事業承継ガイドラインを徹底解説!5分でわかる事業承継ガイドラインのポイントとは?

中小企業庁が平成28年に発表した事業承継ガイドラインをご存知でしょうか?こちらのガイドラインは、中小企業が後継者を決めたり事業を承継したりする際に参考となるような、多くの有益な情報が網羅されています。

しかし全98ページとかなりのボリュームであるため、「とりあえず、全体像をざっと把握したい」という人向けに、本日はこのガイドラインの重要ポイントのみに絞って内容をご紹介していきます。

また、この事業承継ガイドラインは関連資料も発表されているため、そちらも同様にポイントを絞ってご紹介いたします。

事業承継ガイドラインとは?

事業承継ガイドラインは、中小企業の事業承継を促進させる目的で中小企業庁によって策定されたものです。その背景には経営者の⾼齢化が進んでいる一方で、中小企業の事業承継が円滑に進んでいないという現状がありました。

経営者交代率も年々低下傾向にあり、中小企業の経営者の平均年齢も59 歳 9 ヵ月と、過去最高を記録するようになって来ています。

このように、事業承継が円滑に進んでいないと、地域産業や技術、ノウハウなどが損失してしまう可能性が高くなります。こうした事態を回避するために、事業承継ガイドラインを作成し、円滑な事業承継を喚起することを目標としています。

第1章:事業承継対策の重要性について

中小企業は我が国において企業数の約 99%、従業員数でも約 70%を占めています。すなわち、中小企業は日本、特に地方にとって雇用を支える重要な受け皿となっており、ここの対策がうまくいかなければ、日本の産業基盤を損なう可能性があります。

中小企業の現状として後継者不足が問題となっており、親族に後継者がいないことが多いため、従業員や外部の第三者の企業などへの事業承継が増加している傾向にあり、親族外承継は約65%以上になっています。

こうした親族外への事業承継は、後継者の育成や事業の譲渡先の選定など時間がかかることが多いため、早期の事業承継対策が必要です。平均引退年齢が70歳であることを考えると、遅くとも60歳頃には事業承継の対策を始めるべきでしょう。

第二章:事業承継に向けた準備の進め方

参考)事業承継ガイドライン

ステップ1:事業承継に向けた準備の必要性の認識

事業承継問題は家庭内の問題であると考える中小企業の経営者が多く、先送りにした結果手遅れになってしまうケースも少なくありません。

理想的には、経営者が60歳を過ぎたころから事業承継の準備に取り掛かることが望ましく、専門家や金融機関などの支援機関に相談しながら着手すべきでしょう。

いっぽう、事業承継の支援機関側も相談待ちの受け身姿勢にとどまらず、積極的に経営者の支援を行うべきです。具体的にはまず、事業承継に向けて何をすべきかの提案や、「事業承継診断」の実施などを行うことが望ましいです。

ステップ2:経営状況・経営課題等の把握(見える化)

事業承継を円滑に行うためには、まず企業の経営状況や経営課題などを正確に把握し(見える化)、事業承継にどのような課題があるかを把握(見える化)することが必要です。

①会社の経営状況の見える化

会社を取り巻く状況や経営リスクを正確に把握するためには、まず業界団体などが主催する勉強会などに参加し、業界の動向についての情報収集を行うことが大切です。

また経営資源に関しては、決算書の貸借対照表上の数字だけでなく、知的資産やノウハウなど目に見えない資産にも留意し、会社の真の実力を把握するように努めなければなりません。

具体的には、

  • 「中小企業の会計に関する指針」や「中小企業の会計に関する基本要領」を導入し、適正な決算処理が行われているか点検する
  • 自己株式の株価評価を行う
  • 自社商品の部門別損益を分析し、自社の稼ぎ頭商品を把握する。また同時に不良品の発生状況や製造ラインの課題の把握なども行う
  • 自社の事業価値の源泉である知的財産やノウハウについて、「事業価値を高める経営レポート」や「知的資産経営報告書」などを活用して正確に把握する
  • 「ローカルベンチマーク」を活用して、業界内における自社の位置付けを客観的に評価し、把握する

などを行います。

②事業承継課題の見える化

事業承継を円滑に行うためには、会社の経営状況の把握のみならず、事業承継についての課題も把握し、対策を行うことが大切です。

具体的には、

  • 後継者の有無を確認し、候補者がいる場合には後継者に相応しいかを多角的に検討し、いなければ社内外の候補者について検討する
  • 後継者に対して他の株主や取引先から異論が出る可能性が考えられる場合には、その対応策を事前に検討しておく
  • 親族内承継の場合、将来の相続も視野に相続財産の特定、相続税の試算及び納税方法を検討する

