最近増えている会社売買について解説!税金、相場、メリット・デメリットを理解しよう!

「会社売買」というと、ひと昔前まではあまりよい印象は持たれていませんでした。かつてはメディアでさえ、「売買」と「買収」を混同することが多く、「会社売買」と、いわゆる「(敵対的)買収」とが誤解されていたことが原因だと思われます。

しかし、近年ではまったくその様相が変わってきました。若い起業家に最終目標をたずねると、「IPO(新規上場)かM&A(会社売却)」と迷わず答える人が増えています。事業規模を拡大しながら一気に新規上場まで駆け上がるように努力するけど、途中で無理であれば売却する道を選ぶというわけです。

現在では大企業だけでなく中小企業も会社売買を行っており、その件数は近年増え続けています。

そこで本日は、会社売買のメリットやデメリット、そして売却・購入時の税金などについて解説していきます。

会社売買の動向

会社売買の現状

近年M&Aの件数は、リーマンショックなどの時期を除いて右肩上がりで増えています。大企業同士のM&Aは落ち着いてきていますが、中小企業ではまだまだ件数が増加しています。

ひと昔前までは、会社を売買するということに対して抵抗感が大きかったのですが、近年価値観が多様化し、むしろ会社売買をビジネスチャンスととらえる経営者が増えています。また、特に中小企業の経営者を悩ませている後継者問題の解決策としてM&Aが有用であることが認知され始めたのも、件数が増加している要因と言えるでしょう。

会社売買の今後の見通し

会社売買は特に中小企業において今後も件数が増加していくと思われます。国内企業間のM&A中でも中小企業同士の数は増加しています。そのおもな理由としては、経営者の高齢化が挙げられます。

後継者不在のまま廃業を選ばざるを得ない経営者が、事業承継の手段としてM&Aを積極的に活用するようになっているのです。この後継者不在を解決する手段としてのM&Aを日本政府も推進しており、事業承継税制の整備やM&Aに関する補助金も拡充しつつあります。

2025年問題を解決する手段のひとつとして、今後さらに件数を増やしていくことになるでしょう。

会社売買か廃業か

企業は、企業活動を通じてモノやサービスを作り出し、顧客に提供しています。製造業であれば手に取って見ることのできるモノを作り出し、サービス業であれば顧客がより便利になる各種のサービスを作り出しています。

つまり、企業とは、何かを生み出してそれを誰かに売っているわけです。会社売買とは、その対象が会社そのものになっているに過ぎず、本質的な意味では会社売買も企業活動の一環に過ぎません。

会社は誰のものか

会社は、第一義的には株主のものです。中小企業の場合であれば、株主である経営者のものです。

しかし、近年ではこの考え方は変わってきています。コーポレートガバナンスを巡る考え方が変わるにつれ、会社は株主だけでなくそれを取り巻くステークホルダーのものであると考えられるようになっています。

ステークホルダーとは、企業の経営活動の存続や発展に対して、利害関係を有するもののことをいいます。具体的には、顧客や従業員、債権者や仕入先など企業活動をしていく上で関係する多くの人たちのことです。

会社とは、これら多くの人たちとの関わりの中でだけ、成長を持続することができるのです。

つまり、広義的には、会社は地域社会にかかわるすべての人のものなのです。

廃業により失われるもの

手塩にかけて育て上げてきた企業は、経営者にとって我が子同然であるのは十分に理解できます。会社売買によって自分の手から離れてしまうのが辛いのも当然です。しかし、後継者不在によって廃業を選ばざるを得なくなってしまうことだけは何としても避けなければなりません。

もし廃業してしまえば、従業員の雇用が失われてしまいます。そしてその家族の人生にも、それなりの影響を与えてしまうことになります。得意先や仕入先の売り上げにも、もちろん影響を与えることになり、中には廃業せざるを得ない仕入先なども出てしまうかもしれません。

廃業を選択してしまうと、自分では想像できないほどの範囲で大なり小なり関係者の人生に影響を与えてしまうことになってしまいます。

会社売買で次世代にバトンタッチを

会社売買により譲受企業に会社を譲れば、会社をそのままの状態で残すことができます。従業員の雇用も、得意先の仕事も守られます。

もちろん企業風土や仕事の内容などは、少しづつ変わっていくことでしょう。しかしその新しい環境に適応し、飛躍できるかどうかは残された社員や得意先の努力で解決すべき問題です。

