度版中小企業白書」中小企業庁編

ご覧のとおり、約15年以上にわたり一度も増えることなく、右肩下がりで減少の一途をたどっています。

企業全体が支える雇用数の推移

では最後に、中小企業数が減少し続けていることが日本の雇用全体にどのような影響を与えているのかを見てみましょう。

下図をご覧ください。

出典:「2019年度版中小企業白書」中小企業庁編

このように、2012年から2016年までの5年間で、何と117万人もの雇用が喪失しています。大企業の雇用数は健闘しているものの、中規模企業や小規模企業は軒並み大幅に減少しています。

後継者不足問題の現状

中小企業の数がここ十数年減少し続けているため、中小企業がこれまで維持してきた雇用数が減り続けています。

しかし、中小企業の数が減っている原因は、倒産しているからではなく経営者が自ら廃業を選択しているためです。経営者が高齢化し、後継者がいないため廃業を選ばざるを得ず、それが結果的に日本の屋台骨を支える中小企業の雇用崩壊を加速させているのです。

後継者不足の原因

それでは、いったいどのような理由で中小企業の後継者が不足しているのでしょうか?中小企業の経営者が後継者に事業承継できない理由は、おもに以下の4つになります。

  • 親族に引き継げない
  • 従業員に引き継げない
  • 少子化によりそのそも引き継ぎ手がいない
  • 事業の将来性が不安である

親族に引き継げない

親族に事業を引き継がせることを親族内承継といいます。親族内承継はもともと中小企業の事業承継ではもっとも多いパターンで、世間的にも親が会社を経営していれば子供が後を継ぐのがあたり前と考えられていた時代もかつてはありました。

しかし、今では親の後を子が継がなくても、それ程珍しいことではなくなりました。親の世代とは違い、子供の世代になると価値観が多様化しており、子供にとっては「実家の家業を継ぐ」ことも選択肢の一つに過ぎません。

創業者としてはできれば親族に継いでもらいたいものの、肝心の子息・子女にその気がなければ継がせることができません。

従業員に引き継げない

子供などの親族が継いでくれないのなら、従業員に継いでもらいたいところなのですが、それもなかなか簡単ではありません。

たとえば法人の場合、後継者として従業員に後を継がせるためには現経営者が所有している株式を従業員に売却しなければなりません。またそれ以外にも、経営者が個人で所有している事業用の資産なども、同様に後継者となる従業員が買い取らなければなりません。

いっぽう、会社の経営が順調であればあるほど内部留保も多いため、企業の株式の評価額は高くなる傾向にあります。これらの株式のすべてを、いち従業員が購入するには購入価格が高過ぎるのです。

それ以外にも債務の個人補償の問題もあります。

会社が金融機関から借入をする場合、たいていは経営者が個人補償をしています。それ以外にも、経営者が個人で所有している土地などの不動産に抵当権が設定されている場合もあります。

このような場合、借入金を返済しない限り、現経営者に代わって次の経営者が引き続き借入金の個人補償をしなければなりません。更には不動産への抵当権設定も金融機関から求められる場合もあります。

つまり従業員側から見ると、後継者になりたくてもなるためのお金が用意できず、さらに借金を背負わされるリスクもあるわけです。

これではなかなか従業員に引き継ぐことはできません。

少子化でそもそも引き継ぐ親族がいない

現在事業承継を考えている経営者の多くは、第1次ベビーブーム前後に生まれています。第1次ベビーブームとは1947年から1949年までの3年間をいい、その出生率はピーク時で4.3を超えていました。

第1次ベビーブームに生まれた人の多くが子供を持ったのが第2次ベビーブームですが、この時の出生率は2.16と第1次ベビーブームの半分以下に下がり、そして2019年には出生率は1.36にまで下がっています。

出生率が4.3の時代に生まれた経営者たちの作った会社を、出生率が半分以下に落ち込んだ子供たちが継ぎきれるわけがありません。

経営者の中には、少子化でそもそも引き継ぐ親族すらいない人もいらっしゃるわけですから、これでは承継できるわけがありません。

事業の将来性への不安

事業承継をせず廃業を予定している経営者の中には、事業の将来性に不安を感じ、後継者への承継をあきらめている人もいます。これは確かにもっともな理由に思えますが、実際は少し違います。

