事業承継におけるM&Aのメリットと成功の秘訣とは?

事業承継とは?

事業承継とは、「事業」の経営を親族や従業員といった後継者に引き継がせることです。現金や預貯金、不動産などの個別の資産だけではなく、「事業」そのものを引き継ぐこととなるため、会社が保有している資産や負債だけではなく、会社の経営権や会社のブランド、信用や取引先、負債などの全てが含まれた形で承継がされることとなります。

一言に事業承継といってもその種類や方法はさまざまですが、共通するのは事業承継がうまくいかないと、会社の存続自体ができなくなってしまう可能性もあり、それだけ事業承継は慎重に進めなければならないものでもあります。

事業承継の問題点とは?

それでは、なぜ最近になって「事業承継」が経営課題として注目されるようになってきたのでしょうか?

その背景には、日本の企業のうち、99.7%が中小企業であることと関係しています。中堅・中小の企業にとっては、現社長の経営手腕や人脈が会社の強みや事業基盤になっていることが多く、非常に属人的な組織になってしまっています。こうした属人的な部分は社長がいなくなってしまうとなくなってしまうため、事業の存続のために適正な後継者に事業を引き継ぐということが、重大な経営課題となってきたのです。

また、近年では少子化を背景に人材不足で悩む企業が増加傾向にあり、後継者を見つけ出すのが困難な企業が続出しています。経済通産省・中小企業庁の調査によると、60歳以上の法人経営者のうち、50%以上が将来の事業の廃業を予定しており、個人事業者においては、約7割という高い水準になっています。

事業承継がうまくいかない問題点は、「後継者が存在しない」ことに加え、「親族」に相続・贈与する場合において、後継者が多額の税金を支払う必要があるため、税金を払いたくなかったり、払えなかったりして承継ができないというところにあります。

帝国データバンクが発表した「2017年全国社長分析」によると、全国の経営者の平均年齢が59.3歳と過去最高となりました。また、東京商工リサーチが2017年1月に発表した「2016年休廃業・解散企業動向調査」では、企業倒産件数が8,446件と8年連続で減少する一方、倒産件数の約3.5倍の29,583件が休廃業・解散になっています。

原因をみていくと、休廃業・解散した企業の経営者の年齢も60歳代以上が82.3%を占めており、資産超過状態での事業停止なので、経営不振による赤字倒産ではないことが見て取れます。

それでは、事業承継の「後継者問題」において、経営者はどういう手段で対応することができるのでしょうか?

 

事業承継の引き継ぎ先は?

事業承継の方法は、主に次の3つです。

  • 親族への承継
  • 従業員への承継
  • M&A

この3つの方法で対応できない場合、その先は会社を廃業するしか選択肢はありません。

親族への事業承継

親族への承継は、文字通り自分の子供や兄弟、親戚などに事業承継を行います。

早い時期から後継者を決定することができるため、時間をかけて後継者を育成することができるのが利点です。  

また、現経営者の親族が事業を引き継ぐ形となるため、日本では特に周囲の人間から反感を買いにくいメリットもあります。しかしながら上述のように、職業選択の多様化や少子化の影響によって、親族への事業承継の件数は年々減少しています。  

役員や従業員への事業承継

二つ目の方法は役員や従業員への事業承継です。この場合、事業は会社内の優秀な従業員や役員に承継されます。  

社内承継とも呼ばれてますが、会社の実状を知った役員や従業員に経営を任せるため、経営者にとって安心感がある方法であるとも言えます。元々自社で働いている従業員であるため、経営に必要な知識やノウハウの伝播がしやすいといったメリットがあります。

 一方で、従業員が企業を買い取る際には資金が必要となるので、従業員が事業承継の引き受けを断る可能性があります。  

M&Aによる事業承継

そして三つ目が、M&Aを活用した事業承継です。

親族にも自社内にも事業承継できる人材がいない場合には、外部にその承継先を見つける必要があります。
M&Aであれば、会社そのものはなくなってもそこで培ったノウハウや雇用を守ることが可能です。承継相手を探す必要があり、また、社内外へのコンセンサスを取る必要があります。しかしながら、譲渡の際に株式譲渡金額を受け取ることができる点や、なによりも承継相手の選択肢が広がる点が大きなメリットといえるでしょう。

事業承継でM&Aのメリットは?

それでは、後継者のいない多くの企業にとって、事業承継の最も現実的な解決であるM&Aのメリットやデメリットについて解説していきます。

M&Aとは、「合併と買収」の意味であり、企業を売買したり、企業同士で合併する行為を指します。  

従来M&Aは大企業同士で行われてきましたが、近年は中小企業が経営課題を解決する目的で活用する事例も増えてきています。それは、M&Aには次のようなメリットがあるためです。

後継者候補となる企業を外部から幅広く探せる

M&Aで第三者に事業や会社を売却する場合、様々な企業の中から買い手候補の企業を探すことができます。  

子供や従業員の中に適切な人材がいない場合でも、全国から探せば事業承継するに相応しい会社が見つかる可能性があります。  

M&Aの相手を探す場合は、自力では困難なため、M&Aの仲介会社に依頼します。仲介会社はその豊富なネットワークを生かして、全国から事業の引き継ぎに興味がある会社を探してくれます。

会社売却による創業者利益を得られる

事業承継を諦めて廃業してしまうと、税務処理の費用や在庫や備品の処分費用なども必要となり、単に廃業するにも費用がかかってしまうことになります。一方で、M&Aで会社を売却する場合は、こうした費用もかからず、会社を売却した際に多額の資金を得ることもできます。 また、借入金がある場合、その連帯保証を個人でもしている場合は多いでしょう。M&Aで事業売却をした場合には、こうした個人補償の解除も条件に入れることができます。

事業の継続や発展を期待できる

事業を買収した会社は、自社のリソースを使ってさらなる投資をしたり、シナジーが出るような取り組みをしようとします。したがって、これまで自社だけで経営していた状態と比較すると事業はさらに発展し、利益や従業員の待遇もよくなる可能性があります。

事業承継のM&Aのデメリットは?