起業家として起業し、経営者として立派に最後の仕事を果たすためには、会社売買による次世代へのバトンタッチは必ず必要なのです。

売買相手の探し方

会社売買の動向やその必要性についてご理解いただいたところで、具体的に何をすればよいのかについてお話していきます。

会社を「売る」にしても「買う」にしても、相手企業を見つけなければなりません。そこでこの章では、具体的な相手企業の探し方について解説していきます。

M&A仲介業者に依頼

売買相手を探すうえで、もっともポピュラーな方法が、仲介業者への依頼です。仲介業者はさまざまな案件を網羅しているので、できるだけ理想に沿った案件を提案してくれます。また、M&A完了までしっかりとサポートをしてくれるので、交渉が円滑に進みやすく、トラブルを避けることができます。

M&A仲介サイトの活用

最近では、インターネット上で多くの仲介サイトを見つけることができます。仲介サイトの良いところは自分で良さそうな案件を探して見つけることができる点です。料金体系はサイトによりさまざまですが、登録時には手数料が取られないサイトも増えています。理想的なマッチングができるかは運次第ですが、自分で探したい方にはおすすめの方法と言えます。

知り合いや取引先を通じて探す

地道な方法ですが、知り合いや取引先を通じて案件を探すのも一つの手です。もしかすると、ネットなどに上がっていない理想的な案件をさがすことができるかもしれません。仲介サイトや仲介業者に依頼する前に、一度知り合いや取引先に案件がないかを聞いてみると良いでしょう。

金融機関などの紹介

どちらかと言うと受け身の方法にはなりますが、金融機関や投資ファンドが案件を提示してくれるケースも存在します。探す手間が省け、理想的なマッチングができる可能性があります。しかし、自分たちにとって都合の良い案件を持ってくる可能性もあるので、しっかりと内容を精査しなければいけません。

会社売買の税務

会社売買の税務は、その売買の手法によってそれぞれことなります。そこで中小企業のM&Aでもっとも利用されている2種類の方法について解説していきます。

株式譲渡と事業譲渡

中小企業のM&Aでよく活用されているのは、株式譲渡と事業譲渡です。まずそれぞれの方法について、その特徴やメリット・デメリットを整理してみましょう。

株式譲渡による会社売買

売り手側の株主が買い手側の企業に株式を売却することにより、会社売買を成立させる方法を株式譲渡といいます。株式譲渡は売買のための手続きが比較的簡単で、成立さえしてしまえばあっという間に手続きを終えることができます。

売り手のメリットとしては債務も含め会社を丸ごと売却することができるため、売却後に会社と関わることは基本的にありません。いっぽう買い手のメリットとしては、買い取り後も株主や役員は変わるもののそれ以外は基本的に何も変わらないため、違和感なく事業を継続することができます。

逆に、売り手のデメリットとしては、売却後何もかもなくなってしまうことが挙げられます。いっぽう買い手のデメリットとしては、会社を丸ごと買収するため欲しくない部分や人・債務などもまとめて引き継ぐことになってしまうことです。

事業譲渡による会社売買

事業譲渡とは、企業内の事業の一部門だけを切り取って売買する方法です。資産や負債、人や事業などの一つ一つを精査しながら、どれを売却していくかを決めていきます。そのため、株式譲渡と比べると時間が大幅にかかります。

売り手のメリットとしては、売りたい部分だけを売ることができるため、売却後も事業を継続することも、そして廃業することも自由に選択することができます。

いっぽう買い手のメリットとしては、株式譲渡とはことなり欲しい部分だけを譲り受けることができるため、無駄やリスクを排除することができます。

逆に、売り手のデメリットとしては、引き受けてもらえなかった債務に関しては引き続き自分で処理しなければなりません。いっぽう買い手のデメリットとしては、株式譲渡とは違い業務の許認可や権利などは基本的に譲渡することができませんし、転籍した従業員が新しい職場になじめず大量に退職してしまうリスクもあります。

株式譲渡の税務

それでは2つの手法についての簡単な説明を終えたところで、本題の税務について解説していきたいと思います。まず、株式譲渡による税務について見てみましょう。

なお、株式を売却した株主側と、それを購入した企業側に分けて考えてみます。

売却した企業側の税務

株式を売却した株主は、売買価格と株式発行価格の差額(=売却益)分に対して翌年の確定申告で譲渡所得税を支払うことになります。なお、株式の売却益の算出方法は、以下の手順で行います。