などを行います。

ステップ3:事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)

親族内承継の場合、これまでは相続税対策に重点が置かれ過ぎたため、事業に関係のない資産の購入や株価を下げるため対策が過度に行われた結果、肝心の体力を奪ってしまうケースが多々ありました。

本来ならば事業承継は新たな飛躍のチャンスであるため、現経営者はより良い形で後継者にバトンを渡すように心がけなければなりません。

近年の親族内承継の減少は、このような状況下で事業の将来性や経営の安定に懐疑的な後継者候補が増加したためと考えられます。そのため、事業承継前に企業の経営改善を行い、後継者候補が後を継ぎたいと思う魅力作りをしなければなりません。

具体的には、

  1. 本業の競争力の強化・・・自社の「強み」を強化し、「弱み」を改善します
  2. 経営体制の争点検・・・事業承継後に経営がしやすいように、社内の経営体質を改善します
  3. 経営強化に資する取り組み・・・財務状況を正確に把握し、適切な経営判断ができるようにします
  4. 業績の悪化した中小企業における事業承継・・・専門家に相談をし、事業承継前に事業再生の方法を模索する

などを行います。

ステップ4-1:事業承継計画の策定(親族内・従業員承継の場合)

親族内や従業員の事業承継の場合、自社を取り巻く状況を把握したうえで、10年後を見据えた具体的な計画を立案しなければなりません。これを事業承継計画といいます。

この事業承継計画は、後継者や親族はもちろんのこと、取引先や従業員・金融機関などとも共有しておくことが望ましいです。こうすることで協力が得られやすくなり、事業承継が進めやすくなるためです。

なおこの事業承継計画には、経営理念の継承も盛り込まなければなりません。過去から現在、そして未来へ続く企業風土を再確認し、こういった無形の企業財産も同時に承継していくことが大切です。

このように自社の現状とリスク、企業風土などを理解した上で、10年後の中期計画を立てていきます。

具体的な策定プロセスは、

  1. 自社の現状分析
  2. 今後の環境変化の予測と対応策・課題の検討 
  3. 事業承継の時期等を盛り込んだ事業の方向性の検討
  4. 具体的な目標の設定
  5. 円滑な事業承継に向けた課題の整理

の順で行います。

ステップ4-2:M&A等のマッチング実施(社外への引継ぎの場合)

後継者不在等のため親族や従業員以外の第三者に事業引継ぎを行う場合には、事業の譲り受けを希望する企業とのマッチングを模索します。

① M&A 仲介機関の選定

M&Aを自力で行うのは困難なため、事業承継セミナーなどの参加を通して信頼できる仲介機関などの専門家を探します。

② 譲渡条件の検討

企業をどのような条件で譲渡するのかを決定し、仲介機関に条件に合う相手を探してもらいます。

ステップ5:事業承継の実行

ステップ1~4までを踏まえた上で、事業承継計画やM&A手続きなどに沿って事業承継を行います。なおこの段階では法的な手続きや税負担が発生する場合があるため、弁護士などの専門家に相談しながら進めていくことが望ましいでしょう。

第三章 事業承継の類型ごとの課題と対応策

ガイドラインでは、事業承継を、1)親族内承継、2)従業員承継、3)M&Aの3つの類型にわけそれぞれごとの課題と対応策を上げています。

例えば親族内承継においては、税負担への対応や株式・事業用資産の分散防止、債務の承継への対応に関して特に大きな課題があると述べており、こうした問題に対応するための制度として事業承継税制の活用などを勧めています。

第四章:事業承継を円滑に進めるための手法

第4章では、事業承継を円滑に行う方法について解説しています。例えば、その一つが種類株の活用です。種類株は、株主毎に異なる取り扱いを可能とするものであるため、事業を承継しない相続人に対しては、議決無しの種類株を相続させるといった活用が可能です。

また、信託の活用も可能です。具体的には、先代経営者の意思が確かなうちに、自社株式等についての信託契約を締結し、その管理権限を受託者(後継者など)に移転しておくことによって、本人が認知症等になった場合の財産管理への影響を低減させるといったことができるようになります。

生命保険は、相続税対策として有効な手法です。先代経営者が死亡した場合に支払われる死亡保険金には相続税の計算上一定の非課税枠があるため、これを相続税負担の軽減に活用することが考えられ、受け取った保険金を納税資金に充てることもできます。

