【失敗から学ぼう!】こうすれば失敗しない事業承継の進め方

中小企業の事業承継が成功すると、国や自治体にとっては雇用の維持や地方経済を支える要ができ、また経営者にとっては創業者利益の確保や相続税対策、また企業風土やノウハウの承継ができ、従業員や得意先にとっても、雇用や事業の継続が守られることになります。

このように企業の事業承継は、関係するすべての人にとって大なり小なり良い影響を及ぼすため、承継がうまく行くと、多くの人や企業に良い影響を与えることができます。

しかし残念ながら、事業承継の全てが上手くいくわけではありません。

毎年多くの経営者が事業承継に挑戦し、そして残念ながらその中の少なからぬ人達が失敗に終わっています。

成功すれば多くの人に良い影響を及ぼすように、事業承継に失敗してしまうと経営者ご自身だけでなく、関係する多くの人や企業にも、良からぬ影響を与えることになってしまいます。

そこで本記事では、事業承継で失敗をしてしまわないように、事業譲渡でしくじってしまった失敗例を通して、失敗の本質とその原因に迫ってみたいと思います。

こうしたら大失敗!!事業承継失敗例の研究

事業承継の失敗例やその原因は、失敗した企業によってさまざまですが、失敗のパターンとその原因はある程度類型化することができます。

そこでこの章では、星の数ほどある失敗例の中から、多くの企業が陥ってしまったパターンの典型例を可能な限りご紹介してみようと思います。

事業承継の失敗例① 準備不足で見切り発車。結果企業の業績も急降下

事業承継のための準備に時間をかけなければならないことは、多くの経営者がご存知ですが、準備が済んでも実行に移すのをためらう経営者もいらっしゃいます。

本来であれば健康で、気力も充実しているうちに後継者にバトンタッチするべきなのですが、「まだまだ現役でやれる」という過信があだとなる場合があります。

その結果、経営者の健康不安など決してベストでない状態で、慌てて見切り発車の事業承継を行わざるを得なくなり、社内のガバナンスは機能せず、取引先とのコミュニケーションもとれず、従業員は離散し、最終的には業績が急降下してしまいました。

失敗から学ぶ教訓①

スマホやPCは壊れる前に交換しておくのが鉄則であるのと同様に、事業承継も問題のないうちに済ませておくべきでした。

事業承継の失敗例② 遺産分割で大失敗!株主が分散してしまい議決権が行使できなくなってしまった!

相続による親族内承継は、事業承継の中でもよくある典型例のひとつです。それ自体は特に問題ないのですが、会社の株式を会社の経営に関係のない相続人にまで相続させてしまった結果、株主が分散してしまうことがあります。

こうなると経営者(事業承継者)の持株比率は過半数を割ってしまい、単独で議決権を行使できないため、何をするにも経営者一人では決められず企業の運営に支障が出てしまいました。

失敗から学ぶ教訓②

子供に平等に相続させるのは相続時にトラブルを起こさないために大切なことですが、事業承継にかかわる株式はそれとは別です。何でも全て平等が良いわけではありません。

事業承継の失敗例③ 株価対策で財務はスカスカ。結局やせ細った会社を相続するはめに

もう一つ、親族内承継による相続時の失敗です。優良企業であればあるほど、株式の評価額が高くなります。相続税対策も兼ねて株価を低くしようと高額の生命保険や事業と直接関係のない資産などを購入した結果、無事株価は下がったものの、事業承継をする頃には会社の財務状況が想像以上に傷んでしまい、やせ細って体力のない会社となってしまいました。

失敗から学ぶ教訓③

相続税対策は大切ですが、やり過ぎはかえってマイナスです。事業承継も兼ねた相続税対策をする場合、節税額だけでなく全体をバランスよく見る目を養うことが大切です。

事業承継の失敗例④ 派閥争いから従業員が大量離脱。業績も一気に急下降

次は社内の支配権をめぐる失敗です。事業承継者が株式を過半数持っていれば法律上経営は安定しますが、それで全てが上手くいくわけではありません。

新たに代表者に就任した承継者が古株の役員や社員から反感を買い、彼らは優秀な人材を引き抜いて会社を大量離脱し独立してしまいました。

そのため品質や生産能力は大幅に落ち、得意先からの信頼も得られなくなり、業績が一気に急下降してしまいました。

失敗から学ぶ教訓④

株式さえ抑えておけば社内を掌握できるわけではありません。人と人との関係も重視し、古株の社員からも信頼される経営者になるように気を配らなければなりません。

事業承継の失敗例⑤ 前経営者が口を出し過ぎて信頼失墜

前経営者にとっては大切な会社を譲ったわけですから、心配で心配でしかたがない気持ちは分かりますが、必要以上に干渉しては、新たに事業を承継した経営者に従業員や得意先からの信頼が集まることはありません。

