
株式分割のメリットは、企業・投資家の双方で獲得が期待されます。自身の保有する株式が分割されると、多くのメリットが期待できる一方、注意すべき点もあります。株式分割のメリットやデメリットなどを解説します。
株式分割とは

株式分割とは、「資本金を変えることなく、1株を複数の株式に分割する行為」のことです。主として、株式会社が、自社の発行する株式の流通量を増やしたい場合などに実施されます。なお、株式分割を行うと、株主に対し無償で株数の保有を増やすことになるため、「株式無償割り当て」とも呼ばれています。
1990年以前は無償増資、無償交付、株式配当といった名称が用いられていましたが、1991年の商法の改正を受けて「株式分割」と呼ばれるようになりました。
株式分割は、会社分割のように、会社の事業実態や組織に影響を及ぼす行為ではなく、具体例を挙げると「単純に1株を2株に分割する」行為を意味します。単に株式を分割する行為であるため、1株あたりの価値は小さくなるものの、理論上は会社の実態は変わらないことから、株式の価値の総量は変化しません。
一般的に「1株を2株に分割する」というように、整数で分割を行うケースが多いですが、場合によっては「1株を1.248株に分割する」というように、半端な係数で分割を行うこともあります。
株式分割の仕組み
株式分割のように発行済み株式を増やす手段としては、「増資」も挙げられます。ここでは、株式分割の仕組みを把握するために、増資と株式分割を比較します。
発行済み株式数が20,000株のA社の株価が1,000円だったケースを想定します。A社の株主資本(会社経営のための資金として、株式を発行し出資を受けた金額)は、20,000株×1,000円で2,000万円と求められます。ここで、A社が発行済み株式数について、以下2つの施策を行ったケースを順番に紹介します。
- 1株1,000円の増資により、発行済み株式数を30,000株にするケース
- 株式分割により、発行済み株式数を30,000株にするケース
1株1,000円の増資で30,000株にするケースでは、会社には1,000円×10,000株=1,000万円の資金が入り、株主資本が増加します。そのため、株主資本は、2,000万円+1,000万円=3,000万円です。
株主資本が3,000万円で、発行済み株式数は30,000株となるため、1株の価値は3,000万円÷30,000株=1,000円となり、発行済み株式数が増えても株価は変わらないことがわかります。
上記に対して、株式分割で30,000株にするケースでは、10,000株増やすために、1株を1.5株に分割します。しかし、分割の前後では、株主資本の金額は2,000万円と変化がないことから、2,000万円÷30,000株=約667円と株価が低下するのです。
株式分割のメリット

本章では、株式分割を行うことで期待されるメリットについて、企業と投資家それぞれの立場に分けて順番に取り上げます。
企業にとってのメリット
株式分割を実施する企業では、以下のようなメリットの獲得が見込まれます。
- 株式数が増えて1株の株価が下がることで投資家は株を買いやすくなり、株主数が増えることで株価形成の側面で安定性が高まる
- 発行株式数などが増えることで、上場市場の指定替えに必要な基準を満たせる
- 特に原価が一定の株主優待では、より多くの株主に優待を提供できるようになる(長期的に会社のファンを増やすことにつながる)
- 時価総額が上昇し、新たな経営判断を行えるようになる可能性がある
株式分割では発行済株式数が増えるため、投資家の売買がしやすくなり、流動性が高まります。株価が高い状態で膠着状態にある企業の場合、流動性を高めることでさらに株価を上げ、資本を増やすことにつながります。
また、株式分割では、株価が安くなるため、より多くの投資家がその企業の株を購入できる機会が与えられます。つまり、その企業の株式に投資する人の増加を図れるのです。これにより、これまでは株価が高く、目を向けていなかった投資家の注目を集められ、株式分割前よりも全体としての資産を増加させられる可能性があります。
投資家にとってのメリット
企業が株式分割を実施することで、その企業の投資家からすると、以下のようなメリットの獲得が期待できます。
- 発行済み株式数が増えることで、1株あたりの配当や株主優待の量が増えるため、株主から見た銘柄の魅力度が高まる
- 配当金を受け取る株式数が増える可能性
- 売買の自由度が高まる
前提として株式を保有していれば、配当金を受け取れる可能性がありますが、株式分割を行う企業が配当金額を据え置いた場合(動かさず、そのままの状態にしておいた場合)、それだけ配当金を受け取る株数が増加します。
つまり、株価の面では資産上の利益は見込めないものの、株式分割によって配当金の額が増加するというメリットがあります。また、保有する株数が増えるため、一部を売却し、一部を保有し続けるといった施策の自由度が高まる点も魅力の1つといえます。
さらに、株主優待は100株保有していれば受けられる場合がほとんどですが、株式分割があった場合でも株主優待を受ける条件に変更がなければ、分割後の安い価格で株主優待を受けられる可能性があります。
株式分割のデメリット

