事業承継士とは?事業承継士の事業承継における強みと役割とは?

事業承継士という資格をご存知でしょうか?

事業承継には、様々な専門知識や経験が必要ですが、そうした必要なスキルを体系的にまとめ事業承継に関わる実務を総合的にできるようにできる人材に付与されるのが事業承継士という資格です。

まだあまり知名度がない事業承継士という資格ですが、その実態についてご紹介させていただきます。また、経営者の方にとっては、事業承継に関する相談をしたいときに、事業承継士を選んだほうがよいのか否か、という点は気になるところだと思いますので、その点についても説明いたします。

事業承継士とは?

(1)事業承継士の資格の概要

事業承継士は、近年社会問題化してきている中小企業の後継者不足に伴う事業承継という課題を、総合的に解決するために、一般社団法人事業承継協会が作った資格です。事業承継協会は事業承継の実務に取り組んできた中小企業診断士数名が中心となって設立した法人です。彼らが、それまで事業承継問題に取り組んできた経験や培ったノウハウを広めることで、少しでも事業承継に悩む中小企業を存続させていくことを目的としています。つまり、事業承継士は、事業承継の実務経験や実践的なノウハウを広める手段として誕生しました。

現在、中小企業の約40%が後継者がいないという課題を抱えており、事業承継を検討する企業が増加傾向にあります。

オーナー経営者の高齢化もすすんでいるため、事業承継が必要となる状況は今後も増えていくでしょう。

最近は後継者が見つからなかったために事業承継ができず廃業してしまう企業も少なくありません。後継者がいないために事業を廃業せざるを得なくなってしまうと、その企業の貴重な人材やノウハウが失われたり、地域の雇用が減少したりと、日本の産業基盤に大きな影響を与えることでしょう。

そのために、事業承継はM&A等の幅広い選択肢の中から検討する必要がありますが、そうなると問題となるのがこうした広い業務や領域を対象とした実務経験を有している専門家が圧倒的に不足しているということなのです。事業承継士は、こうした実際の事業承継の実務に対応した資格であるため、実務面にフォーカスしているということもいえるでしょう。

(2)事業承継士の認定団体はどういう団体?

事業承継士の認定をおこなっている団体は、上述した一般社団法人事業承継協会です。

事業承継協会の母体となっているのは、事業承継センター株式会社というコンサルティング会社です。こちらの会社は、事業承継コンサルティングの前線で10年以上実務を行って生きた専門家が集まって設立したものであり、横浜や東京をはじめとした様々な行政や金融機関と連携した事業承継のアドバイスを行ってきてました。

そうした中で、自社内でのコンサルタントだけでは日本全国で増加していく事業承継の課題には対応しきれないという課題意識から、多くの中小企業に対して事業承継対策の重要性や緊急性を普及するとともに、事業承継をおこなう際に重要な役割を担う人材を養成しようとして、事業承継協会を設立しました。

具体的な、一般社団法人事業承継協会が行っている主な事業内容は次の通りです。

  • 事業継承に関する知識の普及
  • 事業継承に関する知識の研究
  • 事業継承に関する書籍の発行
  • 事業継承に関する他機関との連携
  • 事業継承士の試験の実施

(3)事業承継士の勉強の仕方は?

事業承継士は、自学習では取得することができず、まずは事業承継センターが行う「事業承継士資格取得講座」を受講しなければなりません。同様の講座を他にやっている団体はないため、事業承継センター主催の講座限定となります。

事業承継士資格取得講座は、開始時期が異なる複数の講座があり、基本的には東京で開講されていますが、福岡でも開催しています。多くは土日を使って複数日にわかって行われていますが、ゴールデンウィークコースでは連続して全日程を受講することができます。すべて、全5日間で1日当たりの講座は6時間あり、合計で30時間の講座の受講が必要です。事業承継士資格取得講座は、75%以上の出席が必要です。

(4)事業承継士の資格の対象者は?

事業承継士の資格取得講座は、受講できる対象が限定されています。事業継承には専門的知識が必要となる場合が多いため、一般社団法人事業承継協会が認定する国家資格者や、同等の知識を保有する者に限られています。

例えば認定されている資格は以下のものです。

  • 中小企業診断士
  • 税理士
  • 公認会計士
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 社会保険労務士
  • 行政書士
  • 土地家屋調査士
  • 一級建築士
  • 不動産鑑定士
  • 宅地建物取引士
  • ファイナンシャル・プランニング技能士
  • その他一般社団法人承継協会が認めた国家資格保有者、または、それと同等の知識の能力がある方

上記以外の資格については、事業承継協会が個別に判断しているため、受講を希望する方は問い合わせをしてみるのが良いでしょう。

(5)事業承継士の資格取得の流れは?

