M&Aの譲渡価格の相場はいくらか?譲渡価格の決め方と、交渉のポイントを解説

M&Aを検討する方にとってその相場は気になるところです。買い手側の企業にとっては、どれくらいの事業であればいくらくらいで買うことができるのか、売り手側の企業にとっては、自社の事業の譲渡価格はいくらになるのか、という点はM&Aの中でも最も重要なポイントになるでしょう。そこで、この記事ではM&Aの譲渡価格の相場がどれくらいで、実際にはどのように譲渡価格が決まっていくのか、という点について解説させていただきます。

M&Aの譲渡価格の相場とは?

M&Aの事業譲渡価格の相場とは、実はあるように見えてないのが現状です。

一般的にM&Aの譲渡価格は、

会社の純資産の金額 + 会社の経常利益の数年分

という式で計算されることが多いようです。しかしながら、この数年を何年にするかという点や、資産の価値評価の点などでも売り手側と買い手側とで解釈が異なることが多く、一般的には互いの交渉の中で価格が決まっていくことがほとんどです。

また、飲食店やドラッグストアのようにビジネスモデルが一般化しているものであれば、譲渡価格の算出の仕方は業界としての蓄積があるため、相場が形成されている場合もありますが、新しいビジネスの分野や、独自性のあるビジネスモデルの場合などでは大きく譲渡価格が変動するケースもあります。

M&Aの買手・売り手側にとっての相場の見方

M&Aの譲渡価格は、買い手側と売り手側との間で認識がずれることが多くあります。これらの双方間になぜこうしたずれができるかについて、その考え方をご紹介します。

(1)買手にとっての譲渡価格の相場とは?

事業の買手側は、譲渡価格をできるだけ安くみようとします。投資をした側からすると、譲渡金額が大きいと、投資を回収するまでの期間が長くなってしまうため、それだけリスクが高くなってしまいます。

事業を買収した側の立場からすると、M&Aを行う目的としては、事業を自社で1から立ち上げるよりも、早く事業を立ち上げることができるとともに、利益がすでに見込めることから確実性が高いため投資をするのです。

したがって、譲渡金額が高額になってしまう場合、回収までの不確実性が高まってしまったり、自社で立ち上げたほうがコストが低くなったり、というケースもあるでしょう。

そのため、買い手側としては、できるだけ低い金額で譲渡価格を見積ろうとする力学が働きます。

(2)売り手側にとっての譲渡価格の相場とは?

一般的に、M&Aの売り手側は譲渡価格を高く算出しようとする傾向にあります。

これまで事業を行ってきた苦労や大変さがわかっているからこそ、できるだけ自分の事業を高く評価したいというという心情が働くからでしょう。

また、利益が低下している場合も、長年事業を行っている中だと、一時的な環境やその年の特殊事例によって利益が少ないなどといった外部からは見えにくい要因があると考える傾向にあり、そういう点は譲渡価格算出からは除外して考えたいと思いうからでしょう。

その他にも、同業の他社がM&Aによって高額に売却できた事例を聞いた場合などに、「自社も同様に会社を高く売れる」と考えるようになります。

これらの思考の結果として、譲渡の希望金額が高額になっていきます。

M&Aにおける譲渡価格の算出方法

このようにM&Aでは、買い手と売り手側とで、事業の譲渡価格の相場観が異なっています。これらの間の調整するために、こうしたM&Aの譲渡価格には理論的な算出方法が3棲類提示されています。

会社のM&Aを検討している方は、この相場価格の算出方法として、「修正純資産法」「DCF法」「類似会社比準法」の3つがあることを理解しておきましょう。

(1)理論的な価格算出方法

①マーケットアプローチ(類似会社比準法)

マーケットアプローチと呼ばれる「類似会社比較準法」は、M&Aの対象の会社と同一業種や同一業界の会社の「時価総額」に基づいて相場価格を算出する方法です。

次に紹介する、修正純資産法やDCF法はM&Aの対象となる会社の財務諸表を軸に価格を計算していきますが、類似会社比較準法では、対象となる会社の業界に着目して相場価格を決めるため、成長市場の会社であれば相場価格は高く算出されるでしょう。

②インカムアプローチ(DCF法)

