
M&Aや事業承継では、事業承継・引継ぎ補助金を使えるケースがあります。これは、経営資源の引継ぎに要する経費などを補助する制度です。この記事では、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)を中心に紹介します。
事業承継・引継ぎ補助金とは

事業承継・引継ぎ補助金とは、M&Aや事業承継をきっかけとする経営革新などへのチャレンジや、M&Aによる経営資源の引継ぎを実施しようとする中小企業などを後押しするための支援制度です。経営革新などへのチャレンジにかかる費用や、M&A実施時に専門家を活用するためにかかる費用などを補助しています。
概要: https://forval-shoukei.jp/detail/7120/
2021年には、令和3年度当初予算の事業承継・引継ぎ補助金の公募が開始されました(申請期間:9月30日(木)~10月26日(火)、11月現在は申請受付が終了)。
M&Aや事業承継の経費を補助するのは(専門家活用)
事業承継・引継ぎ補助金は、大まかに「経営革新」「専門家活用」という2つの類型に分かれています。このうち、M&Aや事業承継の経費(例;M&A仲介会社の依頼費用、デューデリジェンス費用)を直接的に補助してくれる補助金制度は、「専門家活用」の類型です。
以降、この記事では、M&Aや事業承継を行う際に、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)を活用するための情報を中心に提供します。
出典:中小企業庁 令和3年度当初予算「事業承継・引継ぎ補助金」の公募要領を公表します
令和2年度「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」からの変更点
ここでは、令和2年度からの大きな変更点を簡単にまとめて紹介します。
まず、令和2年度第3次補正予算の補助上限は400万円(廃業を伴う場合は200万円加算)であったのに対して、令和3年度当初予算の補助上限は250万円(廃業を伴う場合は200万円加算)に変更されました。
また、委託費のうちFA/M&A仲介費用に関しては、「M&A支援機関登録制度」に登録されている業者によるFAおよびM&A仲介費用のみが補助対象経費に指定されました。
つまり、M&Aを用いた経営資源引継ぎに際して仲介会社などに依頼し、手数料や報酬に関して本補助金の利用を検討した場合には、「M&A支援機関登録制度」に登録されている業者のみが対象とされます。
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)を活用するための情報

