
事業譲渡では、仕訳を正確に行うことが重要です。ただし、譲渡対象企業の事業内容や状況に応じて、仕訳の方法は異なるため注意しましょう。この記事では、事業譲渡の仕訳/会計処理の方法や税務について解説します。
事業譲渡とは

事業譲渡とは、M&A手法の1つであり、企業における事業の全部または一部を譲渡する行為のことです。企業のすべてが取引対象に含まれる株式譲渡とは異なり、譲渡対象の事業を選べる点に特徴があります。
事業譲渡の対象とされる「事業」には、有形・無形の財産/債務/人材/事業組織/ノウハウ/ブランド/取引先との関係など、対象事業に関するあらゆる財産が含まれます。とはいえ、実際に譲渡する財産の内容によって仕訳方法が異なることから、自社の状況に応じて適切な仕訳を行えるように、あらかじめ準備しておくと良いでしょう。
事業譲渡の基本的な仕訳方法

はじめに、事業譲渡の基本的な仕訳方法について、事例をもとに解説します。ここで取り上げるのは、資産のみ(負債なし)を譲渡する以下のケースです。
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勘定科目 |
簿価(千円) |
時価(千円) |
損益(千円) |
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資産 |
棚卸資産 |
10,000 |
10,000 |
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|
土地 |
200,000 |
300,000 |
100,000 |
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建物 |
50,000 |
40,000 |
-10,000 |
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|
機械装置 |
80,000 |
70,000 |
-10,000 |
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車両運搬具 |
30,000 |
20,000 |
-10,000 |
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|
特許権 |
2,000 |
50,000 |
48,000 |
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商標権 |
300 |
1,500 |
1,200 |
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合計 |
372,300 |
491,500 |
119,200 |
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負債 |
なし |
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譲渡側の仕訳方法
事業譲渡における取引価格は、一般的に簿価ではなく時価によって決められます。とはいえ、譲渡対象の資産は簿価により計上されることから、時価総額から簿価総額を差し引いた金額が「事業譲渡益」となる仕組みです。譲渡側企業では、借方に現金預金(譲渡価格/時価)、貸方に譲渡対象の資産(簿価)および事業譲渡益を計上します。
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借方 |
貸方 |
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勘定科目 |
金額(千円) |
勘定科目 |
金額(千円) |
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現金預金 |
491,500 |
棚卸資産 |
10,000 |
|
土地 |
200,000 |
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|
建物 |
50,000 |
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|
機械装置 |
80,000 |
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|
車両運搬具 |
30,000 |
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|
特許権 |
2,000 |
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|
商標権 |
300 |
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事業譲渡益 |
119,200 |
||
なお、消費税については、貸方に「仮受消費税」を、借方に同額の現金預金を、それぞれ記載するルールです(土地は非課税)。
譲受側の仕訳方法
譲受側では簿価ではなく時価により資産を譲受することから、資産の金額はすべて時価で記載するルールです。譲渡側の仕訳とは反対に、借方に取引対象の資産を、貸方に取引価格を、それぞれ計上します。
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借方 |
貸方 |
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勘定科目 |
金額(千円) |
勘定科目 |
金額(千円) |
|
棚卸資産 |
10,000 |
現金預金 |
491,500 |
|
土地 |
300,000 |
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|
建物 |
40,000 |
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|
機械装置 |
70,000 |
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|
車両運搬具 |
20,000 |
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|
特許権 |
50,000 |
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商標権 |
1,500 |
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なお、消費税については、借方に「仮払消費税」を、貸方に同額の現金預金を、それぞれ記載するルールです(土地は非課税)。
事業譲渡におけるのれん発生時の仕訳方法

