column
M&Aの記事一覧事業承継コラム

事業譲渡にかかる税金と税金対策を徹底解説【2022年最新】

 

事業譲渡の税金対策を考える際は、まず譲渡側と譲受側それぞれに課される税金の種類について把握しておくことが必要不可欠です。この記事では、事業譲渡において生じる税金の種類および税金対策を中心に解説します。

事業譲渡とは

事業譲渡とは、譲渡側企業に属する事業の全部もしくは一部を、他の企業(譲受側企業)に対して譲渡する行為のことです。事業譲渡の方法には、以下の2種類が存在します。

  • 全部譲渡:譲渡企業が手掛ける事業すべてを譲渡する行為
  • 一部譲渡:譲渡企業が手掛ける事業のうち、一部門を切り離して譲渡する行為

株式譲渡、会社分割、合併などのM&A手法と比較した場合、事業譲渡では、「契約締結時に譲渡対象とする事業を選べる点」や、「事業に関連する資産や負債の承継も比較的自由に選べる点」などが特徴的です。

ただし、事業譲渡は、他のM&A手法と比較するとプロセスが煩雑であり、手続きにかかる時間や手間が大きくなりやすいです。譲渡対象である資産、負債、雇用関係などを相手側に引き継ぐ際に、個別に手続きを実施しなければなりません。債権者や社員などと個別に同意を得たうえで切り替える必要があるほか、不動産を含む場合は登記手続きも必要です。

また、事業譲渡により譲渡側企業に属する事業の資産や負債を譲渡した場合、その対価は譲渡側企業に支払われます。これに対して、株式譲渡では、株式自体を取引するため、その対価は株主に支払われるのです。この点で、事業譲渡と株式譲渡は異なります。

なお、事業譲渡の主なメリットやデメリットには、以下のような項目が挙げられます。

メリット

譲渡側

  • 特定の事業を自由に選び譲渡できる
  • 会社に負債があっても譲受先が見つかりやすい
  • 事業譲渡後も会社を存続させ、経営を継続できる

譲受側

  • 取引対象の事業の範囲を指定できる
  • 負債や債務の引継ぎリスクを回避できる
  • 税金対策により節税効果を期待できる(のれん相当額の償却、有形固定資産の減価償却など)

デメリット

譲渡側

  • 経営者のみでプロセスを進行できない
  • 多くの時間、手間がかかる
  • 競業避止義務を負うおそれがある(同一の市町村区域内かつ同じ業界で、事業を行えない)
  • 法人税、住民税などが課される

譲受側

  • 譲渡完了までに多くの手間がかかる
  • 譲渡代金の支払いに対して消費税が課される

事業譲渡にかかる税金

 

事業譲渡では、取引により対価を得る譲渡側企業に対して税金が課されるだけでなく、事業譲受側にも税金が課されるケースがあります。本章では、当事会社双方の立場に分けて、事業譲渡により課される税金を解説します。

事業譲渡側の税金

事業譲渡側に課される主な税金には、「法人税」「消費税」が挙げられます。それぞれの税金の内容について、順番に解説します。

法人税

事業譲渡を行った際、「譲渡する資産と負債の差額」よりも「譲渡金額」が上回った(利益が生じた)場合、その利益に対して法人税などが課されます(法人住民税、事業税を含む)。これらの税金を合計した理論上の税率を「実効税率」といい、近年では引き下げの方向にあるものの、税率は約30%です。

具体例を挙げると、事業譲渡の対価が4億円、譲渡する資産と負債の差額が2億円の場合、億円の場合、事業譲渡益として2億円が計上されます。そして、この2億円に対して約30%程度の税率が課され、納税額は6,000万円程度です。

消費税

消費税は、事業譲渡により譲渡する資産のうち、「消費税の課税対象となる資産」に対して課される税金です。つまり、利益に対して課税されるものではなく、事業譲渡により赤字の状態が生じたとしても、消費税は課される可能性がある点に注意が必要です。

具体的にいうと、譲渡代金から土地など消費税対象外の資産を差し引いた額に、10%の税率を掛けた金額が消費税の納税額の概算です(2022年2月現在)。

例えば、事業譲渡の対価が10億円で、消費税の非課税財産が1億円のケースを想定すると、納税額は9,000万円と算出されます。

なお、事業譲渡とは違い、株式譲渡では消費税が課されません。そのため、M&Aの検討段階で株式譲渡から事業譲渡に手法を変更した場合などでは、消費税の発生を想定していないことが多く、資金計画に混乱が生じるおそれがあるため注意しましょう。

事業譲受側の税金

続いて、事業譲受側に課される主な税金には、「消費税」「不動産取得税」「登録免許税」が挙げられます。それぞれの税金の内容について、順番に解説します。

消費税

前述のとおり、消費税は事業譲渡側に課される税金であるものの、その消費税の実質的な負担者は事業譲受側です。つまり、事業譲渡側により、譲渡金額に対して課される消費税の金額分を上乗せした形で譲渡対価が設定される仕組みです。

これは通常の商取引と同一の考え方(商品を購入する側が消費税を負担し、譲渡側が受け取った消費税を納付する)のもとで実施されています。

不動産取得税

事業譲渡により譲受(取得)した財産の中に不動産が存在する場合、譲受側に対して不動産取得税が課されます。不動産取得税とは、土地や家屋を売買、交換、贈与、新築、増築、改築などにより取得した場合に、その取得者が納める税金のことです。