第5章 個人事業主の事業承継

個人事業主の事業承継については、形式的には先代の経営者が廃業届を出し、承継する後継者が開業届を出すことを行います。いっぽうで事業に必要な土地や建物といった資産は個人として所有していることから、これらも個別に相続税対策が必要となります。

これらの事業用資産が相続により分散してしまった場合の影響は、会社形態の中小企業において株式が分散してしまった場合よりも事業に与える影響は甚大です。例えば、先代経営者の死亡等により事業用資産である土地や建物、器具備品等が相続人間で共有状態に陥ってしまった場合、後継者は当該資産の処分を伴う設備の更新や業態転換等を自由に行うことが困難となってしまいます。

 このような事態を回避するためは、遺留分に配慮した生前贈与による早期の承継や、遺言等の適切な活用を検討する必要があります。

第6章:社会的に経営者をサポートする仕組み

事業承継ガイドラインは中小企業の経営者のサポートの仕組みにも触れています。事業承継支援は、商工会議所・商工会の経営指導員、金融機関等の身近な支援機関をはじめ、税理士・弁護士・公認会計士等の専門家や、事業引継ぎ支援センター等の公的・専門的な支援機関等が支援にかかわっています。

事業承継のチェックリスト

事業承継ガイドラインの最後には、「事業承継自己診断チェックシート」が設けられています。以下のQ1からQ9までの設問に沿って答えていくと、事業承継における自社の現状を把握することができます。

診断結果

  • Q1・Q2で、1つ以上「いいえ」と回答した方・・・事業承継を円滑に進めるためには想像以上の長い時間を要します。早期着手の重要性を理解した上で、事業承継に向けてまず現状の把握から進めて行きましょう。
  • Q3・Q4・Q5で、1つ以上「いいえ」と回答した方・・・円滑に事業承継を進めていくためには、事業承継計画の策定による計画的な取組を行うことが必要です。
  • Q6・Q7で、1つ以上「いいえ」と回答した方・・・企業の存続に向けて、具体的に事業承継についての課題の整理や方向性の検討を行う必要があります。
  • Q8・Q9で、1つ以上「いいえ」と回答した方・・・「事業支援引継ぎセンター」等へご相談ください。

事業承継ガイドライン20問20答とは

事業承継ガイドライン20問20答

出典: http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei20/download/shoukei.pdf

最後に、事業承継ガイドライン20問20答をご紹介します。この「20問20答」は、中小企業庁が事業承継ガイドラインをより容易に理解できるようにするために作成した冊子です。

20問20答の内容は?

それでは20問20答についての中でも特に重要なポイントとなる、以下の項目について解説します。

  1. 事業承継対策ってしなきゃいけないの?
  2. 事業承継計画ってどんなものなの?
  3. 親族内の事業承継を円滑に行いたい!
  4. 従業員等に事業を承継したい!
  5. M&Aを検討したい!
  6. 事業計画書を作ってみたい!
  7. 事業承継をサポートしてくれる専門家に相談したい!

Ⅰ.事業承継対策ってしなきゃいけないの?

中小企業の現状は、日本における少子高齢化や職業選択の自由によって、後継者が親族内にいないという状況になっています。また事業承継に失敗すると、紛争が生まれたり、会社の経営が落ち込んでしまうといった、会社経営上致命的なトラブルになりかねません。

そのため、日本において中小企業の事業承継は非常に重要な課題となっています。中小企業経営者の平均年齢は約57歳まで上昇している一方で、経営者の子供が事業を承継してくれる割合は年々低下しており、20年前の約半分になっています。

したがって、いつか誰かが継いでくれると考えてると、結局誰も事業を継続してくれる人材がいない状態になってしまうリスクはかなり高く、事業承継の対策をしっかりと行っておく必要があるというわけです。

Ⅱ.事業承継計画ってどんなものなの?

事業承継を行う場合、重要なのは事業承継計画をしっかりと策定することです。事業承継計画とは、中期的・長期的な計画を見込み、事業承継の時期や具体的な対策などを記載したものです。

「20問20解」では以下の画像で計画の例を紹介しています。

事業計画の概要

出典: http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei20/q03.htm

誰をどの役職につけたり、後継者教育をどのような手法でやるか、例えばOJTや社外のセミナーなどを活用するかと言った視点を盛り込んだり、株式の譲渡計画を具体的に作ったりと言った内容が盛り込まれています。

Ⅲ.親族内の事業承継を円滑に行いたい!

