最大1850万円!事業承継で活用できる補助金・助成金とは?

事業承継をやりたくても、費用の問題などにより、専門家に相談しにくいという方はいらっしゃらないでしょうか?また「事業承継を機に事業拡大をしたい!」と考える経営者はいらっしゃらないでしょうか?

そんな方にとって朗報なのが、今回新たに創設された「経営資源引継ぎ補助金」です。対象となる中小企業であれば、従来の「事業承継補助金」と合わせて最大1850万円の補助金を受給できる可能性があり、事業承継のためのコストを抑え、承継後には更に事業拡大を目指す企業にとってはまたとないチャンスです。

本記事では、事業承継を円滑に進めるための「事業承継補助金」と、今年新たに創設された「経営資源引継ぎ補助金」について解説していきます。

事業承継を巡る補助金の変遷

事業承継が遅々として進まない状況を改善するために、中小企業庁は「事業承継補助金」を創設しました。詳細については後ほどご説明しますが、この補助金は事業承継を機に新たな取り組みを行う承継者に対して一定額を支給することにより、既存の事業をより大きくし、雇用の更なる拡大を狙ったものでした。

事業承継補助金の問題点

事業承継補助金は最大で1200万円というかなり高額な補助を受けることができるため、当初は鳴り物入りで導入されたのですが、残念ながらこれ単独では事業承継を加速させるほどの効果を現すことはできませんでした。

なぜなら事業承継「後」の事業展開に悩む経営者にとってこの補助金は朗報だったものの、その手前の、事業承継の手続きそのものに悩む経営者は対象外だったからです。

事業承継を行うためにはさまざまな手間や時間、そしてコストが必要となります。実際のところ事業承継は、士業専門家やM&Aアドバイザーなどの多くの人が関わり、サポートを受けなければ、なかなか上手く進みません。

しかしその分、少なからぬ費用も発生します。そしてその費用を支払ったとしても、必ずしも上手く行くわけではありません。この部分のコストに躊躇する経営者にとって、事業承継補助金は「使えない補助金」に過ぎませんでした。

経営資源引継ぎ補助金が新たに創設

そこで事業承継のコストに悩む経営者をサポートするために、政府は令和2年の第1次補正予算において、新たに「経営資源引継ぎ補助金」を創設しました。

こちらの補助金についても詳しい内容は後ほどご説明しますが、この補助金の創設により、今まで事業承継補助金では対象外であった事業承継時の士業や仲介業者などの報酬に対して、最大で650万円ほどの補助が受けられるようになりました。

2種類の補助金により万全の体制が確立

このように「事業承継補助金」と「経営資源引継ぎ補助金」の2種類の補助金が創設されたことにより、事業承継のためのサポートと事業承継後の事業展開のサポートの両方を支える万全の体制が確立されることとなりました。

これで、事業承継のコストが心配な経営者も、事業承継後の事業展開に不安のある経営者も、どちらも補助が受けられるようになりました。

それでは次章より順に、この2つの補助金の詳細について解説していきます。

事業承継後の新たな取り組みをサポートする「事業承継補助金」とは

はじめにご紹介するのは「事業承継補助金」です。事業承継補助金は中小企業庁により年度ごとに公募が行われ、審査を経て交付されています。事業承継をするタイミングで新しい事業または経営革新を行う中小企業などが補助金支給の対象となっています。 

事業承継補助金の申請の時期は?

事業承継補助金を募集する期間は、令和2年度は3月31日から6月5日までを設定しています。

補助金申請の要件について

事業承継補助金を申請するためには、定められた要件を満たす必要があります。

ここでは、補助金を申請するための要件について説明します。

募集補助対象者

事業承継補助金の対象者となるのは、次の(1)~(7)の要件を満たし、かつ「事業承継の要件」を満たす中小企業・個人事業主・特定非営利活動法人(以下:中小企業者等)です。