DCF法は、大手企業間のM&Aにおいてよく使われる相場価格の計算方法です。DCFとは、「Discounted Cash Flow(ディスカウント・キャッシュフロー)」の略です。

DCFとは、企業買収後に予想されるキャッシュフロー金額をもとに、その金額を現在価値に割り引いて価格を決定する方法です。この方法では、純粋に事業がキャッシュフローを生み出す力を買収価格に反映している点が特徴です。

③コストアプローチ(修正純資産法)

 コストアプローチである「修正純資産法」は、実際の会社売買の際にもよく利用される相場価格の算出方法であり、中小企業M&Aの相場では特によく用いられます。

修正純資産法では、売却対象の企業の「財務諸表」を参考にして、時価評価した資産からその企業の負債を差し引いて「企業価値」を算出します。

修正純資産法で算出された場合には、譲渡価格は低くなる傾向にあります。なぜなら、相場価格にはM&Aの対象の会社の「将来的な価値」、すなわち今後生み出される利益が含まれないためです。したがって、売り手側にとっては、納得しにくいケースもあります。この方法で相場が出されるのは、数年にわたって赤字が続いている会社の場合などが多いでしょう。

(2)実際のM&Aの譲渡価格の決まり方は?

以上で説明した3つの算出方法ですが、実際のM&Aではこれらの考え方は参考にしつつも、様々な観点を「総合的」に判断して価格が決定されていきます。

この総合的、というポイントが重要であり、M&Aのケースごとに双方の思惑が異なってきたりするため、一律に価格を決める方法は実際のところではないのです。例えば、同一の業種のサービスであり、売上額や利益の額が同じ会社が2つあった場合でも、この2社の譲渡価格が全く異なるケースも普通に起こりうるのです。

M&Aでは、買い手側と売り手側との間の交渉によって価格が決まっていくため、例えば買い手側がその事業をどうしても欲しい、と思っている場合には、売り手側が高めの譲渡価格を提案したとしても受け入れらえる可能性も高くなるでしょう。

M&Aにおいて高く売れるためのポイントは?

以上を踏まえたうえで、M&Aにおいて事業や会社を高く売るためのポイントをご紹介しましょう。

(1)最適なタイミングで売却する

まず、一番重要なのは事業を売るタイミングです。

例えば、会社が属する業界が成長市場として注目されている分野である場合、例えばAIやブロックチェーンといった旬な会社は高く譲渡価格となる可能性が高いです。また、景気の動向も大きいでしょう。市場の景気がよく、キャッシュが潤沢にある会社が多い状態では、M&Aに積極的に動く会社も多いため、このタイミングでM&Aを検討することが最も譲渡価格を高くすることができるでしょう。

(2)複数の相手と交渉をする

M&Aの譲渡価格は交渉によって決まっていきます。したがって、複数の相手と交渉を同時にしていったほうが価格を高くするうえでは有利に働きます。買い手側も、その事業を欲しいと思った場合、競合の他社よりもよい条件を提示して買収しなければならない、と感じるでしょう。その結果、売り手側への提示額が高めになっていく傾向にあります。

なお、複数の相手と交渉をしたほうがよいからといってもあまりに多くの相手と話をするべきではありません。M&Aの過程では様々な情報を相手方に開示する必要があるため、事業場の重要なデータやノウハウなども知られてしまう可能性があります。したがって、事業の譲渡先の候補は3~5社程度に絞るのがよいでしょう。

(3)希少性を持つ

事業の希少性や独自性も重要な要素となります。他にも同じようなサービスやプロダクトを行っている会社がある場合、買い手側はそれらを比較検討して価格を設定しようとしてきます。一方、例えば独自の技術を持っていたり、特許によって事業を独占できていたりといった強みのある会社は、他者とは比較できない強みを持っています。こうした希少性のある会社はM&Aにおいて高く評価されていくでしょう。

まとめ

M&Aにおける相場価格の算出の方法の参考になりましたでしょうか?

M&Aでは、様々な観点で事業の価値を算出していきます。その方法は一概にはいえませんし、また経験豊かなM&Aの仲介会社を通じたほうが交渉が有利に運ぶケースもあります。M&Aでは専門家の力によって金額が大きく変更する可能性が高いため、頼りになる専門家を選ぶようにしましょう。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう


TOP