親族での事業承継は、1)関係者の理解、2)後継者の教育、3)株式や財産の分配、の3つのステップからなります。関係者とは社内の従業員や取引先、そして金融機関なども含む利害関係者です。

関係者の間で後継者として理解を得られたら、後継者候補を後継者として教育する事が重要です。教育は例えば、責任ある地位につけたり、各ポジションをローテンションさせたりして社内の状況を把握したりといった社内教育と、セミナーなどを活用した社外教育などです。

さらに株式や財産の分配においては、後継者に対して株式などの事業用資産を集中させる事が重要です。そのため、株式が分散されている場合は、株式の買い取りを実施しておく事が必要となります。また、後継者以外の相続人に対する配慮を検討する必要もあります。

Ⅳ.従業員等に事業を承継したい!

従業員等へ事業を承継したい場合は、「役員や従業員等社内の承継」と「取引先や金融機関等の外部から後継者を雇い入れての承継」という2つのパターンが考えられます。

社内の承継の場合は、役員や優秀な人材などが考えら、その場合社風や会社業務などに精通している場合が多いため、円滑に事業承継を行うことができるでしょう。いっぽうで社外から後継者を入れる場合は、社内の反発が起こる可能性があります。

こうした従業員による事業承継においては、MBO(マネジメントバイアウト )という手法が用いられ、従業員等によるオーナー経営者からの株式の買取などが行われるのが通例です。

また、他に検討しないといけない項目としては、個人保証や担保の処理になります。

中小企業の場合、オーナー経営者が借入金への連帯保証をしていることが多いため、承継前にできるだけ債務を減らすことが必要となってきます。

Ⅴ.M&Aを検討したい!

M&Aとは合併と買収を意味しており、親族や社内に後継者となる人材がいない場合、雇用の継続や取引先への配慮などを考えて第三者に対して事業を譲渡します。最近の中小企業では、事業承継の選択肢としてM&Aが選択される件数が増加しています。

M&Aは、会社の全てを譲渡する以外にも、事業の一部を引き渡す事業譲渡や会社分割などさまざまな方法があります。M&Aの手続きは、大きく分けると、「準備」「実行」「M&Aの後の経営統合」の3つの段階に分けることができます。

M&Aを成功させるたには、「検討段階では外部に漏らさない」「専門家に相談する」「売却金額の希望を仲介機関に早期に伝える」「会社の実力を上げる」といったことを心がける必要があります。

Ⅵ.事業計画書を作ってみたい!

事業計画書の作成にあたっては、「経営理念の明確化」や「事業の中長期目標の設定」を行うことが必要です。また、経営者と後継者が、共同で事業計画の策定の作業を行う事で、価値観を共有しておく事が重要です。

まず、経営理念として経営者の想いや価値観、態度などを明確に示します。これは事業承継において重要な事で、事業承継の機会に従業員全員に対して経営理念を浸透させることで、承継後のスムーズな事業運営が可能となります。

次に、事業の中長期目標の設定ですが、目標の設定は数値など、具体的に目に見て分かるものにした方が良く、目標に向かって経営陣と従業員が一致団結しやすくなります。

Ⅶ.事業承継をサポートしてくれる専門家に相談したい!

事業承継を行うには色々な方法がありますが、一人で行わずに様々な専門家の力を借りながら進めると良いでしょう。なぜなら事業承継においては、法律や税などさまざまな専門知識が必要となるからです。

事業承継の相談先となる専門家は、弁護士や税理士のほか、認定経営革新等支援機関、公認会計士、司法書士、中小企業診断士、金融機関、商工会議所・商工会、独立行政法人中小企業基盤整備機構など、官民さまざまな相談窓口があります。

まとめ

「事業承継ガイドライン」や「事業承継20問」などに早い段階で眼を通しておくと、事業承継に必要な考え方や情報に一通り触れることができます。また同時に、早い段階で士業やM&Aのアドバイザーなどに相談しておけば、多方面からの多角的なアドバイスを受けることができます。

当社は、経営知識や実務経験が一定以上と国が判断した者に与える認定経営革新等支援機関に認定されており、事業承継はもちろんのこと、さまざまな経営支援からM&Aまで、幅広い視野に立ち、あらゆるニーズに対応することができます。

「事業承継を検討してみたい」と思われた方はぜひ一度お気軽にご相談ください。


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