  1. 補助対象者は、日本国内に拠点もしくは居住地を置き、日本国内で事業を営む者であること。
    • 個人事業主は、青色申告者であり、税務署の受領印が押印された確定申告書Bと所得税青色申告決算書の写しを提出できること。
    • 外国籍の方は、「国籍・地域」「在留期間等」「在留資格」「在留期間等の満了の日」「30条45規定区分」の項目が明記された住民票を添付してください。
  2. 補助対象者は、地域経済に貢献している中小企業者等であること。地域の雇用の維持、創出や地域の強みである技術、特産品で地域を支えるなど、地域経済に貢献している中小企業者等 であること。
  1. 地域の雇用の維持、創出などにより地域経済に貢献している。
  2. 所在する地域又は近隣地域からの仕入(域内仕入)が多い。
  3. 地域の強み(技術、特産品、観光、スポーツ等)の活用に取り組んでいる。
  4. 所在する地域又は近隣地域以外の地域への売上(域外販売)が多い(インバウンド等による域内需要の増加に伴う売上も含む)。
  5. 新事業等に挑戦し地域経済に貢献するプロジェクトにおいて中心的な役割を担っている。
  6. 上記によらずその他、当該企業の成長が地域経済に波及効果をもたらし、地域経済の活性化につながる取組を行っている。
  1. 補助対象者又はその法人の役員が、暴力団等の反社会的勢力でないこと。反社会勢力との関係を有しないこと。また、反社会的勢力から出資等の資金提供を受けている場合も対象外とする。
  1. 補助対象者は、法令順守上の問題を抱えている中小企業者等でないこと。
  1. 補助対象者は、経済産業省から補助金指定停止措置または指名停止措置が講じられていない中小企業者等であること。
  1. 補助対象事業に係る全ての情報について、事務局から国に報告された後、統計的な処理等をされて匿名性を確保しつつ公表される場合があることについて同意すること。
  1. 事務局が求める補助事業に係る調査やアンケート等に協力できること。

対象となる中小企業

業務分類資本金の額又は出資の総額常勤従業員数
製造業その他(※1)3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業(※2)5,000万円以下100人以下

※1:ゴム製品製造業(一部を除く)は資本金3億円以下又は従業員900人以下

※2:旅館業は資本金5,000万円以下又は従業員200人以下、ソフトウエア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下又は従業員300人以下

対象となる小規模事業者の要件

また、今回の事業承継補助金は、小規模事業者も対象になっています。

小規模事業者とは、前述した「対象となる中小企業者等」の要件を満たし、以下の定義に該当する者です。

業務分類定義
製造業その他従業員20人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業従業員20人以下
商業・サービス業従業員5人以下

事業承継補助金のタイプは?

今回の事業承継補助金は、親族内承継や外部人材招聘など経営の後継者探しによる承継が対象となる「Ⅰ型:後継者承継支援型」と、業務再編や事業統合を目的としたM&Aを契機に経営革新を行う方を対象とした「Ⅱ型:事業再編・事業統合支援型」の2つに分かれています。

先ほどご紹介した補助金の対象者の要件に加えて、支援型毎に追加されている補助対象者の要件があります。

後継者承継支援型

事業承継の際に経営革新や事業転換を行う個人や中小企業、小規模事業者等の中で、地域の需要や雇用を支える事業を行う方が対象となっています。

特定総合支援事業を受けるなど、一定の実績や知識を有する必要もあります。

補助対象者

  • 日本国内で事業を営む中小企業者等であること
  • 地域経済に貢献している中小企業者等であること
  • 承継者が、次のいずれかを満たす(事業)者であること

・経営経験がある

・同業種に関する知識などがある

・創業・承継に関する研修等を受講した者

事業再編・事業統合支援型

後継者が不在のために事業再編や事業統合等を行わなければ事業継続が困難な方のうち、事業再編・事業統合等を実際に行う中小企業・小規模事業者の方が対象となる補助金です。

なお、対象は「後継者承継支援型」と同じく、事業再編や事業統合等を行う際に、経営革新や事業転換をする事業者であって、かつ地域の需要や雇用を支える事業を行う事業者に限定されます。

補助対象者

  • 本補助金の対象事業となる事業再編・事業統合に関わる「すべての被承継者」と「承継者」が、日本国内で事業を営む中小企業者等であること
  • 地域経済に貢献している中小企業者等であること
  • 承継車が現在経営を行なっていない、または事業を営んでいない場合、次のいずれかを満たす者であること

・経営経験がある

・同業種に関する知識などがある

・創業・承継に関する研修等を受講したもの

なお、これらの要件は暫定的な要件であり、今後の公募の際には変更される可能性もありますので、申請の際には必ず最新の情報を確かめるようにしましょう。

補助対象経費

事業承継補助金は、助成の対象となる経費についても、要件が細かく定められており、以下の1・2・3の条件をすべて満たす経費である必要があります。

  1. 使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
  2. 承継者が交付決定日以降、補助事業期間内に契約・発注をおこない支払った経費 (原則として、被承継者が取り扱った経費は対象外)(※)
  3. 補助事業期間完了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額・支払等が確認できる経費