本章では、令和3年度当初予算の事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)を活用するための情報を詳しく取り上げます。
買い手支援型(Ⅰ型)/売り手支援型(Ⅱ型)の2種類が存在
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)は、さらに細かく「買い手支援型(Ⅰ型)」「売り手支援型(Ⅱ型)」の2種類に分かれます。これら2つの類型によって、補助金を受けるために満たすべき要件が異なるため注意しましょう。
上記のうち、買い手支援型(Ⅰ型)を活用するための要件は、以下のとおりです。
- 事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎを行う予定の中小企業者等であり、以下のすべての要件を満たすこと
- 事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受けた後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること
- 事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること
これに対して、売り手支援型(Ⅱ型)を活用するための要件は、以下のとおりです。
- 事業再編・事業統合等に伴い自社が有する経営資源を譲り渡す予定の中小企業者等であり、以下の要件をみたすこと
- 地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれること
1件のM&Aで買収側・譲渡側の双方が利用できる
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)では、1件のM&Aにおいて「買い手支援型(Ⅰ型)」「売り手支援型(Ⅱ型)」どちらも利用することが可能です。つまり、1つのM&A案件において、譲受側と譲渡側の双方での利用が可能です。
同じ会社で交付申請を複数回実施することはできず、原則として1度の申請のみが許されています。
なお、売り手支援型(Ⅱ型)で、同じ申請者が複数の対象企業をそれぞれ異なる後継者に引継ぐケースでは、複数回の交付申請が認められています。
補助対象者は?
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)の補助対象者は、別途定められている9項目の要件および「経営資源引継ぎの要件」を満たしたうえで、「M&Aの最終契約書における契約当事者となる中小企業者等」です。
9項目の一部を紹介すると、「補助対象者は、日本国内に拠点もしくは居住地を置き、日本国内で事業を営む者であること」や「補助対象者又はその法人の役員が、暴力団等の反社会的勢力でないこと」などが挙げられます。
売り手支援型(Ⅱ型)の株式譲渡では、同様の要件を満たす対象企業に加えて、対象企業と共同申請を行った対象企業の支配株主が対象とされています。
補助対象外にあたるケース
主に以下のようなケースが挙げられます。
- M&A後に後継者の保有する議決権が過半数にならないケース
- すでに過半数の議決権を保有している会社とのM&Aを行うケース
- 不動産売買を目的とするM&Aを行うケース
「経営資源引継ぎの要件」とは?
「経営資源引継ぎ」に該当するには、補助事業期間に経営資源の被承継者と経営資源の承継者との間で、「事業再編・事業統合が着手(または実施)される予定であること」もしくは「廃業を伴う事業再編・事業統合が行われる予定であること」が求められます。
補助の対象となる経費は?
補助の対象となるのは、補助対象事業を実施するために必要となる経費であり、なおかつ事務局が必要かつ適切と認めた以下の3項目の経費です。
- 使用目的が補助対象事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
- 補助事業期間内に契約・発注をおこない支払った経費
- 補助事業期間完了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額・支払等が確認できる経費
具体的には、類型ごとに以下のような経費が補助の対象とされています。
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類型 |
補助対象経費の区分 |
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買い手支援型(Ⅰ型) |
謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料 |
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売り手支援型(Ⅱ型) |
謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料/(廃業費用)廃業登記費、在庫処分費、解体費、原状回復費 |
委託費の計上方法と対象外の経費
委託費とは、FA/仲介会社に支払われる経費のことです。このうち、基本合意に基づく「中間報酬」は、補助事業期間内に「選任専門家と契約書を締結」もしくは「交渉相手と基本合意書を締結」を行い、補助事業期間内に支払った費用が、補助対象経費として認められます。
また、最終契約に基づく「成功報酬」は、補助事業期間内に「選任専門家と契約書を締結」もしくは「交渉相手と最終契約書を締結」を行い、補助事業期間中に支払った費用が、補助対象経費として認められます。
なお、委託費に関して対象外となる経費は、主に以下のとおりです。
- 再生計画書作成などのコンサルティング費用
- 経営資源引継ぎに伴う債務整理(法的整理や私的整理を含む)手続に関する費用
- FA/仲介契約締結前のコンサルティング費用
- バリューアップを目的とするコンサルティング費用
補助率、補助上限/下限額は?
以下のとおり、それぞれの類型によって異なる数値が設定されています。原則、補助上限額は250万円以内ですが、補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合、上限が半額(125万円)に減少する点に注意しましょう。
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類型 |
補助率 |
補助下限額 |
補助上限額 |
上乗せ額 |
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買い手支援型(Ⅰ型) |
補助対象経費の2分の1以内 |
50万円 |
250万円以内 |
− |
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売り手支援型(Ⅱ型) |
+200万円以内 |
申請期間/申請方法/補助事業期間は?
2021年11月現在、令和3年度当初予算の補助金申請については受付期間外です(2021年9月30日(木)~10月26日(火)18:00)。
申請方法は、原則として「jGrants」を用いた電子申請が採用されています。申請を行うには、「gBizID(GビズID)プライム」のアカウント取得が必要とされており、この手続きには数週間ほどかかることから、早期のタイミングで準備に取り掛かりましょう。
なお、補助事業期間は、交付が決定された日から最長で2021年12月31日までであり、今回の補助金では事前着手が認められていません。
相見積が不要となるケース
事業承継・引継ぎ補助金を利用する際は、価格の妥当性を証明するために、原則として2者以上の相見積の取得が必要です。ただし、M&Aのサポート費用は情報の機密性が高いなどの理由で、相見積を行えない場合もあります。
そこで本補助金では、以下の条件において相見積が不要とされています。
- 補助対象経費において、選定先以外の 2 者以上に見積を依頼したが、全ての専門家や業者から見積を作成できないと断られたケース
- FA/仲介費用において、専門家費用がレーマン表により算出された金額以下だったケース
- システム利用料において、成功報酬のみのM&Aのマッチングサイトに複数登録して、成功報酬を申請するケース
- FA/M&A仲介費用において、2021年9月17日前にFA/M&A仲介業者と専任条項がある委任契約を締結し、補助事業期間中に締結した基本合意又は最終契約に基づく中間報酬又は成功報酬を申請するケース
出典:事業承継・引継ぎ補助金事務局 令和3年度当初予算 事業承継・引継ぎ補助金 専門家活用型【公募要領】
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)を申請する流れ