手順① 1株あたりの売却価格を算出する

株式譲渡による会社売買の場合、その売買価格は以下のように表すことができます。

  • 会社の売却価格=(総資産額-総負債額)+のれん

のれんとは、会社が築き上げてきたブランドやノウハウ、技術力や優秀な人材など無形の価値が集まったものだと思っていただければ結構です。

まずはじめに、1株あたりの売却価格を求めます。算式は以下のようになります。

  • 1株あたりの売買価格=会社の売却価格÷発行済株式総数

手順② 1株あたりの売却益を算出する

次に、1株あたりの売却益を求めます。算式は以下のようになります。

  • 1株あたりの売却益=1株あたりの売買価格-1株当たりの発行価格

手順③ 売却益の合計額を算出する

最後に、売却益の合計額を算出します。なお算式は以下のようになります。

  • 売却益の合計=1株当たりの売却益×売却した株式の数

こうして株式を売却した株主が、各々で売却益を算出し、翌年の確定申告で譲渡所得税を申告・納税します。

購入した企業側の税務

購入した企業側は、のれん代を最長20年で毎期均等償却していきます。しかしこれはあくまで会計上のもので、法人税を計算する時には減価償却分を損金不算入にするため、税務上のメリットは特にありません。

事業譲渡の税務

事業譲渡は、譲渡側から譲受側に資産や負債が移動します。株式譲渡と同じように、それらに加えてのれん代も上乗せされた金額が売買価格となります。

  • 事業譲渡による売買価格=(事業譲渡により移動する資産)-(事業譲渡により移動する負債)+のれん

仮に、移動する資産や負債が売却側の帳簿価格と同じだとすると、事業譲渡による売却益はこののれん代になります。

よって、譲渡側の企業はのれんの代金が譲渡益となり、その金額に対して最終的には法人税が課税されることになります。

いっぽう譲受側の企業については、株式譲渡と同じようにのれん代を償却していくため、その分だけの税効果がのれんの償却期間の間あらわれることになります。

会社売買の相場

会社売買には相場がありません。なぜなら、価格とは売り手と買い手とのマッチングによって決まるからです。「どうしてもこの会社が欲しい!」と思う買い手がいれば、売り手企業が多少割高でも会社売買は成立します。逆にどれだけ素晴らしい企業でも、時期や買い手に恵まれなければ、割安な価格しかつきません。

このように会社売買における価格とは、売り手と買い手のニーズとその組み合わせによって決定されるため、「これくらいの事業規模の会社ならこれくらいの価格だろう」という相場は存在しないわけです。

ただし、何もない状態では売り手と買い手が話し合うことができないため、理論上の会社の価値を算出しておかなければなりません。そのための理論価値の算出を「企業価値評価(バリュエーション)」といいます。

企業価値評価の方法について

中小企業の企業価値評価にはいくつかの方法があります。ここでは頻繁に用いられている2種類の方法について解説します。

評価方法① コストアプローチ

コストアプローチとは、企業の純資産価値をもとに評価する方法です。帳簿価格に基づいた「簿価純資産法」と時価に基づいた「時価純資産法」の2つがありますが、一般的には「時価純資産法」の方を用います。土地のように含み益や含み損がある資産を時価に評価し直し、今現在の資産価値を企業価値に反映させるわけです。

コストアプローチを採用する場合、以下の算式により企業価値を算出します。

  • 企業価値=総資産(時価評価)-総負債(時価評価)+のれん

のれんとは、会社のブランドやノウハウなど決算書上では表現できない事業価値の総体のことをいいます。こののれんが、売り手企業側の売却益となるわけです。

評価方法② インカムアプローチ

インカムアプローチとは、企業が将来生み出す収益やキャッシュフローの予測をもとに企業価値を算出する方法です。

なお、インカムアプローチには以下の3種類があります。

  • DCF法
  • 収益還元法
  • 配当還元法

しかし実際に用いられているのはDCF法が多いため、ここではDCFについての簡単な解説のみにとどめます。

DCF法とは

DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法とは、企業活動によって将来生み出されるであろう期待キャッシュフローの総和を、現在価値に割り引いて算出したもののことをいいます。

つまり、「今これくらい儲かっているのだから、買収後もきっとこれくらいは儲かるんじゃないかな?」という金額を数年先(だいたい3~5年分)まで計算し、それを合計した数字を企業価値と考える方法のことをいいます。

なお、フリーキャッシュフローを計算するためにはさまざまな計算方法がありますが、以下の計算式が最も一般的に用いられています。

  • フリーキャッシュフロー=営業利益×(1-法人税率)+減価償却費-運転資本増加額-設備投資額

この式だけを眺めていると分かりにくいかもしれませんが、簡単にいうと、会社が1年かけて稼ぎ出したお金のうち、事業を維持するために必要な設備投資などの支出を差し引いた金額を算出しています。

