廃業にかかる費用や借入金の返済方法は?お金問題を徹底解説

毎年多くの法人や個人事業が設立され、新たにビジネスの世界へ足を踏み入れていきます。しかし同じように毎年多くの法人や個人事業がビジネスの世界から退席し、その幕をひっそりと閉じています。

廃業する理由はさまざまで、事業は順調であっても後継者不在により廃業を選択する場合もあれば、資金繰りの悪化により会社を畳まざるを得ない場合など色々です。

事業を始めるためにお金が必要なのは広く知られていますが、実は廃業する場合もそのためのお金が必要となります。起業の場合、設立費用そのものは法人・個人の別を除けばどのケースもほぼ同じであるのに対し、廃業の場合廃業時の状況によって必要な費用は大きく変動します。

そのため、たとえば廃業するための費用を計算せずギリギリまで頑張ってしまうと、廃業することができなくなり大変なことになってしまうことがあります。

そのようなことを起こさないためにも、廃業する・しないに関わらず、あらかじめ廃業するための費用を知っておくことは大切です。

そこで本日は、廃業にかかる費用や借金があった場合の返済方法について、できるだけ細かくケース別に分けて解説していきます。

【ケース別】廃業するために必要な費用

それでは早速、廃業するための費用について解説していきます。廃業のための費用を法人の場合と個人の場合に分け、さらに廃業時に債務超過である場合とない場合の合計4パターンに分けて考えてみます。

法人が廃業するために必要な費用

それではまず、法人が廃業するために必要な費用です。

パターン① 債務超過でない法人が廃業する場合

負債をすべて支払っても資産が残り、最終的に残った財産を株主に分配することができるのがこのパターン①です。ちなみに多くの法人が、このパターン①に該当します。

この場合、廃業するために登記手続きを行い、それと並行して確定申告を行います。

法人廃業のための登記手続き

法人を設立した時に設立登記したように、廃業する時にも登記が必要となります。

登記は2段階に分かれており、まず「解散登記」をし、その後で「清算結了の登記」を行います。またこの手続きを行うために「清算人の選任登記」も必要となります。

さらに、解散後に当該会社(清算会社)の債権者に対し、期限内に債権の申し立てをする旨を官報に掲載しなければなりません。

これらの費用(実費)の内訳は、以下のとおりとなります。

  • 解散登記の費用・・・30,000円
  • 清算人の選任登記の費用・・・9,000円
  • 清算結了の登記の費用・・・2,000円
  • 官報公告の費用・・・33,000円
  • 登記手続きのために必要な費用(実費)の合計・・・74,000円

ただしこの費用は全て実費であり、司法書士などの専門家に登記手続きを依頼する場合には司法書士報酬が別途必要となります。

法人廃業のための確定申告

法人を廃業するためには、登記と同じように2度の確定申告を行わなければなりません。1度目が「解散確定申告」、2度目が「清算確定申告」です。

この場合に必要な納税費用は、通常の確定申告と変わりありません。ただし法人の解散により最終的に株主が残余財産の分配を受けた場合には、みなし配当額に対しては源泉所得税が徴収されます。

なお、この2つの確定申告を税理士に依頼する場合には、納税額以外に別途税理士報酬が必要となります。

その他の費用について

登記や確定申告以外にも、賃貸物件を利用していた場合には、返却するための原状回復費用が必要となります。

また労働保険や社会保険の申告業務を社会保険労務士に依頼していた場合、事業所の廃止届などの手続きを行うための報酬も必要となります。

ここまでのまとめ

それではここまでの費用をまとめてみます。債務超過でない法人を廃業する場合に必要な費用は以下のようになります。

  • 登記費用(実費)・・・74,000円
  • 司法書士報酬(依頼した場合)
  • 確定申告費用・・・納税額による
  • 税理士報酬(依頼した場合)
  • 社会保険労務士報酬(依頼した場合)
  • 原状回復費用(賃貸物件を利用していた場合)

パターン② 債務超過の法人が廃業する場合

債務超過の法人が廃業する場合、法人の資産を負債の返済にあてても返済しきれないため、清算手続きを行うことができません。この場合、一部の例外的なケース以外はほぼ全て破産手続きへ進むことになります。

弁護士に破産手続きを依頼した場合で、①破産管財業務において、収集・換価すべき財産がない、若しくは少額で、②かつ債権者が300名未満の場合(ほとんどの場合これに該当します)には実費として、以下の費用が必要となります。

  • 予納金・・・200,000円
  • 印紙・郵送代・・・5,300円
  • 官報公告費用・・・14,786円

もちろんこれ以外に弁護士費用が必要となります。弁護士費用は破産する法人の事業規模などにより変わりますが、一般的に50~150万円ほどが相場となります。

また法人の破産にともない経営者も自己破産をする場合には、裁判所に支払う実費が約3~50万円、弁護士費用が約30~50万円ほど必要となります。

個人が廃業するために必要な費用

個人の場合も法人と同様に、債務超過でない場合と債務超過の場合に分けて考えてみます。

パターン① 債務超過でない個人が廃業する場合

個人事業は開業する時に開業届を税務署に提出するだけで開業することができます。廃業する場合も同様で、廃業届を提出するだけで廃業することができ、翌年に確定申告を済ませば終了です。

