飲食店を売却したい!?飲食店撤退の際のM&Aや居抜き譲渡のポイントとは?

飲食店を経営している方で、事業の状況や自身の体力などを鑑みてお店を閉店したいと考えている方はいらっしゃると思います。飲食業界は、少子高齢化や景気の影響などもあって、市場自体も縮小しており、また経営を継続するためにも気力や体力が必要な業態でもあります。そうした中で将来の見通しなどを含めて不安を感じ、早い段階で事業を撤退しようと考える方は多いでしょう。

しかしながら、飲食店はその事業の撤退の仕方や売却方法によって、その損失や投資利益も大きく異なってくるため、飲食店経営におけるスマートな事業の売却や撤退の方法を知っておく必要があります。今回は、そうした飲食店の売却の際の注意点や、居抜き譲渡やM&Aによる事業承継などを含めた方法について解説いたします。

飲食店の現状と閉店時の課題

それでは、まずは飲食店を取り巻く環境や、店舗を閉店や撤退するときの課題について説明します。

(1)飲食店にまつわる環境は?

飲食業界は景気などのマクロ要因の影響を受けやすいものです。日本では、長期的なデフレ傾向における価格競争によって飲食店の単価があがらず、収益性が低下していっているという現状があります。

また、消費者の嗜好によって左右されやすく、流行によって業績が良い業態であっても長続きせず、一時的なブームによって開店された店の多くが、1、2年もしないうちに閉店してしまう、というのはよく見られる現象です。

更には、少子高齢化によって労働人口が大きく減少したことも飲食店には大きな影響を与えています。人手不足で事業の継続ができなくなるというケースが増加しているのです。また、家族経営の食堂や喫茶店などで、後継者がいないため閉店せざるを得ないケースも多くあります。

こうした変動が激しい飲食業界においては、店舗の閉店は珍しいことではありません。しかしながら、ただ閉店をしてしまうと費用がかかってしまうことが多いため、閉店時の円滑な方法を検討する必要があります。

(2)飲食店の閉店の理由は?

飲食店に限らず、企業の経営者の高齢化や後継者不足は日本においては大きな問題となっています。後継者がおらず、従業員の中でもお店を引きつぐことができる人材がいないというケースは多くの企業で行っている現象です。

また、そもそも働く人がアルバイトやパートも含めて確保することができずにやむを得ず閉店せざるをえないケースも増えてきています。この場合、店舗は黒字なのにも関わらず閉店をせざるを得ず、こうした事態を回避する方法として事業承継によるM&Aが注目されています。

(3)飲食店を閉店する場合、どのような費用がかかるのか?

飲食店を閉店する場合は、ただ廃業して閉店をしてしまうと、通常「原状回復費」「空家賃」の2つが発生するケースがほとんどです。それでは、これらの二つについて詳細に解説いたします。

原状回復費は、賃貸契約において定められており、賃貸借契約の終了後に、賃借人は物件を原状に回復して明け渡す義務があると規定されている場合に、発生する費用です。

原状回復とは、入居する前の状態に戻すことであるため、多くの場合はコンクリートむき出しの躯体のみのスケルトンの状態にする必要があり、そのためには工事を必要とすることがほとんどです。このための費用が原状回復費となります。原状回復費としては、物件の階数や構造などの条件によって変動しますが、坪当たり5~10万円程度の工事費用が掛かります。

空家賃は、物件を実際には使用していないにもかかわらず、退去の通知から数か月間は家賃を払い続けなければならないというルールによって発生します。不動産やオーナーの意向によってこの契約期間は異なってきますが、10ヶ月以上にもなるケースもあるため、支出が更に増大することになってしまいます。

飲食店を閉店する際の円滑な方法とは?

それでは、飲食店を閉店する際に、こうした支出をできるだけ出さずに円滑に閉店する方法についてご紹介します。

(1)M&Aによる事業譲渡

M&Aによる事業譲渡とは、売却対象の企業を、事業単位や店舗単位でを売買する方法です。例えば、関東圏の店舗だけを売却したり、複数事業をやっている会社が飲食事業部だけ売却するといったケースで用いられます。

事業譲渡を行うのであれば、買い手側は欲しい事業だけを買収することができ、売り手側は不要な事業だけを売却することができることがメリットです。しかしながら、事業を譲渡する場合は、負債などは譲渡されないことが多いため、その分も踏まえた金銭交渉が必要となります。また、各種契約や、雇用契約、許認可なども、新しい事業主が改めて取得する必要があり、注意が必要です。したがって、手続きの手間を考えると、次で紹介する株式譲渡のほうがより円滑な売却が可能となります。

(2)M&Aによる株式譲渡

M&Aによる株式譲渡の場合、売却対象である企業の株式の全部又は一部が売買され、その会社の経営権が買い手側に移行します。株式譲渡の場合は、その企業が持つすべての資産や負債が買い手側に譲渡されることとなります。