事業承継にM&Aを活用することはメリットがある一方、少なからずデメリットも存在します。

買手が現れなかったり、想定していた価格で事業を譲渡できない

M&A市場では、企業は「将来的にどれだけの収益を見込めるか」という観点で買取金額の評価がされます。したがって、現在の事業の利益や売上だけではなく、将来的にどれくらいその利益が継続でき、あげることができるか、というのがポイントです。

したがって、買取価格をあげるためには、成長に必要な設備投資をしたり、過剰な借り入れを繰り上げ返済するというのも一つの方法でしょう。すなわち、企業がキャッシュフローを生み出せるように収益構造を改善することがポイントになります。

企業文化の融合に時間がかかる

社風の異なる企業に買収された場合、企業文化の融合がうまくいかずに従業員の間で大きな混乱を招く可能性があります。また、実務上でも書類の手続き方法の違いや社内システムの変更・統合などが必要になります。

雇用・労働条件の変更、従業員の離職

統合後に従業員の雇用や労働条件が変更される可能性や、企業ごとの派閥争いが発生したりする場合があり、こうしたことが起こると従業員のモチベーションが低下して大量の離職者を生み出してしまうリスクがあります。

取引先の契約打ち切り

買収によって契約条件が変更されたり、担当者が変わったりした場合、取引先の反発を招き、契約を解除されるリスクがあります。

 

M&Aの方法は事業譲渡?株式譲渡?

それでは、M&Aを行う場合の方法についてそれぞれ紹介します。 

株式譲渡

株式譲渡とは、売り手側が所有する自社の株式を第三者に売却して、会社の経営権を譲渡する方法です。この場合、会社の代表者が所有している株式を譲渡することがほとんどです。株主と経営者が変わるのみで、従業員や顧客との関係は変化しないため、事業への影響が出にくい方法です。

また、社内のみで手続きが完結するので手間がかかりません。 そのため、中小企業のM&Aを活用した事業承継では、最も活用される方法です。

なお、株式譲渡による事業承継を実施した場合、売却で得た利益に対して税金を支払う必要があります。獲得した譲渡所得のうち、20.315%分を所得税や住民税として納付する必要があります。  

また、株式の譲渡制限がある場合は、譲渡承認を取締役会か株主総会で決議を得る必要があります。 

事業譲渡

事業譲渡とは、事業の一部、または全てを売買するM&Aの方法です。  

例えば、一部の事業については社内に残したい場合などに用いられる方法です。また、会社のバランスシートがよくない場合にも、そこを嫌がる買収会社の意向で事業譲渡の体裁を取ることもあります。

買い手側は、簿外債務や不要な資産を引き継がずに済むメリットがあります。 しかしながら、取引先との契約関係や債権債務については、個別に引き継ぎに対する同意を得る必要があり、手続きが煩雑になりやすいです。    

事業譲渡で事業承継する場合、売り手側の企業は、法人税と消費税を支払う必要があります。 消費税は、課税資産にのみ課税されます。  

事業譲渡でのれん代が大きくなると予想される際には、他のM&A手法と比較して税金が高くなるため、検討が必要です。

会社分割

事業譲渡とよく似ているM&Aの方法ですが、税金や事務手続き、買収対価の面で異なります。 特に、労働承継法で定められている手続きにより、従業員との雇用関係をそのまま承継できる面が会社分割の大きなメリットです。また、会社分割の場合は、消費税が課税されない利点もあります。

 

事業承継のM&Aのマッチングはどのように行うか?

M&Aを行う場合、M&Aの相手をどのように探してマッチングするかは大まかには2つの方法があります。

  • M&Aのサイトなどを活用して自分で探す
  • M&Aの仲介会社に依頼する

M&Aのサイトは、買いたい企業、売りたい企業が自分たちの情報を掲載し、マッチングを行うサービスです。買い手側の企業のみが掲載され売り手側からコンタクトを取るタイプや、売り手側が売りたい内容を掲載し、買い手側から打診をするタイプなどがあります。

例えば、代表的なトランビや、人材紹介の大手、ビズリーチが運営するBIZREACH SUCCEEDなどがあります。

また、M&A仲介会社は、単にマッチングをするだけではなく、買い手側、売り手側双方からの事業の内容や希望に即した相手企業を探し出し、M&Aにかかる手続きや、買収後の仕組みづくりに至るまでを総合的にコンサルティングする会社を選ぶのがよいでしょう。弊社フォーバルもこの点に特に力を入れているため、M&A先を探されたい経営者の方は、ぜひ気軽にご相談くださいませ。

まとめ

今回は、M&Aを中心とした事業承継の方法について紹介しました。  

自分の息子や親族、従業員に事業承継が可能な後継者がいるに越したことはないですが、近年は様々な理由を背景に、こうした事業承継は困難になってきています。  

そうした背景により、M&Aを活用した事業承継に対するニーズが高まってきています。

メリットの多いM&Aによる事業承継ですが、準備には時間がかかるため、早い時期から事業承継対策を実施するのが良いでしょう。

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