前章で取り上げたケースでは、帳簿上に記載されていない無形資産や将来的なキャッシュフローなどを加味していません。しかし、実際に事業譲渡を行う際は、「のれん(営業権)」を含めるケースが一般的とされています。のれんとは帳簿外の企業価値を表すものであり、将来の期待値を上乗せした際の、譲渡資産の時価合計額との間に生まれる差額のことです。
本章では、前章で取り上げたケースをもとに、のれんが発生する場合の仕訳方法について解説します。
譲渡側の仕訳方法
発生したのれんを計上する際、のれん分は事業譲渡益に加算するルールです。前章のケースでは時価4億9,150万円を譲渡価格としましたが、本項ではのれんが発生したとして6億円で取引を行ったと想定します。このケースにおける譲渡側の仕訳方法は、以下のとおりです。
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借方 |
貸方 |
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勘定科目 |
金額(千円) |
勘定科目 |
金額(千円) |
|
現金預金 |
600,000 |
棚卸資産 |
10,000 |
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土地 |
200,000 |
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|
建物 |
50,000 |
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|
機械装置 |
80,000 |
||
|
車両運搬具 |
30,000 |
||
|
特許権 |
2,000 |
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|
商標権 |
300 |
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事業譲渡益 |
227,700 |
||
現金預金および事業譲渡益以外の金額は、前章のケースと変化ありません。とはいえ、のれんも消費税の課税対象であることから、消費税額も大きく変動する点に注意しましょう。
譲受側の仕訳方法
譲渡側では事業譲渡益にのれん代を含めるものの、譲受側では勘定科目を別に設けなければなりません。先ほどのケースを用いると、貸方の現金預金を6億円と計上しつつ、借方には時価総額との差額として「のれん」を計上します。このケースにおける譲受側の仕訳内容は、以下のとおりです。
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借方 |
貸方 |
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|
勘定科目 |
金額(千円) |
勘定科目 |
金額(千円) |
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棚卸資産 |
10,000 |
現金預金 |
600,000 |
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土地 |
300,000 |
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|
建物 |
40,000 |
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|
機械装置 |
70,000 |
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車両運搬具 |
20,000 |
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特許権 |
50,000 |
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商標権 |
1,500 |
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のれん |
108,500 |
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なお、のれんは償却資産に該当するため、最長20年間にわたって減価償却を行えます。減価償却を行う際は、借方に「のれん償却費」、貸方に「のれん」として計上します。
事業譲渡における負ののれん発生時の仕訳方法

前章で取り上げたのは「正ののれん」が発生するケースでしたが、実際にはのれん代によって売却価格が時価総額を下回る「負ののれん」が発生するケースも存在します。負ののれんが生じる具体例を挙げると、偶発債務や簿外債務が発覚した際などです。
負ののれんが生じると、事業譲渡の会計処理は複雑化するため注意しましょう。本章では、前章までのケースをもとに、負ののれんが発生する場合の仕訳方法を解説します。
譲渡側の仕訳方法
負ののれんが生じると、時価総額からのれん代を差し引いた金額が譲渡価格とされるため、当然ながら事業譲渡益は減少する仕組みです。もしも譲渡価格が簿価を下回る金額になると仕訳方法がさらに複雑化することから、本項では4億円で事業譲渡を行ったケースを想定します。このケースにおける譲渡側の仕訳内容は、以下のとおりです。
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借方 |
貸方 |
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勘定科目 |
金額(千円) |
勘定科目 |
金額(千円) |
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現金預金 |
400,000 |
棚卸資産 |
10,000 |
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土地 |
200,000 |
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建物 |
50,000 |
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|
機械装置 |
80,000 |
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車両運搬具 |
30,000 |
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特許権 |
2,000 |
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商標権 |
300 |
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事業譲渡益 |
27,700 |
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なお、正ののれん発生時と同様に、譲渡側ではのれん代に関する処理は不要です。
譲受側の仕訳方法
負ののれんが発生する場合、譲受側では時価総額よりも低い取引価格で事業を譲受できます。そのため、正ののれんは借方に記載する一方で、負ののれんは貸方に時価総額との差額を計上しなければなりません。このケースにおける譲受側の仕訳内容は、以下のとおりです。
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借方 |
貸方 |
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勘定科目 |
金額(千円) |
勘定科目 |
金額(千円) |
|
棚卸資産 |
10,000 |
現金預金 |
400,000 |
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土地 |
300,000 |
のれん |
91,500 |
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建物 |
40,000 |
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機械装置 |
70,000 |
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車両運搬具 |
20,000 |
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特許権 |
50,000 |
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商標権 |
1,500 |
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なお、譲受側では、のれん代を減価償却するのではなく、事業年度の特別利益として一括で処理する必要があります。この処理方法は、負ののれん分の利益が出ていると考えるとイメージしやすいです。
事業譲渡で課される税務のポイント

