
民事再生法は中小企業向けの再建法で、経済的に窮境にある債務者の事業や生活を再生させるための裁判手続きです。この記事では、民事再生法によって中小企業の再建を図るメリットや取締役の責任について紹介します。
民事再生法による中小企業の事業再建とは

はじめに、民事再生法を用いた中小企業の事業再建に関する基本情報を紹介します。
民事再生とは
民事再生とは、2000年に施行された「民事再生法(中小企業向けの企業再建法)」にもとづく処理であり、経済的に窮境にある債務者の事業や生活を再生させるための裁判手続きです。
民事再生手続きでは、まず「再生計画案」を立案し、債権者など利害関係者の多数決による決議で再生計画案が採択されます。その後、業務を継続しながら再生計画を遂行し、債務の弁済を図ることで、利害関係者の利害を適切に調整しつつ事業の再建を図るという形式が取られます。
民事再生法の再生計画には、主に以下の4種類が存在します。
- 自力再建型
- スポンサー型
- 清算型
- プレパッケージ型
それぞれの概要について順番に紹介します。
①自力再建型
これは、本業で将来的に予想される収益から債務を弁済し、自力で再建を図る手法です。
②スポンサー型
これは、スポンサー企業から資金の援助を受け、この支援のもとで再建を図る手法です。
③清算型
これは、営業譲渡などの手段を用いて、営業の全部または一部を別の会社に移管したうえで、自社を清算する手法です。民事再生法の手続きの開始後、裁判所の許可を得ることで営業譲渡を実施できます。営業譲渡代金は、再生債権の弁済財源に充てることが可能です。
④プレパッケージ型
これは、あらかじめスポンサーを決定しておき、民事再生の申立と同時に公表する手法です。もともと民事再生を申し立てると、その後は倒産のイメージから信用力や資産価値が毀損していくものの、事前にスポンサーを付けておくことで信用力を維持できます。これにより、民事再生手続き開始の申立によるネガティブなイメージを払拭し、社員および取引先の動揺を抑えることで、企業価値の毀損を最小限に留めることが可能です。
プレパッケージ型による民事再生手続きの具体例を挙げると、民事再生の対象となる企業がスポンサーに対して営業譲渡を行ったうえで、この譲渡代金をもとに債権者に対して再生債権の一括弁済を行います。つまり、債権者にとっても、短期間に再生債権の弁済を受けられる点にメリットがある手法です。
破産との違い
破産は会社を清算するための手続きであり、裁判所が専任した破産管財人によって処理が行われます。破産手続きが済むと、事業は終了し、社員は解雇され、取引先との関係も消滅します。このように、破産は事業を終了させる手続きであるのに対して、民事再生はあくまでも事業の再生を目的に実施される手続きです。
また、破産と民事再生では、周囲に与える影響にも違いが見られます。破産を行う企業では廃業が伴うため、周囲に与える影響が非常に大きいです。これに対して、民事再生では、事業が継続されることから、周囲から理解を得られて応援されるケースも多く見られます。
民事再生法による中小企業の事業再建の動向
ここからは、実際のデータを用いて、民事再生法による中小企業の事業再建に関する動向を紹介します。
中小企業の民事再生申請件数
2000年に民事再生法が施行されて以降、2010年3月末に民事再生の申請件数は7,100件を超えており、現在に至るまで事業再生手続きとして広く用いられています。
また、最近ではコロナ禍の影響で業績が悪化した企業の事業再建手段としても活用されており、帝国データバンクによると、新型コロナウイルス関連の民事再生の申立件数は、74件報告されています(2021年9月22日時点)。
中小企業の窮境原因
2010年の調査によると、窮境原因に「本業の経営不振」を挙げた中小企業は約5割で、最も大きな割合とされています。続く原因として「金融機関による貸し渋り、貸しはがし」や「過去の経営判断の誤り」を挙げた中小企業は約3割存在することがわかっています。
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(中小企業庁委託)「中小企業の企業再生調査」
再生計画の内容
同じく2010年の調査では、再生計画の内容として「人員整理」「費用の見直し」「不採算事業からの撤退」などが挙げられており、再生計画の作成に際して事業の見直しが厳しく行われていることがわかっています。
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(中小企業庁委託)「中小企業の企業再生調査」
民事再生法により支払いをストップできる債務
民事再生手続きが始まると、裁判所より開始前の買掛などに対する支払い(債務の弁済)をストップするよう命令が下されます。この命令により、営業利益がある会社では、キャッシュフローを健全化につなげられるのが一般的です。
ただし、税金/給料/担保権相当額といった3つの弁済は、ストップできません。とはいえ、担保権相当額の弁済については、期間の猶予や分割などが認められるケースもあります。
民事再生法による事業再建を図れる中小企業の条件

民事再生法による事業再建を図る際、中小企業は以下3つの条件を満たす必要があります。
- 営業利益があるか
- 債権者の半数以上の賛成があるか
- 経営者に再生への強い意欲があるか
それぞれの条件について順番に詳しく紹介します。
①営業利益があるか
民事再生は、圧縮した債務の一部を将来的に産み出す営業利益から返済する手続きです。そのため、営業利益がなければ民事再生を成功させられません。
なお、たとえ現在は営業利益が出ておらず、資金繰りがショートしていたとしても、債務弁済のストップや不採算部門の切り離しなどにより営業利益が出る場合は、民事再生の見込みが立つ可能性はあります。
②債権者の半数以上の賛成があるか
民事再生を申し立てる企業では、再生計画案を立案したうえで、債権者など利害関係者の多数決による決議で採択を受けます。この再生計画案が可決されるには、「再生債権者の議決権者の過半数の同意」および「再生債権総額の2分の1以上の同意」を得なければなりません。仮にこれらの条件を満たせなければ、民事再生は頓挫し、手続きが破産に移行します。
債権者から同意を得るには、適切な情報の開示や、あいさつ回りによる説明などを通じて理解を求めることが大切です。
③経営者に再生への強い意欲があるか
民事再生を完了させるには、再建後のイメージをもとに、経営者が強い再生の意欲を持っている必要があります。加えて、経営者を支える役員や社員が一丸とならなければなりません。民事再生手続きは、数年分の事業計画策定も求められる長期的な作業です。再生に向けた意欲や情熱がなければ、やり抜くことは難しいといえます。
民事再生法による手続きに必要な費用

