意向表明書とは

買い手候補が、買収を検討する意思と、その時点で考えている条件を書面で示すものです。法的な拘束力は原則としてありませんが、その後の交渉の出発点になります。

複数の候補から出てくることもあります。その場合、この書面を並べて比較することになります。

記載される主な項目

  • 買収の目的・理由
  • 買収スキーム(株式譲渡・事業譲渡など)
  • 買収価格(または価格レンジ)と、その算定の考え方
  • 資金の調達方法
  • 今後のスケジュール
  • 買収監査の範囲と時期
  • 従業員の処遇に関する方針
  • 経営体制(現経営者の関与、役員の派遣)
  • 前提条件(何が満たされなければ進めないか)

価格以外に確認すべき6つのこと

1. 価格の「幅」と、その根拠

「◯億円〜◯億円」というレンジで示されることがよくあります。重要なのは、どういう場合に上限になり、どういう場合に下限になるかです。ここが書かれていなければ、必ず確認してください。

「買収監査の結果次第で下方修正の可能性がある」と書かれている場合、実質的にはレンジの下限が基準だと考えたほうが安全です。

2. 買収スキーム

食品製造業では決定的に重要です。事業譲渡の場合、営業許可を取り直す手続きが必要になり、その間の製造をどうするかという問題が生じます。

株式譲渡と事業譲渡では、税金も、契約の引き継ぎ方も、従業員の扱いも変わります。株式譲渡と事業譲渡はどちらを選ぶか事業譲渡のときの営業許可を確認してください。

3. 資金の調達方法

自己資金か、借入か。借入なら融資の見込みは立っているか。ここが曖昧な相手は、最終段階で資金が用意できず破談になることがあります。

4. 従業員の処遇

「原則として雇用を維持する」という記載が一般的ですが、「原則として」の中身を確認します。労働条件(給与・賞与・退職金・勤務地)を維持するのか、統合していくのか。

最終契約でどこまで書けるかは雇用維持を契約に残すで扱っています。

5. 経営者の関与期間

「代表者には引き継ぎのため◯年間の残留を求める」といった記載があります。自分の希望と合っているかを確認してください。

ここが折り合わずに交渉が止まることは珍しくありません。引き継ぎ期間はどれくらい必要かを参照してください。

6. 前提条件

「株式が100%集約されていること」「未払い残業がないこと」「主要取引先の同意が得られること」といった条件が書かれます。これらが満たせるかどうかが、実質的な成否を決めます

株主の整理には時間がかかります。分散した株式をまとめるを早めに確認してください。

複数を比べるときの表

観点A社B社
価格(下限)
スキーム/許可の扱い
資金の確実性
雇用の方針
工場・ブランドの継続
自分の残留期間
前提条件の満たしやすさ

この表を埋めると、金額がいちばん高い相手が最良とは限らないことがよく分かります。

受け取った後の進め方

意向表明書は交渉の出発点なので、そのまま受けるか断るかの二択ではありません。条件について質問し、修正を求めることができます。

特に前提条件と価格の根拠は、遠慮なく確認してください。ここで曖昧にしたまま基本合意に進むと、後から条件が下がります基本合意書で決めることへ進んでください。