
上場とは、株式や債券などの有価証券や商品先物取引の対象となる商品を、公開された取引所で売買可能にすることです。取り扱い対象が企業の株式の場合は、上場すると株式会社が発行する株券や債券などを証券取引所で取引することが認められるようになります。すなわち、上場した企業は公開された市場から、事業に必要な資金をより多くの人や法人から調達することが可能となります。
なお、上場には市場・形式ごとに定められた条件があり、例として、東京証券取引所第一部(東証一部)・第二部、及び新興株式市場であるマザーズの条件をご紹介します。
| 項目 | 有価証券上場規程 (市場第二部形式要件) | 新規上場に係る市場一部銘柄への指定 (市場第一部に直接上場する要件) | 有価証券上場規程 (マザーズ形式要件) |
| (1)株主数 (上場時見込み) | 800人以上 | 2,200人以上 | 200人以上 (上場時までに500単位以上の公募を行うこと) |
| (2)流通株式 (上場時見込み) | 1. 流通株式数 4,000単位以上 2. 流通株式時価総額 10億円以上 3. 流通株式数(比率)上場株券等の30%以上 | 1. 流通株式数 2万単位以上 2. 流通株式数(比率) 上場株券等の35%以上 | 1. 流通株式数 2,000単位以上 2. 流通株式時価総額 5億円以上 3. 流通株式数(比率) 上場株券等の25%以上 |
| (3)時価総額 (上場時見込み) | 20億円以上 | 250億円以上 | 10億円以上 |
| (4)事業継続年数 | 新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して、3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること | 同左 | 新規上場申請日から起算して、1年前以前から取締役会を設置して継続的に事業活動をしていること |
| (5)純資産の額 (上場時見込み) | 連結純資産の額が10億円以上 (かつ、単体純資産の額が負でないこと) | 同左 | – |
| (6)利益の額又は時価総額 (利益の額については、連結経常利益金額に少数株主損益を加減) | 次のa又はbに適合すること a. 最近2年間の利益の額の総額が5億円以上であること b. 時価総額が500億円以上 (最近1 年間における売上高が100 億円未満である場合を除く) | 同左 | – |
| (7)虚偽記載又は不適正意見等 | 最近2年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし 最近2年間(最近1年間を除く)の財務諸表等の監査意見が「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」 最近1年間の財務諸表等の監査意見が原則として「無限定適正」 申請会社に係る株券等が国内の他の金融商品取引所に上場されている場合にはあっては、次の(a)及び(b)に該当するものでないこと (a)最近1年間の内部統制報告書に「評価結果を表明できない」旨の記載 (b)最近1年間の内部統制監査報告書に「意見の表明をしない」旨の記載 | 同左 | 「上場申請のための有価証券報告書」に添付される監査報告書(最近1年間を除く)において、「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」 「上場申請のための有価証券報告書」に添付される監査報告書等(最近1年間) において、「無限定適正」 上記監査報告書又は 四半期レビュー報告書に係る財務諸表等が記載又は参照される有価証券報告書等に「虚偽記載」なし 新規上場申請に係る株券等が国内の他の金融商品取引所に上場されている場合にあっては、次の(a)及び(b)に該当するものでないこと (a)最近1年間の内部統制報告書に「評価結果を表明できない」旨の記載 (b)最近1年間の内部統制監査報告書に「意見の表明をしない」旨の記載 |
| (8)株式事務代行機関の設置 | 東京証券取引所(以下「東証」という)の承認する株式事務代行機関に委託しているか、又は当該株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること | 同左 | 同左 |
| (9)単元株式数及び株券の種類 | 単元株式数が、100株となる見込みのあること 新規上場申請に係る株券等が、次のaからcのいずれかであること 1. 議決権付株式を1種類のみ発行している会社における当該議決権付株式 2. 複数の種類の議決権付株式を発行している会社において、経済的利益を受ける権利の価額等が他のいずれかの種類の議決権付株式よりも高い種類の議決権付株式 3. 無議決権株式 | 同左 | 同左 |
| (10)株式の譲渡制限 | 新規上場申請に係る株式の譲渡につき制限を行っていないこと又は上場の時までに制限を行わないこととなる見込みのあること | 同左 | 同左 |
| (11)指定振替機関における取扱い | 指定振替機関の振替業における取扱いの対象であること又は取扱いの対象となる見込みのあること | 同左 | 同左 |
| (12)合併等の実施の見込み | 次のa及びbに該当するものでないこと a. 合併、会社分割、子会社化若しくは非子会社化若しくは事業の譲受け若しくは譲渡を行った場合又は2年以内に行う予定のある場合で、新規上場申請者が当該行為により実質的な存続会社でなくなる場合 b. 新規上場申請者が解散会社となる合併、他の会社の完全子会社となる株式交換又は株式移転を2年以内に行う予定のある場合 | 同左 | 同左 |
引用:http://www.jpx.co.jp/equities/listing/criteria/listing/
上場までには少なくとも2年半から3年の準備期間が必要