民事再生手続きに必要となる主な費用は、「裁判所の予納金」「弁護士報酬」「当面の運転資金」の3つです。
民事再生手続きでは、裁判所に対して予納金を納付する必要があります。この費用は、民事再生の手続きを監督する監督委員の報酬に充てられます。予納金の額は負債総額によって変動する仕組みで、東京地方裁判所では以下のとおりです。
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負債総額 |
予納金の額 |
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5,000万円未満 |
200万円 |
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5,000万円〜1億円未満 |
300万円 |
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1億円〜5億円未満 |
400万円 |
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5億円〜10億円未満 |
500万円 |
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10億円〜50億円未満 |
600万円 |
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50億円〜100億円未満 |
700万円 |
また、一般的に運転資金は、2〜3カ月分容易しておく必要があると考えられています。なぜなら、民事再生手続きでは、会社の経費は通常どおりにかかるうえ、仕入れ代金などが手形や振込などの後日決済から現金支払いに変更されるケースが多いためです。
これに伴い、社員への給与/オフィスや工場の賃料/設備のリース代金/光熱費などに加え、仕入れ代金も現金で準備しなければならないケースが多いため、通常のキャッシュフローのほか当面の手元資金が必要不可欠です。
以上の点を踏まえたうえで、民事再生法の申立にかかる費用を考えると、目安として10億円以上の売上規模が求められる点を把握しておきましょう(自社独自の技術や販路を持っている場合は、外部のスポンサー企業を確保でき、民事再生に必要な費用をサポートしてもらえる可能性があります)。
民事再生法により中小企業の事業再建を図るメリット・デメリット

本章では、民事再生法により中小企業の事業再建を図るメリットとデメリットを順番に解説します。
メリット
民事再生法により中小企業の事業再建を図る主なメリットは、以下のとおりです。
- 事業を継続できる
- 経営権が残る
- 手元資金を確保できる
民事再生手続きは、無担保債権者の権利のみを制約して再生計画のもとでカットできます。そのため、会社更生の手続きと比べると手続きの効力は弱いものの、低廉かつ迅速な事業再建を目指せる点で、中小企業向きの手続きだといえます。
デメリット
民事再生法により中小企業の事業再建を図る主なデメリットは、以下のとおりです。
- 社会的信用失墜の可能性
- 担保権
- 債務免除益課税
民事再生手続きを行う場合、自社で法的倒産処理を開始したことが公表されるため、信用不安が生じるおそれがあります。また、担保権は別除権として民事再生手続き外での行使が可能であることから、これを阻止すには担保権者と弁済協定を締結しなければなりません。
さらに、再生計画によって債務が免除されると、免除額に対して債務免除益課税が生じます。この課税について事前に対策をしておかないと、税金を支払えずに再生計画に支障が生じるおそれがある点もデメリットです。
民事再生法の手続き開始と取締役の責任

本章では、民事再生法の手続き開始に伴う、取締役の責任について紹介します。民事再生手続きを行うに至った経緯を見たときに、放漫経営などを理由に責任を負うべき役員のいるケースが少なからず見られます。そのため、民事再生手続きを行う場合であっても、取締役等の役員は損害賠償の責任を負う決まりです。
取締役等の役員が責任を負う可能性のある主なケースは、以下のとおりです。
- 違法配当等を行った場合
- 株主の権利行使に関し利益供与をした場合
- 他の取締役に金銭の貸付を行った場合
- 取締役と会社との自己取引があった場合
- 法令または定款違反行為があった場合
- 新株発行についての取締役の引受担保責任がある場合
最後に、取締役等の役員の責任追及手続きを行う際の一般的な流れを以下にまとめました。
- 弁護士が裁判所に対して、取締役等の会社役員に対する責任追及手続きを行うべき事情の有無を報告
- 監査役が会社を代表して、査定の申立の手続きを行う
- 裁判所が取締役等の役員本人を裁判所に呼び、事情を尋ねたうえで、賠償すべき金額を決定する
上記の「査定の申立」とは、取締役等の責任にもとづく損害賠償請求権の有無を調査したうえで、請求権がある場合はその額を定め、その支払いを命ずる裁判手続きのことです。
民事再生法による中小企業の事業再建に関する相談先

民事再生法により中小企業の事業再建を図る場合、企業法務に精通する弁護士に相談しながら手続きを進めていくのが一般的です。とはいえ、最近では経済的な窮境に立たされて民事再生手続きが必要な状況に陥る前に、自主廃業を図る中小企業も増加中です。
ただし、廃業すれば事業用資産/社員/取引先/ブランド/信用などをすべて失うことから、M&Aによる譲渡によって中小企業の存続を図ることが望ましいです。
当社フォーバルは、過去20万社の経営支援実績があり、中小・小規模企業の存続と成長に向けた事業承継M&A支援を手掛けております。
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