事業譲渡では、会計に関する仕訳方法に加えて、税務に関しても把握しておく必要があります。会計と税務は関連する分野であるものの、会計処理と税務処理は一致しない部分も存在するため注意が必要です。
本章では、事業譲渡の税務処理に関する注意点を解説します。
法人税
事業譲渡の対象となった財産の取引価格は、その事業譲渡日の属する事業年度の益金の額に算入される一方、財産を譲渡する直前の帳簿価額は損金の額に算入される仕組みです。
ここで、取引価格が譲渡直前の帳簿価額よりも高い場合、超過部分の金額は譲渡益として法人税の課税対象とされます。ただし、事業譲渡を完全支配関係のある法人間で行った場合、一定要件を満たせばグループ法人税制が適用されて、譲渡損益は繰り延べられます。
のれん(資産(負債)調整勘定)
事業譲渡の対価の額と時価合計額との間に差額がある場合、会計処理ではのれんと呼称しますが、税務上では「資産調整勘定」や「差額負債調整勘定」と呼称します。資産調整勘定や負債調整勘定を計上する際は、それぞれ次の金額を損金の額または益金の額に算入します。
- 資産調整勘定の金額の当初計上額(または差額負債調整勘定の金額の当初計上額)✕その事業年度の月数/60(カ月)
負債調整勘定
前項で取り上げた「差額負債調整勘定」に関連して、「退職給与債務引受額」「短期重要債務見込額」を加えた3項目を「負債調整勘定」と呼ぶことも把握しておきましょう。
退職給与債務引受額とは、事業譲渡の対象となった従業員の退職給与につき、事業譲渡前の在職期間を勘定して算定する旨を約し、これに伴う負担を引き受けた場合における退職給与債務引受に係る金額のことです。譲受側において、その金額を負債として計上します。
また、短期重要債務見込額とは、事業譲渡に係る事業の利益に重大な影響を与える将来の債務のことであり、その履行が確定していないもののうち、事業譲渡後3年以内におけるその債務の額に相当する金額をさします。
減価償却資産
事業譲渡によって減価償却資産に該当する固定資産を取得した場合、残りの使用可能年数を見積もったうえで耐用年数を求めます。
ただし、この見積りが困難である場合、法定耐用年数の一部を経過した資産については、「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数✕20%」の計算式で求められる年数を耐用年数とすることができます。また、法定耐用年数の全部を経過している資産の耐用年数については、「法定耐用年数✕20%」の計算式で求めることが可能です。
消費税
事業譲渡では、譲渡対象の資産に対して消費税が課されるルールです。つまり、譲渡側が消費税の納税義務を負うため、これに相当する金額を譲受側に請求します。
消費税額は、各資産に付された対価の額を課税資産と非課税資産(土地、有価証券など)に分類したうえで求めます。すべての資産が課税対象に該当するわけではないことから、あらかじめ課税対象を把握しておかなければなりません。
事業譲渡を含めM&Aを検討する場合は専門家に相談すべし

この記事では、事業譲渡を検討する経営者の方に向けて、仕訳/会計処理の方法や税務について解説しました。事業譲渡の仕訳方法は、取引対象の財産の内容によって異なることから、自社の状況に応じて適切な仕訳を行えるよう、あらかじめ準備しておきましょう。
とはいえ、事業譲渡では会計だけでなく税務の処理についても専門的に高度な知識が求められるため、専門家からサポートを得ることが大切です。また、事業譲渡の仕訳について少しでも不安・不明点があれば、専門家への相談をおすすめします。
※フォーバルでは具体的な税務相談を受けることができないため、誤解無いよう税理士等の専門家へのご相談を推奨します
当社フォーバルは、事業承継M&Aを専門的に手掛けております。中小企業の取り扱いがあるほか、事業譲渡前の経営コンサルから事業譲渡決定後の手続きに至るまで幅広くサポートしておりますので、事業譲渡(M&A)に不安がある方はぜひ一度お気軽にご相談ください。
フォーバルは、過去20万社の経営支援実績があり、中小・小規模企業の存続と成長に向けた事業承継M&A支援を手掛けております。事業譲渡含めM&Aを検討したい場合は、まずはフォーバルへご相談ください。