上場申請するまでには、少なくとも3年以上の準備期間が必要と言われています。
上場の準備期間を考えるにあたって、考慮する必要があるのは、監査法人によるIPO直前2期間の会計監査です。上場直前2期間のことを、「直前期」「直前々期」といい、IPOする期を「申請期」といいます。
上場の要件である上場審査基準において、この準備期間が求められており、特に最近では、過去に遡って監査を行う遡及監査が認められていないため、会計監査や上場審査の期間のたために、最低2年半から3年の期間が必要となっています。
それでは、準備期間を3年(3期)とした場合のスケジュール感や、上場の申請後の流れをご紹介します。
- 申請3期前~2期前
まずは監査法人が上場に向けたショートレビュー(予備調査)を実施します。ショート・レビューでは、IPOに向けた課題の洗い出しを行うことで、現状何が会社にとって不足しているかを把握し、IPOまでに何をしなければならないのかを明確にすることができます。
ショート・レビューで明らかになった課題に対して、課題ごとにプロジェクトチームを横断的に立ち上げ、解決案や作業のスケジュールを検討していきます。
- 申請2期前
上場の申請直前2期分の公認会計士や監査法人による監査証明が必要になります。したがって、この監査が実施される申請2期前になる頃には内部体制を監査に対応できるレベルまで整えておく必要があります。内部監査によっても会社の状態確認を行い、修正すべき点があれば迅速に対応する必要があります。
- 申請~審査
取引所に上場を申請するには主幹事証券会社の審査を受け、推薦を受けることが必要です。その後、実際に取引所に対して上場申請し、取引所審査が始まります。
金融商品取引法では、主幹事証券会社になることができるのは30億円以上の資本金、引受証券会社になるには5億円以上の資本金の証券会社と定められています。そのため、幹事証券会社は大手の証券会社がなることがほとんどです。特に、野村證券・大和証券・みずほ証券・SMBC日興証券・SBI証券の5社が9割程度のシェアを持っています。
審査ではまず東証から送付される質問事項に対して、回答していきます。質問内容は、上場申請理由や事業内容、今後の計画などであり、詳細に回答をする必要があります。その後、直接の面談でのヒアリングや事務所や店舗の調査などを受けながら審査が進んでいきます。ヒアリングは3回程度実施されることがほとんどです。ヒアリングでは、事業内容や業界環境、株主や役員について、経理の状況や予算についても細かく質問がされますので、これらに対して答えることができるよう準備が必要です。最後に、社長や監査役、会計監査人へのヒアリングが行われます。
東証上場の場合は申請から審査完了までに、およそ3か月の審査期間がかかりますが、マザーズやJASDAQの場合は、審査期間が少し短くなり2か月程度で完了します。
上場に必要な具体的な要件は?

上場はどの会社でもできるわけではなく、ある程度の売上や利益の水準が求められます。具体的には、業種などにもよりますが時価総額が20億~30億となるような業績が必要であります。その業績は、
『時価総額=申請期の税引後利益×PER(株価収益率)×IPOディスカウント(70%~80%)』
という算式から逆算が可能です。 PERは業種やビジネスモデルによって異なりますが、上場企業の平均値が約15倍ですので、申請期の税引後利益が2億前後になっていれば、IPOの可能性があるとされています。なお、最近では赤字でも上場するような会社もでてきておりますが、例えば短期間での急成長が求められるIT企業などでは、広告費などを大量に投下するため赤字になりますが、理論的には黒字になって利益がでることを説明できるのであれば、赤字であっても上場は可能です。
上場のメリット・デメリット
企業にとって、上場することで得られるメリットとしては次の3点です。
- 社会的信用や知名度を向上させることができる
上場するということは、厳しい上場審査の基準をクリアした優良企業として認識され、取引先や金融機関等からの信用度も格段に高くなり、取引のしやすさや有利な融資条件などを引き出すことも可能となります。また、上場企業として社名を知られる機会も増えるため、優秀な人材の採用の面でも利点があります。
- 財務体質を強化することができる
株式公開をすることで新株予約権や新株予約権付社債の発行など資金調達手段が多様化し、その結果自己資本を充実させることができるようになるため財務体質が強化されます。
- 創業者利益を獲得することができる
ベンチャー企業などの創業者にとって、上場は創業者としての利益を得ることができる機会です。所有する株の一部を株式市場で放出することで、まとまった資金を手にすることができるようになります。
一方、企業から見た上場のデメリットも見ていきましょう。
- 管理コストの増加
上場維持のためには、証券取引所や監査法人などにかかる費用を継続して支払う必要があります。株式上場によって流通性が高まれば株主名簿の管理といった株式に関する事務手続きも増えますし、定期的に財務情報公開するためのバックオフィスの人員の確保など度も必要になってきます。
- 第三者による買収のリスク
自社の株式を誰でも市場を通じて売買できるため、第三者から買収を仕掛けられる可能性があります。
- 経営責任・社会的責任の増大
大勢の株主を持つことで、企業が株主の不利益となる行為をした場合は、提訴される可能性があります。その場合、代表取締役は、自身の責任の有無にかかわらず賠償責任を負うことになります。
また、従業員の不祥事や会計ミス、コンプライアンス違反などがあった場合、非上場の企業に比べ社会的には批判は大きくなります。
まとめ
経営者にとって、一つの目標でもある上場ですがそのメリット・デメリットは様々。しっかり理解し、手続などを理解したうえで最適な形での上場をご検討いただけましたら幸いです。







