年々深刻化する後継者不足、原因やその解決策とは?

中小企業の後継者不足が問題視されるようになってから随分経ちますが、一向に問題解決のきざしが見えません。それどころか年々深刻化しているとも言われている後継者問題には、何か日本の中小企業が抱える構造的な問題があるのでしょうか?

また、そのための解決法は本当にないのでしょうか?

本記事では年々深刻化する中小企業の後継者問題について、その原因を分析し、解決策を提案していきたいと思います。

後継者不足問題とは?

後継者不足問題とは、単に会社経営者の跡継ぎがいない状態を指しているわけではありません。おもに中小企業において、後継者の不在が原因で起きているさまざまな影響やその余波を総称して後継者不足問題といいます。

後継者不足により何が起きているのか?

では、後継者不足により私たちの社会に今何が起こっているのかを整理してみましょう。中小企業の後継者が長期的に不足することにより、現実に以下のことが起こっています。

  • 企業の休廃業・解散
  • 従業員の雇用喪失
  • 地域経済の地盤沈下
  • 地方のサプライチェーンの崩壊
  • GDPの減少

企業の休廃業・解散

最新の2019年度版中小企業白書によると、中小企業の休廃業・解散件数は右肩上がりで増え続けています(下図参照)。

出典:「2019年度版中小企業白書」中小企業庁編

いっぽうで中小企業全体の総数も下がり続けており、このことから開業よりも廃業数の方が多いことがわかります。

出典:「最近の中小企業・小規模事業者政策について」平成30年4月中小企業庁

これらのデータから、事業を承継する後継者が不在のため休廃業や解散を選ぶ中小企業が増えた結果、中小企業の全体の数が減り続けていることがわかります。

従業員の雇用喪失

中小企業数が減少することによりそこで働いていた人の雇用が喪失し、働く場が減り続けています。

地域経済の地盤沈下

大企業が多い都市部より、中小企業の数が多い地方において、企業の休廃業や解散が増えることにより、地方の雇用が崩壊し、地域経済が地盤沈下を起こしはじめています。この結果、ますます都市部との経済格差が拡大しています。

地方のサプライチェーンの崩壊

地方経済の地盤沈下は時間差で都市部の大企業にも影響を与え始めています。日本の高度な工業技術の基盤を支えている中小企業の足元がぐらつき始めているため、大企業の下請けや孫請け企業としての中小企業の生産能力が落ちています。

このままこの状況が続けば、地方のサプライチェーンが崩壊し、結果的に都市部に集中している大企業にも大きなダメージを与えることになります。

GDPの減少

かつて世界第2位にまで登り詰めたこともある日本の1人あたりの名目GDPも、2019年にIMFが発表した数字によると、世界第26位にまで落ちてしまいました。

このように、中小企業の後継者不足問題がさまざまな負のスパイラルを巻き起こし、その悪循環は現在も、日本経済の先行きに暗い影を落としています。

後継者不足の原因

では次に、後継者不足の原因について考えてみましょう。後継者が不足している原因はさまざまですが、おもに以下の4点にまとめることができます。

  • 少子化による後継者不足
  • 価値観の多様化にともなう生き方の多様化
  • 親族内承継以外の選択肢に対する抵抗感
  • 事業承継問題の先送り

少子化による後継者不足

戦後日本は2度のベビーブームを経験しています。1度目は1949年の第1次ベビーブームで、この年の出生率は4.32でした。2度目は1971年から1974年にかけてで、この時の出生率は2.14でした。

1949年に生まれた人は今年(2020年)71歳を迎えます。ちなみに、中小企業の経営者の平均引退年齢は約70歳ですから、中小企業の経営者で現在引退を迎えている層は、まさに第1次ベビーブーム世代ということになります。

第1次ベビーブーム世代が25歳で子供を持ったとすると、その子供が生まれたのが1974年の第2次ベビーブーム世代ということになります。2つのベビーブームの出生率を比較すればお分かりのとおり、4.32の出生率だった世代から生まれた子供が2.14と約半減しているわけですから、事業を継がせようにも継がせる子供が足りないのは当然です。

しかしこの傾向はこのあと更に悪化の一途をたどり続け、2019年の出生率は1.36と一段と低い水準を推移しています。

このように出生率を確認すれば分かるように、親族内承継を維持できるレベルではとてもありません。

価値観の多様化に伴う生き方の多様化

航空機産業が発達し、誰でも世界中の何処へでも行ける時代になりました。またインターネットの普及により、地球の裏側の情報をリアルタイムで得ることが個人レベルでもできるようになりました。