法人のように登記が必要となることはありませんので、実費の支払いはありません。

確定申告については、これまで毎年行ってきたことと基本的に同じです。ご自身でやられている場合には費用は必要ありませんし、税理士などの専門家に依頼していた場合には同様に税理士報酬が発生します。

パターン② 債務超過の個人が廃業する場合

法人とは違い個人の場合、廃業のための登記が必要となりません。そのため債務超過であっても事業の廃業そのものは税務署へ廃業届を提出するだけで可能です。

しかし債務の返済義務は廃業後も継続するため、個人財産を処分して返済するなどの必要があります。

また経営者が自己破産を選択する場合には、裁判所に支払う実費が約3~50万円、弁護士費用が約30~50万円ほど必要となります。

この章のまとめ

債務超過でない法人や個人が廃業する場合、費用はそれほど高額になりません。しかし債務超過の場合、法人・個人に関係なく、廃業のための費用はかなり高額になる可能性があります。

判断のタイミングを誤り、債務超過のギリギリまで頑張ってしまうと、最終的な支出額がかえって増えてしまうことを考慮しておかなければなりません。

破産を回避するための借入金の返済方法

前章でお話ししたように、法人・個人に関係なく破産を選択してしまうとかえって廃業のコストは増大し、またやり直すまでの時間も掛かってしまいます。

破産を避けるためには、何としても債務超過の状態を解消しなければなりません。そこで債務の中でも借入金に焦点を絞り、その返済方法を考えてみます。

破産回避のための借入金返済法【法人編】

法人の借り入れは、大きく2つに分けることができます。一つは金融機関からの借り入れ、そしてもう一つは個人(主に役員)からの借り入れです。

金融機関からの借入金の返済方法

法人の資産を処分しても金融機関からの借入金を返済することができなければ、廃業することはできません。この状態を解消するためには、代表者などの役員が借入金の残高相当分を法人に貸し付け、そのお金で金融機関からの借入金を返済します。

この段階では金融機関からの借り入れは返済できても役員借入金が残ってしまうため、法人を廃業することはできません。

そこで役員が貸し付けた貸付金(法人から見れば役員借入金)を債務免除することにより、役員借入金の全てを消してしまいます。これにより債務超過は解消されるため、法人を廃業することができるようになります。

ただし役員借入金の債務免除は法人から見た場合利益となるため、債務免除額と同額の債務免除益が発生します。そのため繰越欠損金などで控除しきれない利益に対しては、法人税等が課税されることになります。

役員個人の資産を法人に貸し付けできない場合

役員の個人資産を法人に貸し付けられない場合や、それだけでは足りない場合、金融機関からの借り入れのすべてを返済することはできません。

この場合は事業を継続し、借入金がある程度減った時点でもう一度廃業の方法を模索することになります。

個人(おもに役員など)からの借入金の返済方法

個人(主に役員など)からの借入金が残っている場合で法人の資産を処分しても返済しきれない場合には、さきほどと同様に役員借入金の債務免除を行い、役員借入金を消した後に廃業手続きを行います。

破産回避のための借入金返済法【個人編】

個人の場合、借入金の返済と廃業は直接関係ありませんが、廃業しても支払い義務は継続しているため返済し続けなければなりません。

自己破産を回避し借入金を返済するためには、個人資産を返済原資にあてるか、就職(もしくは新たに起業)してその給料などを返済にあてるなどをしなければなりません。

またそれ以外にも、条件によっては民事再生(個人再生)の制度を利用する事もできますが、この場合別途弁護士費用などが必要となります。

廃業の判断はどのタイミングで行うべきか

ここまでご覧いただいたように、廃業のタイミングを見誤って破産(自己破産)を選ばざるを得なくなってしまうと、廃業のコストは増大してしまいます。

そこで廃業の判断をどのタイミングで行うのがベストなのかを2つのケースに分けて考えてみます。

債務超過でない場合のタイミング

法人・個人を問わず、債務超過でない場合には、どのタイミングで廃業を判断しても破産などを心配する必要はありません。

ただし、ただ廃業してしまうだけだと、本当は得られたかもしれない利益が得られないままで終わってしまう可能性があります。このような逸失利益については、次章で詳しくご説明します。

債務超過の場合のタイミング

法人・個人を問わず債務超過の場合には、何らかの方法で借入金の返済を行わなければなりません。たとえば個人資産を法人の借入返済にあてれば法人の廃業そのものはできますが、それでは廃業後の生活に影響が出てしまいます。