下図をご覧ください。

出典:「事業承継に関する現状と課題について」中小企業庁

事業承継により経営者の若返りを図った企業と、事業承継をしなかった企業では、経常利益率やその伸び率がまったくことなります。

つまり、事業に将来性がないため後継者に引き継げないのではなく、後継者に引き継ぐのが遅れてしまったため事業の将来性がなくなり、結果的に事業承継ができなくなってしまっているのです。

後継者不足問題の解決策

後継者不足問題の現状とその原因が整理できたところで、後継者不足問題の解決策にはどのようなものがあるのかについて考えてみます。

解決策① できるだけ早くから事業承継の準備をする

経営者がまだ若く、元気なうちから10年先を見据え次の後継者候補探しを始めます。前章でご紹介したように、事業承継を先送りしてしまうと経営者の高齢化により企業の利益率が低下していまいます。ダメになってから後継者を探しても、担い手が見つかるはずがありません。

無理のない事業承継を行うためには、一般的に最低でも5年、できれば10年の時間が必要だと言われています。中小企業の経営者の平均引退年齢が70歳前後であることを考えると、経営者が60歳を迎える頃には本気で事業承継に取り組み始めなければなりません。

解決策② 親族が引き継ぎたいと思える会社にしておく

親族内承継の数が減ったのは、少子化の理由を除くと、経営者の子息・子女が事業承継以外の道を選択したからです。そうであるならば、思わず「継ぎたい!」と思われるような会社にしておけば、何の問題もなく親族内承継をすることができます。

具体的には、以下のことを行います。

  • 過度な節税は行わず、内部留保を高める
  • 金融機関からの資金調達はできるだけ大型の設備投資に限定する
  • 経営者の個人補償をなくす
  • 事業承継後に経営がしやすくなるように社内を整備しておく

過度な節税は行わず、内部留保を高める

節税にこだわり過ぎると法人税の支払額は減りますが、同時に会社のキャッシュがなくなってしまうため、綱渡りの企業経営となってしまいます。

これを乗り切るために金融機関からの借り入れに頼り切ってしうと、財務体質の強い企業を作ることはできません。

ある程度の税金は経営上の必要コストと割り切り、長期的な視点で物事をとらえ、体力のある企業を作り上げなければなりません。

金融機関からの資金調達はできるだけ大型の設備投資に限定する

金融機関からの融資を受けずに自己資金のみで企業経営をしようとすると、効率が悪く成長スピードも著しく遅くなってしまいます。ですから、設備投資のような将来のための投資に関しては、積極的に金融機関からの融資を受けるべきです。

しかし、運転資金のように明確な使用目的のない資金については、その調達を融資に頼りきってしまうと、企業の体力が削られてしまいます。

金融機関からの融資は企業の成長には必ず必要なものですが、できるだけ設備投資のような用途の限られた資金のみにしておいた方がよいでしょう。

経営者の個人補償をなくす

会社が金融機関からの融資を受けているケースでは、経営者が個人補償をしている場合がほとんどです。この状態で事業を引き継ごうとすると、後継者が引き続き個人補償をしなければならなくなってしまいます。

事業承継の準備を進めていく過程で、こういった経営者の個人補償はできるだけ外し、次の人が承継しやすい会社にしておくように心がけましょう。

事業承継後に経営がしやすくなるように整備しておく

経営者以外に株式が分散していては、事業承継後に経営が安定しない可能性があります。そのため、事前に株式の買取などを行い、事業承継後に経営権が集中するようにしておかなければなりません。

また、経営者の個人資産を会社が利用している場合(経営者の土地の上に会社が工場を立てている場合など)、事業承継後も継続的に利用できるようにするため、法人もしくは後継者に売却できるように準備を進めておきましょう。

解決策③ 従業員や外部からの人材登用も積極的に検討してみる

親族内承継とは別に、親族外承継も視野に入れ、従業員や外部からも後継者として相応しい人物を登用することを検討しておきましょう。

親族内承継ができれば経営者としても安心ですが、必ずしもできるとは限りません。親族内承継が不可能となってから親族外承継を検討し始めては、引退までに間に合わない場合もあります。

事業承継の方法を1本に絞らず、必ず複数の方法を併用しながら準備しておかなければなりません。

ただし、親族内承継であれば株式を贈与や相続させることができますが、親族外承継であれば基本的には株式を後継者に買い取ってもらうことになります。そのため、親族外に後継者候補が見つかった場合には、株式の購入資金の調達をどのようにサポートできるのかを考えておかなければなりません。