海外留学や海外での就職もそれほど珍しいことではなくなり、結婚という形を選択しない人たちも増えてきました。

このように価値観が多様化し、多様な生き方が認められる時代において、家業を継ぐ以外の生き方を選ぶ子供が増えてきました。

親族内承継以外の選択肢に対する抵抗感

事業承継には、経営者の親族に事業を承継させる親族内承継以外にも親族外承継やM&Aなど他の選択肢もあります。少子化や生き方の多様化により親族内承継が難しいのであれば、親族内承継以外の選択肢を積極的に活用した方が良いのですが、親族内承継ができないのであれば廃業を選ぶ経営者も決して少なくありません。

経営者にとって長年築き上げてきた会社は自分の歴史そのものであると感じている方が多く、親族内承継以外の選択肢に対して抵抗感を抱く方が少なくないためです。

事業承継問題の先送り

事業承継問題を先送りし、また後継者がいるにも関わらず積極的に承継のための準備を行わないで先送りしてしまうと、事業そのものの収益性が低下してしまいます(下図参照)

出典:「2016年度版中小企業白書」中小企業庁編

ご覧のように、経営者の世代交代が遅れれば遅れるほど、事業の収益性は低下しています。つまり、後継者がいなければもちろんのこと、後継者がいたとしても、事業承継を先送りしてしまうことで「継ぐのが難しい企業」となっています。

収益性が悪化し、「継ぐのが難しい企業」となってしまってから事業承継を行うとしても、後継者を探すのは当然難しくなってしまいます。

中小企業における後継者不足の理由

前章では、日本が抱えている少子化問題などの構造的な問題が引き起こす後継者不足について考えてみました。そこでこの章では、中小企業ならではの後継者不足の理由について考えてみます。

事業承継が家庭内問題と捉えられている

これまで中小企業の事業承継は、親族内承継を第一選択肢として考えられるケースが多かったため、「事業承継=家庭内問題」と捉えられ、事業承継の専門機関などの外部の専門家に相談されることはあまりありませんでした。

事業承継が相続問題と複雑に絡み合っている

中小企業の経営者は後継者が決まっていても現場で働くことを続ける方が多く、その結果、事業承継を無事済ませる前に亡くなる経営者もいます。

事業承継と相続問題が密接にリンクしてしまうと、ただでさえ難しい事業承継が、さらに複雑絡み合うことにより後継者の意志をくじく結果になってしまいます。

親族内承継以外の事業承継を積極的に選択できない

事業承継には、経営者の親族に事業を承継させる親族内承継以外にも親族外承継やM&Aなど他の選択肢もあります。少子化や生き方の多様化により親族内承継が難しいのであれば、親族内承継以外の選択肢を積極的に活用した方が良いのですが、親族内承継ができないのであれば廃業を選ぶ経営者も決して少なくありません。

経営者にとって長年築き上げてきた会社は自分の歴史そのものであると感じている方が多く、親族内承継以外の選択肢に対して抵抗感を抱く方が少なくないためです。

後継者不足の解決策

 深刻な問題である後継者不足ですが、上記の現状を踏まえ、どのような解決策があるのかを考えてみましょう。

親族内での事業承継

親族間での事業承継は減少していますが、伝統的な手法であると言えます。

メリットとしては、親族間だからこそ若年からの事業承継の準備が可能であることが挙げられます。ただし親族内で後継者が決定したのであれば、長期的に後継者教育をしていく必要があります。

たとえば様々な現場での経験を積み、現場や会社を良く理解させることや、規模の大きい他社での社会人経験を積ませること、またセミナーへの参加により経営者に必要な知識を取得してもらう等の方法があります。

また親族内承継は、社員や取引先に受け入れられやすい承継方法であることもメリットの一つに挙げることができます。

いっぽうデメリットとしては、相続税など資金面での負担が大きくなることが挙げられます。また親族内に後継者候補が複数人いた場合、承継がスムーズに行われないことも考えらます。

親族外での事業承継

後継者不足問題の現状でも述べた様に、親族内での事業承継がなされないことが不安視されていることを踏まえ、親族外での事業承継もそれに代わる一つの手段となるでしょう。

後継者候補を親族外にまで広げて探すのであれば、社内の優秀な人材や社外の取引先の人材等を考えることもできます。

なお親族外の事業承継には2つの方法があります。1つは「経営」の承継だけをする方法で、もう1つは「経営」と「自社株式」両方の承継をする方法です。

前者は元の経営者が株主として残り、「経営」のみを親族外の後継者に引き継がせるというものです。後者は、「経営」と「自社株式」両方の承継、つまり完全に会社を引き継がせるというものです。