具体的な経費としては、事業費と廃業費とに区分されており、以下の項目が対象となります。

【Ⅰ. 事業費】

費目名概要
人件費本補助事業に直接従事する従業員に対する賃金及び法定福利費 
店舗等借入費国内の店舗・事務所・駐車場の賃借料・共益費・仲介手数料
設備費国内の店舗・事務所の工事、国内で使用する機械器具等調達費用
原材料費試供品・サンプル品の製作に係る経費(原材料費)
知的財産権等関連経費本補助事業実施における特許権等取得に要する弁理士費用
謝金本補助事業実施のために謝金として依頼した専門家等に支払う経費
旅費販路開拓を目的とした国内外出張に係る交通費、宿泊費
マーケティング調査費自社で行うマーケティング調査に係る費用
広報費自社で行う広報に係る費用
会場借料費販路開拓や広報活動に係る説明会等での一時的な会場借料費
外注費業務の一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経費
委託費業務の一部を第三者に委託(委任)するために支払われる経費

【Ⅱ. 廃業費】

費目名概要
廃業登記費廃業に関する登記申請手続きに伴う司法書士等に支払う作成経費
在庫処分費既存の事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費
解体・処分費既存事業の廃止に伴う設備の解体・処分費
原状回復費借りていた設備等を返却する際に義務となっていた原状回復費用
移転・移設費用(Ⅱ型のみ計上可)効率化のため設備等を移転・移設するために支払われる経費
  • 人件費・店舗等借入費・設備リース費・レンタル料及び広報費の展示会等の出展申込みについて、交付決定日より前の契約であっても、交付決定日以降に支払った補助事業期間分の費用は、例外的に対象とする。

事業承継補助金で補助対象の経費としてみなされるには、「補助の対象となる経費は、事業を承継する際に発生する経営革新や事業転換など、『新たな取組み』について必要となる経費であり、補助が行われる事業期間中に発生し、支払いをするものに限られる」とされています。したがって、例えば期間前に契約が決まっていたものなどは、対象の経費とはならないので注意が必要です。

交付額と補助率

後継者支援型補助金の場合

補助率は、年度ごとの要綱によって変わります。2020年度においては、補助対象経費の3分の2(ベンチャー型事業承継枠または生産性向上枠)、もしくは2分の1(原則枠)となっています。また、補助上限額は、後継者承継支援型では下記のとおりです。

・後継者承継支援型(原則枠)

既存事業の廃業や事業転換を伴う場合は450万円、伴わない場合は225万円

・後継者承継支援型(ベンチャー型事業承継枠または生産性向上枠)

既存事業の廃業や事業転換を伴う場合600万円、伴わない場合300万円

なお、ベンチャー型事業承継枠とは以下の要件をすべてを満たすものをいいます。

・新商品の開発又は生産、新役務の開発又は提供、もしくは事業転換による新分野への進出を行う計画であること。

・事務局が定める期間において従業員数を一定以上増加させる計画であること。

・補助事業実施期間内において補助事業に直接従事する従業員を1名以上雇い入れた事実が確認できること。(なお、有期の雇用契約は本要件の対象としない。)

また生産性向上枠とは以下の要件を満たすものをいいます。

・承継者が 2017年4月1日以降から交付申請日までの間に本補助事業において申請を行う事業と同一の内容で「先端設備等導入計画」又は「経営革新計画」いずれかの認定を受けていること。

 事業再編・事業統合支援型補助金の場合

2020年度の「事業再編・事業統合支援型」における上限額は以下のとおりです。 

・事業再編・事業統合支援型(原則枠)

既存事業の廃業や事業転換を伴う場合は900万円、伴わない場合は450万円が上限となっています。

・事業再編・事業統合支援型(ベンチャー型事業承継枠または生産性向上枠)

既存事業の廃業や事業転換を伴う場合は600万円、伴わない場合は1200万円が上限となっています。

事業承継時の費用負担をサポートする「経営資源引継ぎ補助金」とは

2つ目にご紹介する補助金が「経営資源引継ぎ補助金」です。この補助金は令和2年4月に成立した第1次補正予算に組み込まれたもので、企業の事業承継を促進し、雇用の維持や技術の伝承、組織再編による企業の効率化を支援するための支援として、今年度新たに創設されました。