前経営者があれこれ口を出してしまっては、現経営者は「いつまでたっても頼りない」と従業員や得意先、金融機関などから思われてしまい、信頼が集まらなくなってしまいます。

一度こうなってしまうとリーダーシップを発揮することが困難になってしまうため、企業の運営が難しくなってしまいます。

失敗から学ぶ教訓⑤

どれだけ心配でも、一度地位を譲ったのであればあまり口を出すべきではありません。前経営者が口を出しているうちは、現経営者の成長はありません。

事業承継の失敗例⑥ 事業承継後にいきなり業績不振。事業承継者への不信感がつのり会社経営がいきなり難航

役員や従業員、得意先や金融機関など全ての関係者は、新しく迎えられた新社長の手腕を固唾をのんで見守っています。こんな時は「はじめの一歩」が大切なのですが、ここでいきなり大失敗して会社を業績不振にしてしまうと、新社長の株が一気に大暴落してしまいます。

挙句社員のボーナスを減額せざるを得ない状態にしてしまうと、社内全員からの信頼が一気に奈落の底へ落ちてしまいます。

失敗から学ぶ教訓⑥

何事も最初が肝心です。スタートダッシュを決めるために、新たに経営者になる方には十分な準備期間が必要です。

事業承継に失敗するとどうなる?

前章では、事業承継の失敗例を類型化してご紹介しました。この章では、事業承継に失敗した場合どうなるのかについて時系列順に解説していきます。

事業承継に失敗したらどうなる① 業績不振

前章でご紹介したさまざまな理由により事業承継に失敗すると、まず業績不振に陥ります。具体的には業績不振にともない、会社のキャッシュフローが悪化します。

営業キャッシュフローの一時的な悪化は、金融機関からの借り入れなどによる財務キャッシュフローで短期的には下支えすることは可能ですが、それでは根本的な改善にはつながりません。

業績不振が続けば、会社の体力はジリジリと削られていきます。

事業承継に失敗したらどうなる② 資金繰りの悪化

金融機関からの支援が、いつまでも続く訳ではありません。本業の業績不振が続けば、外部からの資金調達もやがては難しくなってしまいます。

ただでさえ本業で稼ぐキャッシュが少ない上に、借り入れなどで調達する資金が枯渇してしまっては、あっという間に資金繰りが悪化することは目に見えています。

事業承継に失敗したらどうなる③ 退職者が続出する

中小企業の固定経費の中で、最も多くを占めているのが人件費です。できればここにメスは入れたくなくても、キャッシュが不足してしまっては、背に腹はかえられません。

まずは従業員のボーナスの減額、そしてカット。やがて諸手当もなくなり、昇給させること自体が難しくなってしまいます。

こうなると大部分の従業員は退職し、人件費はカットできるものの生産能力はそれ以上にダウンし、会社の運営はいよいよピンチを迎えます。

事業承継に失敗したらどうなる④ 廃業

この状態になるまでの間に、経営者は個人資産を会社に投入(=貸し付け)し、役員報酬も大幅に減額しているはずです。

金融機関からの支援は受けられず、従業員も大量離脱し、自分自身の資産も大幅に目減りしてしまった今、この状態を続けてしまっては近いうちに破産してしまうのは目に見えています。

