M&Aは8つの段階でできている

  1. 準備(資料の整理、自社の評価把握)
  2. アドバイザーの選定と契約
  3. 相手探し(ノンネームでの打診)
  4. 秘密保持契約と、企業概要書の開示
  5. トップ面談・意向表明
  6. 基本合意
  7. 買収監査(デューデリジェンス)
  8. 最終契約・クロージング

順調で半年〜1年、準備を含めると1〜3年です。段階ごとの目安はM&Aの期間はどれくらいかにまとめました。

1. 準備でやること

相手を探す前に、次を揃えます。ここが整っている会社ほど、その後が速く、条件もよくなります。

  • 直近3期の決算書、試算表、勘定科目内訳明細
  • 品目別の売上と粗利
  • 取引先の構成比(上位5社で何%か)
  • 設備の一覧(導入年・更新見込み)
  • 株主名簿、定款、登記事項証明書
  • 営業許可の内容、衛生管理計画と記録
  • 従業員名簿、就業規則、労働時間の記録

最後の2つが食品製造業で特に効きます。許可と衛生管理は営業許可の承継HACCPに沿った衛生管理を、労務は労務デューデリに備えるをご覧ください。

2. アドバイザーを選ぶ

ここで大きく2つの立場に分かれます。売り手と買い手の間に立つ仲介と、一方だけにつくFAです。それぞれ向き不向きがあります。FAと仲介の違い総合仲介と業界特化で比べ方を示しています。

費用の体系も会社によって違い、着手金・月額報酬・中間金・成功報酬の組み合わせがあります。成約しなければ費用が発生しない完全成功報酬という形もあります。M&Aの費用をご確認ください。

3〜4. 相手探しと開示

まず社名を伏せた資料(ノンネームシート)で打診し、関心を示した相手と秘密保持契約を結んでから、詳しい企業概要書を開示します。

ここでの最大の関心事は情報が漏れないかです。従業員や取引先に知られると、動揺や取引の見直しにつながります。打診先の選び方と管理の仕方は買い手はどう探すのか秘密保持契約で守れること・守れないことで扱っています。

5〜6. 面談から基本合意へ

トップ面談は、条件よりも相手の考え方を確かめる場です。従業員をどうするつもりか、工場を続けるのか、自分はいつまで残るのか。ここで違和感があれば、価格が高くても先に進むべきではありません。

関心が固まると意向表明書が提示され、条件が合えば基本合意に進みます。基本合意では独占交渉権を与えるのが一般的です。意向表明書の読み方基本合意書で決めることを参照してください。

7. 買収監査(デューデリジェンス)

買い手が財務・法務・労務・環境設備の面から会社を調べます。食品工場では次が焦点になります。

  • 在庫の評価と滞留(財務DD
  • 営業許可・認証・契約の有効性(法務DD
  • 未払い残業と社会保険(労務DD
  • 排水・冷媒・アスベスト・設備の更新負担(環境・設備DD

ここで想定外の問題が出ると、価格の再交渉や破談につながります。隠さず、先に開示するのが結果的に有利です。

8. 最終契約とクロージング

最終契約では、価格のほか、表明保証、補償、従業員の処遇、先代の関与期間などを定めます。雇用維持を契約に残す方法は雇用維持を契約に残すで扱っています。

その後、資金決済と株式・資産の引き渡しを行います。実務はクロージングでやることにまとめました。

スキームの選択が最初の分岐点

株式譲渡か事業譲渡か。食品製造業では、この選択が営業許可の扱いを左右します。株式譲渡なら会社は同じなので許可は継続しますが、事業譲渡では原則として新たな手続きが必要です。

手続きの空白期間は、そのまま製造の停止を意味します。方式を決める前に株式譲渡と事業譲渡はどちらを選ぶかを必ずご確認ください。

引き渡した後(PMI)

M&Aは契約で終わりません。従業員への説明、取引先への通知、制度の統合。最初の100日の進め方が定着を左右します。PMIの進め方従業員への説明をご覧ください。

まず何をするか

いきなり相手を探す必要はありません。直近3期の決算書と株主名簿を出して、自社のおおよその評価を知る。ここから始めれば、進めるかどうかも含めて判断できます。食品工場の売却価格はどう決まるのかが出発点になります。

※ 営業許可・税務・労働法令の具体的な取扱いは、法令の改正や個別の事情、管轄行政庁の運用によって異なります。実行にあたっては、管轄の保健所・税務署等および専門家に必ずご確認ください。