事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)を申請する際は、以下の流れで手続きを進める必要があります。
- gBizIDプライムの取得
- 電子申請による交付申請
それぞれのステップを順番に詳しく紹介します。
①gBizIDプライムの取得
事業承継・引継ぎ補助金の申請は、原則として電子申請で実施します。具体的にいうと、経済産業省が運営する補助金の電子申請システム「jGrants(Jグランツ)」を利用する仕組みです。
上記のシステムを利用する際は、「gBizIDプライム」のアカウントが求められます。「gBizIDプライム」のアカウントを取得するには、2〜3週間程度の期間がかかるため、早期のタイミングでアカウントを発行しておきましょう。
「gBizIDプライム」のアカウントを登録するには、以下4項目の準備が必要です。
- 法務局が発行した印鑑証明書または地方公共団体が発行した印鑑登録証明書の原本(発行日より3カ月以内のものに限る)
- 法人代表者印または個人事業主の実印を押印した申請書
- 法人代表者自身または個人事業主自身のメールアドレス
- 法人代表者自身または個人事業主自身のSMS受信が可能な電話番号
②電子申請による交付申請
「gBizIDプライム」のアカウント登録後は、電子申請を利用して交付申請を行います。
jGrantsを用いた申請時には、事務局のWebサイトからダウンロードできる必要書類チェックリストを活用すると、必要書類に不足がないか容易にチェック可能です(必要書類チェックリストは提出不要)。
経営資源引継ぎ補助金との違い

経営資源引継ぎ補助金は、2020年4月に成立した第1次補正予算に組み込まれたことで誕生した支援制度です。
企業の事業承継を促進し、雇用の維持や技術の伝承および、組織再編による企業の効率化を支援するための制度として創設されました(2021年11月現在、「事業承継補助金」と融合する形で、「事業承継・引継ぎ補助金」に名称が変更されて運用中)。
現行の事業承継・引継ぎ補助金と経営資源引継ぎ補助金との間に見られる最も大きな違いは、補助上限額が250万円に上昇した点にあります(経営資源引継ぎ補助金は200万円)。
そのほか、電子申請が求められるようになり、早期にアカウントの取得を行っておく必要がある点も違いの1つです。
M&Aや事業承継で使える補助金の詳細はお問い合わせを

この記事では、M&Aや事業承継で使えるとして、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)の制度概要を紹介しました。事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)を利用すれば、資金面の問題を解決したうえでM&Aおよび事業承継を行える可能性があります。
ただし、補助金の支給を受けるには、記事で紹介した以外にもさまざまな要件を満たしたうえで申請手続きを進めなければなりません。M&Aや事業承継に役立てられる制度を上手く活用するためにも、専門家からサポートを受けつつ入念に準備すると良いでしょう。
もしもM&Aや事業承継を行う際に補助金を活用したい場合には、フォーバルまでご相談ください。当社フォーバルは、過去20万社の経営支援実績があり、中小・小規模企業の存続と成長に向けた事業承継M&A支援を手掛けております。
M&Aおよび事業承継の実施が未定であっても電話・チャットで無料相談を実施しておりますので、「事業承継・引継ぎ補助金を使ってM&Aを行いたい」と思われた方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください(2021年12月現在、補助金の申請受付期間外ですのでご注意ください)。
事業承継・引継ぎ補助金について:https://forval-shoukei.jp/detail/7120/