この場合は、店舗などの賃貸契約や従業員の雇用契約などもそのまま承継されます。また、債務や負債などもそのまま引き継がれるのが通常です。

(3)居抜き譲渡

M&A以外の手法としては、居抜き譲渡という方法もあります。居抜き譲渡では、事業ではなく、店舗がある不動産そのものが売却され、賃貸借契約を結んでいる物件が対象となります。

この場合、閉店する店舗造作を残した居抜き物件を、次の賃借人に引き継いでもらう形で売買が行われます。

飲食店売却のメリット

それでは、飲食店を何らかの方法で売却した場合のメリットについて見ていきましょう。以下のメリットは、飲食店を廃業によって単に閉店した場合には得られないものです。

(1)店舗を居抜きで売却益

店舗を居抜きで売却できた場合、当然ながらその分の利益を得ることができます。居抜きの金額は立地や造作の質によって左右されますが、数十万から数百万程度にはなるため、事業への投資を回収するのにも役立つでしょう。

(2)飲食店の閉店時の費用を削減

また、単に閉店するだけでは費用として発生していた空家賃や原状回復費が不要となります。上述の通りこうした費用は数百万程度になるため、閉店をせざるを得ない状況で資金不測の中こうした費用を支払わなければならないのは、経営者にとっても負担が大きいでしょう。居抜き譲渡であれM&Aであれ、店舗は継続していくため、こうした費用を負担する必要がないのは大きなメリットです。

飲食店売却の相場と金額の決まり方は?

上述したスケルトン状態の物件を借りて、最初から全て工事をして、店舗としての体裁を整える場合、広さにもよりますが中小規模のお店での工事代金は1,000万円~2,000万円ほどになるでしょう。したがって、居抜き譲渡の際も、相場としては数百万円になることが多いようです。しかしながら、実際に居抜き譲渡が希望通りにいくケースは少なく、ここからは居抜き譲渡が円滑にいくために必要な要素について解説いたします。

居抜き譲渡の金額を決める要因は色々ありますがその中でも最も大きいのが立地、規模、清潔感の3点と言われています。

(1)立地

まず最も重要なのが立地です。特に立地を重視するのは、大手チェーン店です。こうしたチェーン店では、データに基づく立地分析に長けており、立地によって売上のシミュレーションをかなり正確に出すことができます。したがって、良い立地にある居抜き物件であれば、高額でも購入することが多いのです。大手チェーンは、賃料を吊り上げて借りてランニングコストがアップすることを嫌う一方で、居抜きとして購入する費用は資産計上が可能であり、金額が上がってもそれほど気にしない傾向にあります。したがって、こうした大手チェーンに好まれる立地の居抜き物件の相場は高くなります。

(2)規模

飲食店としてニーズの高い物件の広さは、30坪以上の中規模店ではなく10坪~15坪程度の物件です。このサイズ感の物件はニーズが多いので、相場が高くなります。また、部屋の形の良し悪しも売却価格に影響を与えます。変則的な部屋の形の場合席数がうまく取れず、売上に影響を与えるためです。例えば、間口が狭く奥に長いタイプの物件よりは、間口が広い物件の方が相場は高くなるでしょう。

(3)清潔感

相場を決めるときは、見た際の第一印象が影響を与えます。店舗を見学に来た際に、お店が綺麗だと居抜き物件への抵抗が減るため、金額を高めに払ってもよいという印象になるようです。営業年数が長くても、毎日清掃をちゃんとしてきた店は状態がよいため、居抜き譲渡の際も比較的高くても売れやすい傾向にあります。

飲食店売却の際の注意点

それでは、最後に居抜きを含めた飲食店売却の際の注意点についてみていきましょう。

(1)造作譲渡禁止の契約がないか

店舗の賃貸借契約書に「造作譲渡禁止」の記載がある場合、居抜き譲渡や事業売却などができない可能性が高いです。こういう条項がある場合、物件の所有者は物件の貸主が変更することを嫌がる傾向にあります。したがって、居抜き売却や事業売却などによって、物件の実質的な借主が変わってしまうことを拒否されてしまいます。

このような条項がある場合、物件所有者と一度改めて交渉をしてみるとよいでしょう。交渉によって認められることもあるため、丁寧に説明して交渉していく必要があります。

(2)造作にリース契約がないか

造作に対してリース契約がされている場合、造作の所有者は店舗オーナーではなく、リース会社にあります。この場合、造作の譲渡をするには、リース会社の許可が必要があります。

リース契約があっても居抜きで売却したい場合においては、リース対象の造作の残債を一括で清算するか、次の賃借人にリース契約を引き継いでもらわなければなりません。

(3)造作が劣化していないか

造作は使用によって劣化します。買い手側が状態の悪くなった造作を使い続ける事で、水漏れなどのトラブルを招いてしまい、結果として一から工事するよりも費用がかかってしまった、ということもなくはありません。

売る側にとってはそれでもかまわないと思うかもしれませんが、特に造作譲渡料をもらって売却した場合には、トラブルの元になります。売る側もきちんと造作の状態を把握して、その買い手側への説明と、それを元にした造作譲渡契約をしっかり結んでおくことが肝要です。

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