解決策④ 事業引継ぎ支援センターやマッチングサイトを活用する

後継者不在企業の事業承継をサポートするため、中小企業基盤整備機構が日本中すべての都道府県に事業引継ぎ支援センターを設置し、後継者人材バンクサービスを提供しています。

後継者のいない企業と、それを引き継ぎたい人材がそれぞれ登録し、ニーズの合ったもの同士をマッチングさせるサービスで、無料で登録や相談をすることができます。

公的機関が行っているため安心して利用でき、しかも無料ですからとりあえず試してみるだけの価値は十分にあります。

ただし、サービスの開始が2014年からと比較的新しいため認知度は低く、登録者数がまだまだ少ないため過度な期待はしない方がよいでしょう。

またそれ以外にも、民間の業者が行っているマッチングサイトを利用することもできます。こちらは後継者人材バンクと比べると登録者数は多いですが、月額の固定費もしくは成功報

酬が必要となるため、利用する時はその点を考慮しておかなければなりません。

解決策⑤ 事業承継の仲介機関に相談してみる

中小企業のM&Aを活発に行っている事業承継の仲介機関に相談する事によって、後継者不足問題を解決することができます。

事業承継の実績と経験は申し分なく、あらゆる段階でサポートや相談をすることができ、しかも事業承継のためのリストに登録している企業数もかなり多いため、後継者不足問題を解決できる確率を一段も二段も上げることができます。

もちろん民間の機関ですから契約時や成約時に各種手数料は必要になりますが、それを差し引いても後継者不足を解決できるメリットの方が大きいと言えます。

廃業だけは何としても避けよう

これまで、後継者不足問題の現状や解決方法について述べてきました。しかし、それでも上手く行かない場合には、廃業を選ばざるを得ません。

とはいえ廃業は、何としても避けなければなりません。なぜなら廃業してしまうと以下のデメリットが生じてしまうからです。

  • これまで築き上げてきた企業風土やノウハウが消失してしまう
  • 従業員の雇用が失われ、家族も路頭に迷う
  • 創業者利益の獲得ができなくなる

これまで築き上げてきた企業風土やノウハウが消失してしまう

長い間経営されてきた企業には、必ず何らかの特別な技術やノウハウがあります。なぜならそうでなければ、長期間に渡って生き残ることなど出来ないからです。またそのような企業には、経営者や従業員が築き上げてきた企業風土があり、これらは有形無形の貢献を地域社会に行っています。

このように素晴らしい技術や文化も、廃業してしまえば地域社会から消失してしまいます。

従業員の雇用が失われ、家族も路頭に迷う

廃業することが決まれば、そこで働く従業員を解雇することになります。若い従業員ばかりであれば転職も比較的容易ですが、たとえば50歳以上の従業員であれば、条件の合った転職先を見つけることは実際にはかなり困難です。

そうなると、最悪の場合従業員の雇用が失われ、家族もろとも路頭に迷うことになってしまいます。

創業者利益の獲得ができなくなる

創業者(もしくは経営者)として心血を注ぎ込み作り上げてきた企業も、廃業してしまえば後には何も残りません。ですから廃業してしまう前に、何とか事業譲渡の道はないかをM&Aの支援機関などに相談し、廃業しなくても済む方法を模索してみましょう。

「うちのような中小企業には、売るものなんて何もないよ」と言われるかもしれませんが、M&Aで求められるのは、店舗や工場、機械や特許ばかりではありません。

優秀な社員や大企業との取引口座も立派なセールスポイントになります。M&Aにより無事に事業譲渡をすることができれば、創業者利益の獲得ができ、ハッピーリタイアをすることができます。

最後に

中小企業の後継者不足問題の原因は根深く、付け焼刃の方法ではとても解決することはできません。しかし、しっかりと本腰を入れ、じっくりと時間をかけて取り組めば決して乗り越えられない壁ではありません。

常にあらゆる可能性を考え、事業承継のあらゆる選択肢をいつでも活用することができるように準備しておくことが大切です。

当社は、経営知識や実務経験が一定以上である認定経営革新等支援機関の認定を国から受けており、税理士や弁護士などの専門家と提携しつつ、事業承継をはじめさまざまな経営支援からM&Aまで、幅広い視野に立ち経営者のみなさんを万全の態勢でサポートしています。

「事業承継を検討してみたい」と思われた方はぜひ一度お気軽にご相談ください。


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