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会社売却にかかる税金はいくら?|算出方法や税金対策を徹底解説

会社売却にかかる税金は、実施する主体(個人と法人)により異なります。個人の場合、所得税/住民税/復興特別所得税です。この記事では、会社売却にかかる税金の種類、金額の算出方法、税金対策などを解説します。

会社売却とは

税金について確認する前に、まずは会社売却の定義をおさらいしておきましょう。

そもそも会社売却とは、会社を第三者に譲渡する行為を意味する言葉です。一般的に会社売却の手法というと、会社全体を売却する「株式譲渡」と特定の事業のみを切り出して売却する「事業譲渡」の2種類が挙げられますが、この記事では基本的に株式譲渡による会社売却を対象に、税金に関する解説を行います。

なお、会社売却は、M&Aを譲渡側の立場から見たときの言葉です。M&Aとは、合併・買収を意味する言葉であり、代表的な手法には株式譲渡や事業譲渡が挙げられます。

会社売却の主な目的は、以下のとおりです。とりわけ最近は、事業承継を理由に会社売却を行う中小企業が増加傾向にあります。

 

  • 経営の安定化(大手企業への傘下入りによって)
  • 主力事業への集中
  • 売却利益の獲得
  • 後継者不在の問題を解決

 

東京商工リサーチの調査によると、2021年における後継者が決まっていない企業は58.6%で、前年より1%程度上昇しています。

 

後継者不足が原因で会社を廃業してしまうと、多くの廃業費用がかかったり、社員が職を失ったり、取引先が連鎖倒産したり、顧客に迷惑がかかったりするなど、多方面に悪影響が及ぶおそれがあります。そこで近年は、廃業ではなく会社売却のスキームを用いることで、第三者に事業承継を行う事例が増加中です。

参考:東京商工リサーチ「企業の「後継者不在率」は58.6%、前年比1.0ポイント上昇 2021年「後継者不在率」調査」

会社売却にかかる税金

 

会社売却を行うことで発生する税金は、実施する主体(個人と法人)によって異なります。本章では、それぞれの立場に分けて、税金に関する情報を順番に取り上げます。

個人による会社売却のケース

まず、オーナー経営者である個人が会社売却を行う場合、株式の譲渡金額が出資額(取得費)および譲渡費用の合計額を超えたときに、譲渡利益が生じます。

株式の譲渡利益は所得税法において「譲渡所得」と捉えられますが、その譲渡所得に対して所得税および住民税が課される仕組みです。

譲渡所得の算出方法

会社売却における譲渡所得は、譲渡金額から株式取得時に生じた費用(取得費)および、譲渡に際して求められた費用(譲渡費用のこと。例:仲介手数料)を差し引くことで算出できます。具体的な計算式は、以下のとおりです。

  • 譲渡所得=譲渡金額-(取得費+譲渡費用)

具体例を挙げると、株式の譲渡金額が1億5,000万円、株式の取得費が5,000万円、譲渡費用が550万円であった場合、譲渡所得は以下のとおり算出されます。

  • 1億5,000万円-(5,000万円+550万円)=9,450万円

ちなみに、相続などにより取得した株式などについては、取得費が不明であるケースが多いですが、こうした場合には概算として売却価格の5%を取得費とすることも可能です。

所得税、住民税の算出方法

所得税法上、株式の譲渡所得を分離課税とし、所得税を他の所得と区別して計算します。

会社売却により譲渡した株式が上場株式である場合、売却益に所得税15.315%(復興特別所得税を含む)および住民税5%の合計20.315%の税率が課されます。

オーナー経営者が保有する株式のほとんどは非上場株式ですが、非上場株式を譲渡したケースでも同様に、所得税15.315%(復興特別所得税を含む)および住民税5%の合計20.315%が課される仕組みです。

法人による会社売却のケース

例えば、「個人が経営する会社を通じて、さらに別の企業の株式を保有している」という場合、会社の名義で株式を保有していることになります。この場合、株主は法人となるため、その保有する株式を譲渡して得た譲渡利益に対して法人税が課される仕組みです。

法人税等の算出方法

法人税を算出する際は、会計上の利益に税務上の調整を加味したうえで算出された課税所得に対して、税率をかけて算出するのが原則です。

ここでいう会計上の利益とは、売上高から売上原価/販売費/一般管理費を差し引いて営業利益を計算したうえで、通常の営業活動以外から生じた営業外損益や臨時的に生じた特別損益などを加減して算出された最終損益である「税引き前利益」を意味します。

上記の計算により求められた会計上の税引き前利益に対して、税務上では損金として認められないもの/益金としなければならないものなどに関する税務調整を行ったうえで、課税所得が算出されます。

そして、この課税所得に税率を乗じることで、法人税の金額を算出できます。法人税率は法人の規模や所得の大小などによって変動しますが、法人住民税や法人事業税などを含めると30%~40%程度です。

なお、法人名義の株式を譲渡すると、その売却損益は営業外損益に計上され、税引き前利益や課税所得などに反映されたうえで、法人税が算出されます。

消費税の算出方法

株式譲渡による会社売却では消費税は非課税ですが、事業譲渡を用いる場合には消費税が課されるため、ここで捕捉として解説を行います。

消費税は、商品を販売したり、サービスを提供したりすることで代金が生じた場合に、顧客から預かった消費税から経費などで支払った消費税を差し引くことで算出されます。

預かった消費税よりも支払った消費税の方が大きい場合、差額が還付される仕組みです。

  • 消費税の納付額=預かった消費税-支払った消費税

もともと消費税は、「国内の事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付けおよび役務の提供」に対して課税されます。そのため、商品の販売やサービスの提供など、対価を得て行う取引のほとんどは、消費税の課税対象に該当するのです。