なお現時点(2020年6月3日)ではまた公表されていない情報も多いため、発表されている情報と電話による問い合わせの範囲内で、この補助金について解説していきます。

経営資源引継ぎ補助金の特徴

事業承継やM&Aにおいて、士業やM&Aアドバイザーなどの専門家に支払う費用を補助し、経営者が事業承継やM&Aに踏み出すハードルを下げることを狙いとしています。

実際に支払った費用のうち最大で650万円が補助されるため、応募数はかなりの数になると思われます。

経営資源引継ぎ補助金の対象となる事業者

経営資源引継ぎ補助金を受け取ることのできる事業者は、中小企業と小規模事業者です。

なお中小企業庁が定める中小企業と小規模企業者とは、以下の要件を満たす法人(もしくは個人)のことをいいます。

  • 製造業その他・・・資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
  • 卸売業・・・資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
  • 小売業・・・資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
  • サービス業・・・資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

補助の対象となる費用

補助の対象となる費用は、事業承継やM&Aで支払う⼠業専⾨家の活⽤にかかる費用(仲介⼿数料・デューデリジェンス費⽤、企業概要書作成費⽤等)です。

いわゆる「買い手」の場合は上記の費用のみが対象となりますが、「売り手」の場合には上記の費用に加え、廃業のための費用も対象となります。

補助される金額について

「経営資源引継ぎ補助金」で支給される補助金は、「買い手」と「売り手」によって異なります。

  • 「買い手」に支給される補助金・・・補助の対象となる費用の支出額の合計の3分の2、もしくは200万円のうち少ない方
  • 「売り手」に支給される補助金・・・補助の対象となる費用の支出額の合計の3分の2、もしくは650万円のうち少ない方。ただし士業専門家などに支払う費用に関する補助金は最大で200万円まで。

補助金の申請手続きから受給までの流れ

それでは「経営資源引継ぎ補助金」の公募から補助金受給までの流れについて、簡単にまとめてみます。

  1. 公募開始・・・公募期間についてはまだ公表されていません
  2. 審査・・・有識者からなる外部審査委員会により、助成金支給のための審査が行われます
  3. 審査結果と費用の支出・・・審査結果により補助金の支給が決まった企業は、一定期間内(まだ公表されていません)に補助金の対象となる費用を支出します。
  4. 実績の報告と補助金の支給・・・支出した費用をまとめ、補助金支給のための手続きを行います。問題がなければ所定の補助金が支給されます。

事業承継補助金と経営資源引継ぎ補助金はどちらか一方しか使えない?

事業承継補助金と経営資源引継ぎ補助金は、どちらも事業承継やM&Aを促進するために創設された補助金です。しかしその支給タイミングが違います。

事業承継補助金の支給対象費用は、事業承継やM&Aが終わった後で支給するものであるのに対し、経営資源引継ぎ補助金は事業承継やM&Aを行う前に支払う費用です。

このように両者の補助金の対象費用は支払時期が異なるため、この2つの補助金は併用することが可能です。

そのため両者を上手く活用すれば、最大で1850万円(事業承継補助金1200万円+経営資源引継ぎ補助金650万円)を受給することができます。

認定経営革新等支援機関を活用するのがおすすめ

事業承継補助金と経営資源引継ぎ補助金を上手く活用すれば、最大で1850万円の補助金を受給することができますが、そのためには事前に準備をし、かなり前から計画的に事業承継を行わなければなりません。

そのため、補助金の受給について計画する際には、「認定経営革新等支援機関」を活用することをおすすめします。「認定経営革新等支援機関」とは、税理士や公認会計士などの士業やM&Aアドバイザーなどの専門家が構成している、経営革新のための支援機関です。

この認定経営革新等支援機関は国の審査を経て認定されたものであり、前述の事業承継補助金を申請する際には、事業計画の確認をする機関でもあります。

このように、認定経営革新等支援機関とは実際の補助金申請時にも関わるわけですから、できればスタート時から活用した方が補助金を受給するためには圧倒的に有利となるでしょう。

最後に

事業承継やM&Aについては、2種類の補助金が整備され、上手く活用すればかなりの補助が受けられるようになりました。

しかしこれらの補助金は公募による審査の結果採択されるものであり、条件がそろっているだけで受給できるわけではありません。せっかく整備された制度を上手く活用するためには、事前に入念な準備をしておく必要があります。

当社は中小企業庁から認定された認定経営革新等支援機関であり、事業承継税制を活用した事業承継はもちろんのこと、さまざまな経営支援やM&Aなど数多くのニーズにも対応することができます。

「事業承継補助金や経営資源引継ぎ補助金を検討してみたい」と思われた方はぜひ一度お気軽にご相談ください。


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