それでは、続いて事業承継士の資格の取得の流れを見ていきましょう。事業承継士資格の取得試験は難しいと言われていますが、そのむずかしさや実際の取得の流れについて詳細にご説明します。

①資格取得講座を受講する

事業承継士資格を取得するためには、まずは事業承継センターが開講している上述した「事業承継士資格取得講座」を受講しなければなりません。

②認定試験に合格する

事業承継士資格講座の受講後、認定試験を受ける必要があります。事業承継士資格講座を通じて配布される「受験申込書」をつかって申込みを行います。

認定試験の出題形式は、選択問題と、記述問題の両方です。基本的にはテキストの範囲内しか出されないようになっています。認定試験を60点以上取ることが合格基準です。

③協会への入会

事業承継士資格の認定試験に合格したら、一般社団法人事業承継協会に入会することで、事業承継士の資格が取得されます。事業承継士試験へ合格すると「入会申込書」が郵送されるため、そこから入会の手続きを行います。

(6)事業承継士の取得にかかる費用は?

上述の資格取得のための「資格取得講座の受講」「認定試験の受験」「協会への入会」には費用がかかります。それぞれに必要な費用は以下の通りです。 

資格取得講座受講 300,000円(税別)

認定試験受験 9,000円(税別)

協会への入会 10,000円(税別)

合計で319,000円(税別)が事業承継士資格取得にかかる費用です。

319,000円の投資が必要となりますが、一般社団法人事業承継協会へ入会すると、事業承継に関する仕事を協会を通じて優先的に紹介してもらう事ができるため、回収は比較的容易かと思います。

事業承継士の資格をとるメリットは?

(1)専門家としての評価が上がる

事業承継士の資格は、事業承継に必要な様々な専門知識を総括的に扱うことができるものです。したがって、事業承継士資格を取得の過程で得た知識は、法律や税金等のそれぞれの専門分野でも応用することが可能です。また、事業承継の実務についての知識が深まることで、現在よりもより質の高いアドバイス等を行うことができるようになります。また、事業継承士の資格を取得するための講座では、事業承継士としての実績や信頼の構築のためのノウハウ等も教えてもらうことができ、売上アップにもつながるでしょう。

(2)仕事紹介が増える

事業承継士の資格を取得することで、事業承継に関する案件の紹介が増えたという資格取得者の声も多いようです。事業承継の仕事は、一度企業と関わり始めるとその付き合いは長期にわたってのものになる傾向が強いものです。また、自分のクライアントから新規の紹介も増えやすいことから、軌道に乗れば仕事を継続して増やしていくことが可能な資格です。

また、資格取得講座では、さまざまな分野の専門家が集まって講座を受講するため、専門家同士のネットワークを増やすことができ、仕事の紹介を他分野の専門家から受けることもあります。

また、一般社団法人事業承継協会へ入会することで、事業承継センター主催の講座の講師として、優先的に仕事を紹介してもらえる場合もあります。

(3)協会からの情報提供

事業承継協会へ入会することによって、事業承継に関する詳細な情報や、新しい法制度などの情報を入手することが可能です。

また、事業承継協会では、事業承継に関する事例などの研究を継続して行っていることから、多くの最新の情報を入手することが可能です。そして、事業承継士資格は、更新制の免許でもあるため、継続した学習を行う必要があり、常に知識を最新の状態に保つことができます。

事業承継士に事業承継のコンサルを依頼するべきか?

事業承継やM&Aのコンサルティングを行う事業者はここ近年非常に増加してきました。したがって、その品質や実績も玉石混合となっているという現状があります。

事業承継は特に単一の専門領域だけでは対応できない者も多く、どのように事業承継をしていくかを考える段階から、外部との交渉や、社内の内部の教育や制度作り、M&Aでの売却後の統合など様々なフェーズでの関与が必要となります。

そうなると、こうした様々な業務や業界に実際に業務としてふれたことのある人材というのはどうしても限定的になってしまいます。そこで、事業承継士のような専門的な資格を有している人材であれば、豊富な事例や実務的な内容を資格取得の中で入手しており、専門家同士のネットワークもあるため、事業承継士を通じて様々な専門家と連携した事業承継を円滑に進めることが可能になると思います。

したがって、事業承継を相談する良いパートナーが身近にいない場合には、事業承継士にまず相談してみるというのは、事業承継の様々な課題を解決していくためには適切なステップなのではないでしょうか?

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