今なら会社の資産を売却して借入金を返済すれば、何とか破産を逃れることはできます。

もうこの状態で選択肢はありません。廃業です。

事業承継に失敗したらどうなる⑤ 破産

廃業を選択することができる段階で廃業を選択できれば良かったのですが、全てが上手くいくわけではありません。

会社も個人も資産は底をつき、全ての財産をつぎ込んでも債務を返済することはもう出来ない状態になってしまいました。

こうなると、もう破産しかありません。

事業承継に失敗しないために必要なこと

最後に、ここまでの話をふまえた上で、「どうすれば事業承継に失敗しないのか」「失敗しないためには何が必要なのか」を述べたいと思います。

そこで事業承継を、親族内承継・親族外(役員や従業員など)承継・M&Aの3種類に分類し、それぞれの承継方法に則して注意すべき点をまとめてみます。

親族内承継で失敗しないために必要なこと

親族内承継で注意すべき点は、親族であることを一度忘れ、ビジネス的な視点から次の経営者候補と接するように心掛けることです。

身内であると、良くも悪くもつい特別な感情が入ってしまいがちですが、事業承継において相手はあくまで次の経営者候補です。常に冷静で公平な目で見なければなりません。

親族内承継で失敗しないためには、具体的には

  1. 関係者の理解
  2. 後継者教育
  3. 株式や事業用資産の集中

の3つを行います。

関係者の理解

事業承継は現経営者と次の経営者候補の2人だけでできるわけではありません。後継者候補と十分に意思疎通を行った上で、社内の役員や従業員、得意先、そして金融機関などに協力を求め、将来の経営陣の構成を踏まえた上で、社内全体の世代交代の準備をしなければなりません。

後継者教育

現経営者の子息や子女だったとしても、後継者としての教育は必要です。社内はもちろんのこと、できれば社外に出して後継者に相応しい経験を積ませることが大切です。

株式や事業用資産の集中

事業承継者に株式や事業用資産が集中しなければ、安定した経営を行うことはできません。相続時にこれらの資産が他の相続人に行かないように、今のうちから準備をしておかなければなりません。

親族外(役員や従業員など)承継で失敗しないために必要なこと

親族内承継であれば社内や得意先などに受け入れやすいですが、親族外承継の場合、一歩間違えてしまうと社内外に大混乱や亀裂を起こしてしまう可能性があります。

それらを避け、失敗しないためには、さきほどご紹介した

  1. 関係者の理解
  2. 後継者教育
  3. 株式と事業用資産の集中

の3点に加え

  1. 債務保証や担保の処理

を行わなければなりません。

債務保証や担保の処理

多くの企業経営者は、会社の借入金の債務保証や個人資産の担保提供を行っています。同じ状況を次の経営者に求めてしまっては、最悪の場合後継者が見つからなくなってしまう可能性もあります。

そのようなケースを避けるために、事業承継前に債務をできるだけ圧縮し、経営者の個人補償や担保の提供をしなくてもよい財務状況にしておかなければなりません。

M&Aで失敗しないために必要なこと

親族内や役員・従業員以外の事業承継となると、企業を丸ごと(もしくは事業の一部)譲渡するM&Aになります。

M&Aは対価を得て行う事業承継ですから、親族内承継や親族外承継と比べると個人的な感情が入る余地が少ないことは確かですが、その分他に気を付ける点があります。

M&Aで失敗しないためには、

  1. 準備段階で情報を関係者に一切漏らさない
  2. 専門的なノウハウを有するM&A業者などの仲介機関に相談する
  3. 事業承継の条件や売却金額の希望などを早い段階で仲介機関に伝える
  4. 経営者同士の面談やデューデリジェンスの際に、交渉相手に隠し事をしない

などの点に気を付けなければなりません。

これらは専門性が高く難しい論点も含んでいますが、M&Aの場合は仲介機関を利用するケースがほとんどですから、経験豊富なアドバイスが受けられるため、それほど心配する必要はありません。

最後に

本日は事業承継の失敗事例をご紹介しながら、事業承継に失敗しない方法について解説してみました。事業承継に失敗すると、最悪の場合、廃業もしくは破産しなければなりません。こうなってしまうと事業承継者だけでなく、従業員とその家族、得意先、金融機関を含め、多くの人の人生に甚大な影響を与えてしまいます。

事業承継は、ほとんどの人にとってはじめての経験です。どのような手段で承継を行うにしても、はじめて行う事業承継を絶対に失敗させないようにやるためには、経営者一人の力だけでは限界があります。

当社は、経営知識や実務経験が一定以上と国が判断した者に与える認定経営革新等支援機関に認定されており、事業承継はもちろんのこと、さまざまな経営支援からM&Aまで、幅広い視野に立って経営者のみなさんを万全の態勢でサポートすることができます。

「事業承継を検討してみたい」と思われた方はぜひ一度お気軽にご相談ください。


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