ここでいう「不動産の取得」とは、「不動産の所有権を取得した場合」のことで、登記の有無、有償および無償、取得の理由などは問われません。例えば、土地や家屋の所有権移転登記を省略した場合や、建築した家屋を登記しない場合にも、不動産取得税の課税対象に該当するため注意が必要です。

なお、会社分割や相続など一定の要件を満たす場合には、不動産取得税が非課税となる点も把握しておきましょう。

不動産取得税の課税額は、「取得した不動産の価格×3/100」(2022年2月現在)で算出できます。

登録免許税

事業譲渡により譲受(取得)した財産の中に不動産があり、登記を行う場合には、登録免許税も課されます。また、事業譲渡によって譲受した事業に「許認可の必要な事業」がある場合は、事業譲渡後に再度許認可を取得しなければならない場合もあるため注意しましょう。

土地の売買取引に伴う登録免許税の課税額は、「土地の価格×15/1000」(2022年2月現在)で求められます。

事業譲渡における税金対策

本章では、前述した事業承継で課される税金の概要を踏まえて、節税効果を得るための税金対策として代表的なものを3つピックアップして紹介します。

退職金の活用

事業譲渡を行う場合、取引によって生じた譲渡利益を法人の決算時期まで残しておくと、その利益に対して法人税が課されます。つまり、事業譲渡に関する利益を減らすことで、法人税の課税額を抑えられる可能性があるのです。そのために効果的な税金対策のひとつに、退職金の活用があります。

具体的にいうと、事業譲渡を行った事業年度に社長を辞任する施策のことです。このときに社長に対して退職金を支給することで、退職金は経費となるために利益を圧縮できます。さらに、退職所得は所得税の計算時に優遇を受けられるため、法人税を抑えながら社長個人に資金を移すことが可能です。

このように大きなメリットが見込めるものの、退職金を活用する際には注意点もあります。代表的なものは、「退職金の金額はそれほど高額に設定できない点」と、「個人の所得税の税率は累進税率であり、一定の金額を超えると法人税の支払い額よりも高くなってしまう点」です。これらの点を把握しつつ、慎重に活用すると良いでしょう。

その他の経費の活用

退職金以外の経費についても、計上する時期を事業譲渡を行った時期と合わせることで、法人税などの節税効果が期待できます。具体例を挙げると、事業譲渡益が生じた事業年度において、それと同額に近い広告宣伝費を使うことで、法人税等の金額を限りなくゼロに抑えることが可能です。

ただし、退職金の活用を含めて、経費による税金対策を講じる場合、キャッシュアウトが伴うことから、税金対策を講じないケースと比較すると、最終的に会社に残るキャッシュが少なくなります。したがって、意味のない経費を計上することは避けて、必要かつ効果的な経費を計上することが望ましいです。

第三者割当増資の採用

これは、事業譲渡ではなく、第三者割当増資のM&A手法を用いる税金対策です。第三者割当増資とは、第三者から新たに出資を受けて、新たな株式を発行することで、自社と相手企業の持株比率を変更し、実質的に経営権を相手側に移すM&A手法をさします。

第三者割当増資を行う場合、譲渡側の株主はキャッシュを得られず、対象企業の資金が増資によって増加するのみです。そのため、譲渡側の株主に対して税金は課されないうえ、対象企業に損益が発生することもありません。

事業譲渡にかかる税金の申告タイミング

事業譲渡によって法人に課される税金は、事業年度が終了した日の翌日より2カ月以内に納税を行わなければなりません。具体例を挙げると、3月末を決算期とする企業の納税期限は5月末で、12月末を決算期とする企業は2月末です。

ただし、上場企業で会計監査人設置会社となっているなど、2カ月以内に決算を固めることが難しい場合には、「申告期限の延長の特例」の申請を行えます。

ちなみに、個人事業主が事業譲渡を行った場合は、事業を譲渡して得たお金が譲渡所得とされ、その譲渡益に対して所得税が課されます(譲渡資産によって総合課税・分離課税が存在)。

個人に課された税金は、2月中旬から3月中旬にかけて実施される確定申告を行い納税しなければなりません。令和3年分の確定申告に関しては、オミクロン株による感染の急速な拡大状況に鑑み、令和4年3月15日(個人事業者の消費税の確定申告については同年3月31日)の期限までに、新型コロナウイルス感染症の影響により申告することが困難であった方については、同年4月15日までの間、簡易な方法により申告・納付期限を延長できます。

出典:国税庁「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」閲覧日 2022年2月12日

事業譲渡の税金対策は専門家に相談

この記事では、事業譲渡の税金対策を中心に、課される税金の種類や特徴などを踏まえながら解説しました。

事業譲渡では、取引により対価を得る譲渡側企業に対して税金が課されるだけでなく、事業譲受側にも税金が課されるケースがあります。譲受側には、消費税だけでなく、取引対象の事業の中に不動産があったり、登記申請手続きが伴ったりする場合には、別途税金が課されるため注意しましょう。

一般的に、譲渡側企業では、「退職金の活用」「その他の経費の活用」「第三者割当増資の採用」などの税金対策が効果的であると考えられています。とはいえ、自社にとって効果が見込める税金対策の見極めには、専門的に高度な知識が求められるため、専門家に相談することが望ましいです。

もしも事業譲渡を含むM&Aをご検討されているのであれば、フォーバルまでご相談ください。当社フォーバルは、過去20万社の経営支援実績があり、中小・小規模企業の存続と成長に向けた事業承継M&A支援を手掛けております。

事業譲渡実施が未定であっても電話・チャットで無料相談を実施しておりますので、ぜひ一度お気軽にご相談ください。


TOP