なぜ販路を広げるのか
- 1社への依存度を下げる
- 粗利率の高い販路を持つ
- 価格交渉力をつける
- 稼働の谷を埋める
- 企業価値を高める
最後の点は承継の観点で重要です。取引先が分散している会社は、評価が上がります。取引先構成が評価に与える影響をご覧ください。
始めやすい順序
1. 既存の取引先で扱う商品を増やす
最も確実です。新規開拓より、はるかに成功率が高くなります。
- すでに納めている商品の隣接カテゴリ
- 季節商品の提案
- 規格違い(内容量、荷姿)の提案
関係があるところから広げるのが基本です。
2. 業務用(外食・給食・中食)
小売より始めやすい販路です。
利点
- 包装が簡素で済む(表示の要件が小売より緩やかな場合がある)
- ロットがまとまる
- 商品開発の負担が小さい
- 価格交渉の余地がある
注意点
- 業務用でも表示のルールがあります(食品表示法の基本)
- 需要の変動が大きい(外食は景気や季節の影響を受けやすい)
- 価格競争になりやすい
業務用食材メーカーの事業承継もご覧ください。
3. 地域の小売店・道の駅
小ロットから始められ、反応を直接見られます。
- 商品の改良に活かせる
- 地域での認知が上がる
- 大手との取引の実績づくりになる
ここで売れた実績が、次の商談の材料になります。
4. EC・直販
粗利は高いが、物流と運営の負担があります。直販・EC・卸の粗利を比べるをご覧ください。
5. 新規の卸・量販店
最も難易度が高く、時間もかかります。上記で実績を作ってから臨むほうが成功率が上がります。
業務用と小売の違い
| 業務用 | 小売 | |
|---|---|---|
| 包装 | 簡素(バルク、大袋) | 個包装、デザインが必要 |
| 表示 | 要件が異なる | 詳細な表示が必要 |
| ロット | 大きい | 小さい場合も |
| 求められる要素 | 使いやすさ、歩留まり、価格 | 味、見た目、ブランド |
| 商品開発の負担 | 小さい | 大きい(パッケージ、企画) |
| 価格の変動 | 相談の余地がある | 棚価格の制約が強い |
製造中心の会社は、まず業務用から入るほうが自社の強みを活かせます。
既存取引との関係
最も注意すべき点です。
確認すること
- OEM契約に競合品の製造を制限する条項がないか
- 取引先が扱っている商品と競合しないか
- 同じ地域・同じ客層を狙っていないか
契約書の棚卸しで契約内容を確認してください。
摩擦を避ける工夫
- 商品カテゴリをずらす
- 販路をずらす(取引先が扱わないチャネル)
- 地域をずらす
- ブランドを分ける
- 事前に相談する(関係によっては有効)
隠して始めると、発覚したときの影響が大きくなります。関係の深い取引先には、事前に相談するほうが安全なこともあります。
製造能力の確認
販路を広げる前に、次を確認してください。
- 営業許可の範囲内か(新しい品目・販売形態)
- 生産能力に余力があるか
- 新しい包材・設備が必要か
- 表示・規格書を作れる体制があるか
- 物流に対応できるか
1番目を必ず確認してください。直売所を作る、ECを始める、業態を変える。それぞれ許可や届出が必要になることがあります。営業許可が要る業種はどれかをご覧ください。
営業の体制
製造中心の会社には、営業の機能がないことがあります。
- 誰が商談に行くか
- 提案資料を誰が作るか
- 見積もりを誰が出すか
- 問い合わせに誰が対応するか
「社長が一人で全部やっている」状態は、承継の障害にもなります。営業人材をどう作るかをご覧ください。
展示会・商談会の活用
新規開拓の手段として有効です。
- 業界の展示会
- 自治体・支援機関が主催する商談会
- バイヤーとのマッチングイベント
準備しておくもの
- 会社案内(工場の写真、設備、許可・認証)
- 商品の規格書
- サンプル
- 価格表(ロット別)
- OEM対応の可否と条件
規格書がすぐ出せることが、商談の成否を分けます。原料規格書の管理をご覧ください。
時間軸
新規販路が売上として立つまでには、1〜3年かかります。
承継やM&Aを見据えるなら、早く着手するほど成果が数字に表れます。売る前の1年でできる企業価値の上げ方をご覧ください。