前述のとおり、株式分割にはさまざまなメリットが期待できる一方で、デメリットも少なからず存在することから、事前に双方を把握したうえで実施を検討することが大切です。
本章では、株式分割を行うことで問題となりやすいデメリットについて、企業と投資家それぞれの立場に分けて順番に取り上げます。
企業にとってのデメリット
株式分割を実施する企業では、以下のようなデメリットの発生が問題となるケースがあります。
- 株式数が増えることで株主数が増加し、株式総会や株主対応などにかかるコストが増加するおそれがある
- 現実的でない株式分割によって株価や流通量を大きく変化させてしまい、市場に対して安定を損なうような影響を与えてしまうおそれがある
- 業績向上が伴わないまま時価総額の上昇を招き、投機的な投資家が増加するおそれがある
- 株主総会の開催や分割後の登記、法定資料の準備など事務的な手間や時間を費やさなければならない
株式分割の実施に伴い、株式の流動性が高まれば、株主数が増加する可能性があります。企業からすると、株主数が増加した分、それだけ多くの株主の意見に対応しなければならなくなります。
加えて、株主優待や株主総会に関する対応についてコストが増加することから、企業側としては株主の管理に注意が必要です。
また、株式の流動性が高まると、投機を目的とした投資家が現れる可能性が高まります。投機的な投資家が増えてしまうと、業績が伴わない株価の変動が発生します。これにより、これまで会社の価値を見定めて投資していた他の投資家が、異常な相場であることをおそれて株式を売却してしまい、企業としての信頼が損なわれる可能性があるのです。
投資家にとってのデメリット
投資家からすると、投資を行う企業が株式分割を行うことで発生するデメリットはそれほどなく、投資家にとってはプラスの面の方が大きいケースが多いです。
ただし、株価が低下することで、ボラティリティ(株価の値幅の動き)が上昇し、株式を保有することに対してストレスを感じてしまう可能性はあります。なお、ボラティリティによる影響は、流動性の上昇に伴い増加した株主の投資目的によって変動します。
株式分割の方法・手順

本章では、株式分割の方法や手順に関する情報をお伝えします。株式分割は、以下のような流れで行うのが一般的です。
- 株式分割の決議
- 発行可能株式総数増加の決議
- 基準日公告
株式分割の決議機関は、取締役会設置会社では取締役会、取締役会非設置会社では株主総会です。株主総会決議を行う場合は普通決議で良く、決議事項は「分割比率、基準日」「効力発生日」「株式分割する株式の種類(種類株式を発行している場合)」などです。
このようにして株式分割の決議を行った後、株式分割の実施によって発行済株式総数が発行可能株式総数を超えてしまう場合には、定款変更の決議を行い、発行可能株式総数を増加させなければなりません。
最後に、株式分割の決議で基準日を定めた際は、基準日の2週間前までに公告を行わなければなりません。基準日公告では、基準日のほかに分割比率など決議した事項を、官報など会社が定めた方法で公告します。
株式分割に必要な登記申請
株式分割を行うと発行済株式総数が変わるうえに、発行可能株式総数を変更しなければならないケースもあります。この発行可能株式総数および発行済株式総数は、登記事項であるため、株式分割後には変更登記が求められます。
登記申請を行う手段
変更登記は、変更が生じた後2週間以内に実施しなければなりません。株式分割の登記は、株式分割の効力発生日から2週間以内に法務局に対して申請することが求められます。
株式分割の登記申請を行う際は、以下のような書類が必要です。
- 登記申請書:定められた書式にもとづき作成
- 取締役会議事録または株主総会議事録:株式分割の決議が行われた決議機関の議事録が必要
- 株主リスト:株主総会の決議を行った場合には、株主リストを添付
- 委任状:登記申請を司法書士に依頼する場合に必要
なお、株式分割の登記を申請する際は、登録免許税として3万円を納付しなければなりません。また、登記申請を司法書士に依頼した場合は、別途司法書士報酬の支払いが求められます。
株式分割のメリットに関する相談は専門家へ

この記事では、株式分割の概要や仕組み、メリットやデメリット、方法などを解説しました。
企業にとって株式分割は、資金調達しやすくなるなどさまざまなメリットがありますが、デメリットも少なからず存在します。このことから、行うタイミングや分割の割合などを慎重に検討しなければならないため、株式分割を実施する際は、専門家に相談することが望ましいです。
なお、中小企業やベンチャーの経営者からすると、株式分割よりも会社分割の方が聞き馴染みのある言葉だといえます。もしもM&Aによる会社分割の方法について不明点がございましたら、フォーバルまでご相談ください。当社フォーバルは、過去20万社の経営支援実績があり、中小・小規模企業の存続と成長に向けた事業承継M&A支援を手掛けております。
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