できるだけ債務超過になる手前、もしくは債務が減った段階で廃業を考えるべきでしょう。

廃業を選ばず廃業と同じ状態にする方法がある

実は廃業を選ばずに、廃業と同じように業務の一線から身を引く方法があります。事業譲渡により事業(もしくは事業の一部)を譲渡希望者に譲渡する方法です。

この方法を上手く活用すると、譲渡の対価として廃業後の資金を手にすることができたり、借入金の返済をしなくても事業を手放すことができる場合があります。

次章でこの方法について、詳しくご説明します。

廃業する前に事業承継を考えてみよう

オークションサイトの「ヤフオク」が生まれる前は、ほとんどの人にとって個人で商品を販売する方法はありませんでした。しかし今ではメルカリなどの個人売買サービスが生まれ、学生や主婦層ですら当たり前のように利用できる世の中になりました。

これらのサービスが生まれたおかげで、多くの人が個人単位で商品を販売する手段が確立し、また多くの人が、ニーズに合った商品を適正価格で購入することができるようになりました。

事業の譲渡も同じで、長い間日本ではM&Aは活発に行われていませんでした。しかし現在では大企業はもちろんのこと、中小企業や個人事業ですら行われるようになりました。

このM&Aを有効に活用する事により、事業を譲り受けた企業は事業規模の拡大を急速に行うことができるようになり、また譲渡したオーナーは、創業者利益の獲得やアーリーリタイアを達成できるようになりました。

M&Aの魔法の鍵「のれん」とは

そもそも企業が蓄積してきたノウハウや技術・人材などの企業価値は、貸借対照表や損益計算書上に数値化されていません。決算書をどれだけ眺めても、これらを目にすることはできないわけですから、その価値を実感する機会は少なかったでしょう。

しかしノウハウや人材資源などは企業収益の源泉であり、企業価値の核となる大切なものです。事業譲渡やM&Aを通じてこれらを顕在化させ、それを数値化したものを「のれん」といいます。

事業を譲渡する対価が企業の純資産より多額になるのは、この「のれん」代の評価額分だけ企業価値が増えるためです。

「のれん」の評価額は譲渡相手次第

冒頭にお話ししたヤフオクやメルカリの話に戻ると、出品した商品が売れるかどうかは商品の良し悪しだけでは決まりません。市場にそれを欲しいと思う人がいなければ、売買自体が成立しません。

高額で売るためにはできるだけ多くの人の目に触れ、最も「欲しい!」と思う人の所へその情報を届けなければなりません。

M&Aにおける「のれん」の評価もこれと基本的には同じで、「のれん」の価値そのものに法律などで定められた価格がついているわけではありません。

M&Aを成功させるためには、できるだけ多くの顧客リストを抱えているM&Aの仲介業者に依頼し、貴社のノウハウを最も必要とする企業へ譲渡することが、お互いに成功への近道となります。

場合によってはハッピーリタイアも可能

これまでの話でおわかりのように、企業を廃業すると決めた場合でも、ただ廃業するだけでは「のれん」代を得ることはできません。廃業する前に事業譲渡も検討し、無事譲渡することができれば、創業者利益を得てハッピーリタイアすることも十分に可能ですし、また従業員を解雇することなく雇用を守ることもできます。

「うちの会社には譲渡できるようなものはないよ」と言われる方もいらっしゃいますが、機械や工場など目に見えるものだけが譲渡の対象となるわけではありません。

大企業との取引口座であったり、熟練した技術を持った従業員であったり、このような無形のものでも「のれん」を形成する価値になることは十分にあります。

債務超過でも諦める必要はない

金融機関からの借入金がまだ残っていたとしても、事業譲渡を諦める必要はありません。もちろん可能性は低くなりますが、優秀なM&Aアドバイザーであれば、貴社の隠れた価値を見つけ出し、それを必要とする企業を日本中から探し出すことができるかもしれません。

上手くいけば借入金の返済義務から開放されますし、次の展開への希望を持つこともできます。ダメ元でトライしてみる価値は十分にあります。

最後に

事業を廃業するためには費用が必要です。その費用は廃業時の状態にかなり左右されるため、決断のタイミングを間違えないようにしなければなりません。

また一度廃業してしまうと二度と元に戻れないため、後悔のないようにさまざまな選択肢を検討しておくことが大切です。

事業譲渡やM&Aにより創業者利益を確保することができれば、新たなスタートが切りやすくなります。また借入金が残っていた場合でも、返済義務から開放される場合もあります。

当社では中小企業に特化した経営支援を30年以上にわたり行ってきた実績とノウハウがあり、また2万社を超える顧客と、各業界団体とのさまざまな業務提携による豊富なマッチングサービス網を全国に展開しています。

当社の優秀なM&Aアドバイザーにご相談いただけば、貴社の隠れた魅力を引き出し、それを求める企業を日本中から探し出すことができます。

廃業の前にM&Aを検討してみたい、という方はぜひ一度お気軽にご相談ください。


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