ところが、消費という行為になじまない取引や社会政策的な配慮などから、非課税とされる取引も存在します。具体例を挙げると、贈与や寄付は対価を得て資産を譲り渡すものではないため、消費税は課されません。また、株式譲渡による会社売却に関しても、株式を消費するという性質の取引ではないことから非課税です。

会社売却にかかる税金(その他)

続いて、会社売却にかかる所得税や法人税以外の税金について取り上げます。

不動産取得税

土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築などで不動産を取得した際に、取得側に対して課される税金のことです。有償/無償の別や登記の有無にかかわらず課されますが、相続により取得した場合など、一定の場合には課税されません。

なお、株式譲渡による会社売却において会社の所有者が変わる場合、その会社が不動産を持っていたとしても、不動産の所有者はその会社であることに変わりないため、不動産取得税は課されません。

印紙税

文書の作成行為の背後にある経済的利益や、文書の作成に伴う取引当事者間の法律関係の安定化という面に担税力を見出して課される税金のことです。

一般的に、会社売却を行う際は、株式譲渡に関する契約書を作成しますが、この契約書は印紙税法で規定されている課税文書に該当しないため、印紙税はかかりません。ただし、株式譲渡の代金の領収書については、価格が5万円以上の場合に印紙税が課せられます。

贈与税(買い手)

ここからは、会社売却の買い手側に課されることのある税金について紹介します。

譲渡側である個人の株主から買い手側の個人株主に対して、著しく安い価格で株式譲渡が行われた場合、買い手側に対して贈与税が課されます。贈与税の算出方法は、以下のとおりです。

 

  • 贈与税=(適正時価-取得価格)×贈与税率

 

贈与税の課税率は贈与の額に応じて変動し、最低で10%(200万円以下の場合)~最大で55%(3,000万円超の場合)です。

 

通常の株式譲渡における税率20.315%と比較すると、贈与の額が大きくなればなるほど高い税率がかかってしまう点には注意しましょう。

 

参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」

法人税(買い手)

譲渡側である個人および法人の株主から買い手側の法人株主に対して、著しく安い価格で株式譲渡が行われた場合、買い手側に対して法人税が課されます。ここでの法人税の算出方法は、以下のとおりです。

 

  • 法人税=(適正時価-取得価格)×法人税実効税率

 

税務上、「適正時価-取得価格」の部分に対して株式譲渡による受贈益が計上されるため、それだけ法人の課税所得が増加します。

会社売却で用いる税金対策

最後に、会社売却で用いられることの多い税金対策をピックアップし紹介します。

役員退職慰労金の活用

自身の経営する会社を売却する際に会社の役員を退く場合、会社から退職金を受け取ること可能です。これを利用し、株式売却時に取引の相手側から代金全額を受け取るのではなく、一部を税額が低くなる可能性のある退職金という形で受け取る方法が有効策であると考えられています。

ただし、実行する際には注意点もあります。1つ目は、現金で退職金を支払うことになるために、会社の現金が少なくなり、場合によっては会社の資金繰りが悪化するおそれがある点です。2つ目は、著しく高額な役員退職金を支払った場合、高額な部分は経費として認められないおそれがある点です。この場合、会社は追加の税金を支払わなければなりません。

これらの事情により、会社売却後に株式を少しでも保有するなど会社と接点を保っておくケースでは、株式の価値の思わぬ減少が起こるおそれがあるため注意しましょう。

会社分割の併用

会社分割とは、事業の一部もしくは全部を、他の会社に承継させることです。

会社分割を行うことで、自社の不要な資産を他のグループ会社などに移動させられます。また、会社分割により不要な資産を他社へ譲り渡しておくことで、株式譲渡による会社売却を行う際、移しておいた資産分の税金が課税されずに済みます。

そもそも会社売却を行う際は、買い手側が欲しがらない資産が取引対象に含まれることもあります。こうした資産について、会社分割を利用し、他のグループ会社に移すことで、オーナー経営者は引き続き必要な資産を保有できる一方で、買い手側にとっても不要な資産を買わずに済ませられるメリットがあります。

第三者割当増資による支配権の移転

会社売却の手法ではないものの、経営権を譲る場合で税金を支払いたくない場合には、第三者割当を利用し、相手側企業に出資してもらうのも有効策の1つです。

これは、売却する会社が資金不足に陥っている場合に、有効な手立てになると考えられています。ただし、この方法を用いると買い手側では持分比率を100%にすることができないため、株式の取得と合わせて利用する場合に適した施策といえます。

会社売却の税金に関する相談は専門家へ

この記事では、会社売却にかかる税金および、講じられることの多い税金対策などを解説しました。

 

株式譲渡による会社売却を行う場合、その主体が個人の株主であれば所得税/住民税/復興特別所得税が課され、合計の課税率は20.315%です。これに対して、法人の株主が会社売却を行う場合は法人税が課され、法人住民税や法人事業税などを含めて30%~40%程度の課税率です。

会社売却で課される税金は決して安い金額ではないため、必要に応じて「役員退職慰労金の活用」「会社分割の併用」「第三者割当増資による支配権の移転」などの税金対策を講じることが大切です。

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