この式で算出した金額を3~5年分合計し、現在の価値に割り引いた金額がDCF法による企業価値評価額となります。

コストアプローチとインカムアプローチの違い

コストアプローチは現在の純資産をベースに企業価値を評価します。いっぽうインカムアプローチは、将来生み出す収益を予想して企業価値を評価します。

つまり、企業価値算出の軸足を現在に置くのであればコストアプローチを採用し、将来の収益がかなりの確率で見込めるのであればインカムアプローチを採用します。

ただし、コストアプローチで算出した金額とインカムアプローチで算出した金額は、当然ですがまったく違う数字になります。

このことからも、企業価値評価は絶対的な基準ではなく、ある種の目安として活用するのが良いことがことがわかります。

会社売買のメリット・デメリット

買い手側のメリット・デメリット

買い手側は、事業を買収することで、会社の規模を拡大することができます。イチから会社を立ち上げるのには時間とコストがかかります。しかし、従業員、販路、取引先をすでに持っている事業を買収すれば、時間とコストを削減し、事業の拡大を図ることができるのです。

また、事業の弱みを補強できたり、事業を多角化することも可能です。適切な事業を買収すれば、シナジー効果も期待でき、会社の業績を向上させることにつながるでしょう。

いっぽうデメリットは、簿外債務や不要な資産なども包括的に承継してしまう可能性があるという点です。他にも取引先とのトラブルや訴訟などを引き継いでしまう可能性もあります。買収する際にはしっかりと相手企業のことを調べ、情報を精査することが重要と言えるでしょう。

また、期待していたシナジー効果を得られないなど、業績に結びつかない可能性もあります。ビジネスなので、すべてが思い通りには行かないところはありますが、しっかりとした目標や見通し、経営戦略を事前に立ててからM&Aに臨みましょう。

売り手側のメリット・デメリット

次に、売り手側のメリットを見てみましょう。もっとも大きなメリットは売却益を得られることでしょう。会社売却の金額はかなり大きくなることが多いです。得た売却益は、新しい事業を始めるために使ったり、引退後の生活資金にしたりすることができます。

そして、会社を廃業する際に発生する廃業コストがかからないこともメリットでしょう。会社をやめる際には少なからずコストがかかります。廃業コストを削減しながら、売却益を得ることができるのは売り手側の大きなメリットと言えます。

また、後継者不在問題の解決ができるのもメリットでしょう。現在、多くの中小企業の経営者が後継者不在で悩んでいます。後継者がいないために、伸びしろのある事業をたたまなければならないという状況に追い込まれている経営者が多数存在しているのです。

会社売却をすれば、どんな形であれ、会社は存続します。よって、後継者不在問題を解決し、一緒に働いていた従業員たちも失業することなく引き続き事業に携わることができるのです。

いっぽう、売り手側にはあまりデメリットと言えるものはないのですが、希望金額で会社を売却できない可能性はあります。M&Aではそれなりの金額が動くので、買い手側の企業も簡単には妥協しません。また、売却にはタイミングも重要なので、業績が良い時などのタイミングでM&Aを実行することが理想的と言えるでしょう。

会社売買の注意点

会社売買をするうえでもっとも気を付けなければいけないのは、マッチングです。それを軸に、売り手側と買い手側の注意点をまとめてみます。

売り手側の注意点

売り手がどれだけ素晴らしい企業であっても、本当にそれを必要としている買い手企業に出会うことができなければ高い値段で売却することはできません。ですから、多くの顧客を抱えM&Aの実績も豊富な仲介会社などに早い段階から相談し、じっくりと時間を掛けて取り組まなければなりません。

買い手側の注意点

どれだけ素晴らしい企業が割安価格で手に入るとしても、本当に自社にとって必要でなければ意味のない支出となってしまいます。そのため、会社売買の前に自社の強みや弱みを整理することにできるだけ時間をかけましょう。

買い手にとって本当に必要な企業であるかどうかは、買い手企業の現状整理と将来の事業計画がなければ決めることができません。

事前にこれらを整理するためには、親身になって相談に乗ってもらえるアドバイザーを探しておかなければなりません。

会社売買はプロへ相談し適切な判断を

近年増え続けている会社売買は、すでにビジネスに欠かせないものとなっています。事業規模を一気に拡大させるために、また事業承継と創業者利益を獲得するためにも、なくてはならないツールです。

しかしこのチャンスを最大化させるためには、自社の魅力を最大限引き出し、理想の売り手や買い手とマッチングさせることのできる仲介会社を見つけることが必須です。

当社は、経営知識や実務経験が一定以上である認定経営革新等支援機関に認定されており、税理士や弁護士などの士業専門家と提携しつつ、事業承継をはじめさまざまな経営支援実績を幅広い視野に立ち、経営者のみなさんを万全の態勢でサポートしています。

「事業譲渡を検討してみたい」と思われた方はぜひ一度お気軽にご相談ください。


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