親族外承継のメリットは、後継者がすでに務めている社員や長年勤めている役員であれば、1から従業員教育をする必要がなく、優れた後継者を選ぶことができます。

逆に親族外承継のデメリットは、株式買い取りなどの資金不足により親族外承継ができない可能性があるという点が挙げられます。親族外承継では後継者が自主株を買い取る多額の資金が必要になるため、それを理由に親族外承継できないという事態に陥ることも決して珍しくありません。

そのため、MBO(マネジメント・バイアウト)として経営陣が金融機関や投資ファンドからの支援を受けて資金調達を行ったり、特別目的会社(Specific Purpose Company,以下SPC)という法人を設立し、SPCの名義により株式を取得する資金を調達することがあります。

専門家に相談する

事業承継をサポートしてくれる事業承継の専門家に相談するというのも、一つの手段でしょう。

メリットとしては、会計、税務、法務等、様々な専門知識を必要とする事も多い事業承継を行う上で、それぞれのプロに任せる事で、より確実かつ効率的に事業承継を遂行することができます。また、手続きも含めて一貫して任せられるのも心強いでしょう。

いっぽうデメリットとしては、依頼内容によっては高額になる可能性がある事です。しかしこのコストも、事業承継が無事に完了すれば十分に回収可能ですから、実際はそれほどデメリットになるというわけではありません。

後継者人材バンクの活用

後継者人材バンクとは、後継者不足問題を抱える企業の後継者となる人材を代わりにマッチングしてくれる制度です。登録されているのはおもに起業家や起業家志望の人材で、全都道府県に設置されている事業引き継ぎ支援センターが運営しています。

メリットとしては、国が運営している機関のため信頼性も高く安心して利用できることが挙げられます。

いっぽうデメリットとしては、知名度が低いためマッチング企業が少ないことが挙げられます。

廃業

後継者がいないため、事業承継の資金不足、経営者の精神的・体力的な負担でやむを得ず廃業して事業を清算するといった場合があるでしょう。

ただし従業員を解雇しなければならなかったり、取引先との関係を終了させることで迷惑をかけてしまったりするため、できれば選択を避けたい手段ではあります。

後継者不足の解決にM&Aを選択するメリット

後継者不足の解決策をいくつか述べてきましたが、その中で最も利用しやすく、幅広く人材を集めることができるのがM&Aです。昔はM&Aに関して否定的な意見を持つ人も少なくありませんでしたが、時代が変わった今では事業承継の必須スキームのひとつとなり、特に若い経営者の間で事業拡大のために積極的に活用されています。

では具体的に、後継者不足問題の解消としてM&Aを活用した場合のメリットについて見てみましょう。

事業譲渡による創業者利益の獲得

後継者不足問題を解決するためにM&Aを活用する場合、企業譲渡側のオーナー経営者には譲渡に対する対価が支払われます。経営者ご自身が築き上げてきた企業風土は無事継承され、なおかつその対価として十分な金額を得ることができます。

ハッピーリタイアをすることもできますし、もう一度別のスモールビジネスにチャレンジすることもできます。

雇用の維持

M&Aにより会社経営を別企業に引き継いでもらうことで、既存の技術や人材などの大切な財産や取引先との関係を守ることができます。

もし事業承継を選ばずに廃業してしまうと、従業員やその家族は路頭に迷い、これまで築き上げてきたノウハウなども一切失われてしまいます。

M&Aを活用する上での注意点

メリットの多いM&Aですが、活用するためにはいくつか注意すべき点があります。

企業を譲渡する側も、譲り受ける側もお互いのニーズを満たし、win-winの関係でクロージングするためには、1にも2にも企業同士のマッチングが大切です。譲渡したい事業を、それを最も必要としている企業に譲渡してこそ、お互いにハッピーになることができます。

そのためには、できるだけ数多くの顧客リストを抱え、M&Aの経験が豊富なM&Aの仲介機関を見つけるなければなりません。 

最後に

中小企業の事業承継をめぐる後継者不足は、日本の抱えている構造的な問題と複雑に絡み合っており、今後もかなり深刻化していくものと予想されます。

これまで日本を支え続けたのは間違いなく中小企業の技術力であり、これらがなければ戦後の復興も、今日の日本経済も発展を遂げることは不可能だったでしょう。

しかし今、その企業文化の承継が途切れようとしています。このバトンを落とすことなく、次世代へ承継していくためには、官民一体となって全力でこの事業承継問題に取り組まなければなりません。

当社は、経営知識や実務経験が一定以上である認定経営革新等支援機関に認定されており、税理士や弁護士などの専門家と提携しつつ、事業承継をはじめさまざまな経営支援からM&Aまで、幅広い視野に立って経営者のみなさんを万全の態勢でサポートしています。

「事業承継を検討してみたい」と思われた方はぜひ一度お気軽にご相談ください。


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