PMIとは

Post Merger Integration の略で、M&A後の統合作業のことです。制度、システム、組織、業務のやり方をどう合わせていくかを進めます。

食品製造業のPMIには、他業種と違う優先順位があります。製造が止まらないこと、品質が落ちないことが何よりも優先されるからです。

最初の100日の順序

  1. 人(1〜30日)
  2. 品質・衛生管理(1〜30日、並行)
  3. 数字(30〜60日)
  4. 取引先(30〜90日)
  5. 制度・システム(60〜100日以降)

制度やシステムの統合を最初に持ってくると、現場が混乱します。急がなくてよいものを後ろに置くのが原則です。

1. 人:まず辞めさせない

PMIで最も避けたいのは、キーパーソンの離職です。特に食品工場では、配合や工程の判断を担う人が抜けると製造そのものが揺らぎます。

最初の30日でやること。

  • 全従業員への説明会(雇用と労働条件について明確に伝える)
  • 工場長・製造部長・品質管理責任者との個別面談
  • 技能を持つ従業員の特定と、個別の声かけ
  • 「当面は変えない」ことの明示

この時期に制度変更を打ち出さないことが重要です。給与体系や評価制度をすぐに統合しようとすると、不安が一気に高まります。従業員への説明を参照してください。

2. 品質・衛生管理:体制を切らさない

食品製造業に固有の最優先事項です。

  • 食品衛生責任者の届出が滞りなく行われているか確認する
  • 衛生管理計画と記録の運用を、そのまま継続する
  • 取得している認証の維持審査の予定を確認する
  • 取引先の工場監査の予定を把握する
  • 原料の仕入先に変更がないことを確認する

記録が途切れると、後から取り返せません。担当者が代わる場合でも、運用そのものは止めないでください。衛生管理の記録の残し方取引先の工場監査をご覧ください。

3. 数字:品目別の採算を確認する

30日を過ぎたら、数字の把握に入ります。買収監査で得た情報と、実際の運用にはずれがあります。

  • 品目別の原価計算が実態を反映しているか確認する
  • ロスの発生状況を工程別に把握する
  • 設備の稼働率と、止まっている時間の内訳を見る
  • 月次で数字が出る仕組みになっているか確認する

ここで判明した課題が、その後の改善計画の材料になります。品目別採算の作り方を参照してください。

4. 取引先:関係を維持する

通知は済んでいても、関係の維持はこれからです。

  • 主要取引先を、新旧の代表が一緒に訪問する
  • 担当者は当面変えない
  • 品質管理の窓口が誰かを明示する
  • 供給体制に変更がないことを、具体的に説明する

取引先が最も気にするのは供給の継続性です。取引先との関係を切らさない引き継ぎにまとめています。

5. 制度・システム:ここからが本番

60日を過ぎたら、統合の設計に入ります。ただし実施は段階的にします。

  • 会計・給与のシステム
  • 生産管理・在庫管理のシステム
  • 就業規則・賃金制度
  • 購買の集約

労働条件の統合は特に慎重に進める必要があります。不利益な変更には手続き上の制約があります。M&A後の労働条件をどう揃えるかをご覧ください。

売り手(先代)の役割

先代が一定期間残る場合、PMIでの役割を明確にしておきます。取引先への同行、技術的な相談への対応が中心で、製造現場への直接の指示や人事への関与は避けるのが原則です。

設計の考え方は引退後に会社へどう関わるか先代が会社に残るときのルール作りにまとめました。

やってはいけないこと

  • 就任早々に人事を刷新する
  • 買い手側のやり方を一方的に押し付ける
  • 「これまでのやり方は間違っていた」と言う
  • コスト削減を最初の施策にする

承継直後の注意点と共通します。承継直後にやってはいけないこともあわせてご覧ください。

食品工場のM&Aは成約後から始まる

契約書に署名した日が終わりではありません。従業員から見れば、そこが始まりです。成約後にまずやることを並べます。

  1. 従業員への説明(従業員への説明の仕方
  2. 取引先へのあいさつ回り
  3. 保健所など許認可まわりの届出(業種別の営業許可と承継
  4. 金融機関への報告と、個人保証の解除手続き
  5. 給与・勤怠・会計の仕組みをどう合わせるか決める

3番目には期限があります。成約の高揚感で後回しにすると、操業に関わります