どこで使っているかを分ける
まず、エネルギーの使途を分解してください。食品工場ではおおむね次の構成になります。
- 冷凍・冷蔵:24時間稼働。電力の大きな割合を占める
- 加熱:ボイラー、フライヤー、オーブン、殺菌
- 動力:コンプレッサー、ポンプ、コンベア
- 空調・照明
- 洗浄:温水、蒸気
計測が第一歩です。主要設備に電力計を付けるだけで、どこに使っているかが見えます。
冷凍・冷蔵の削減
金額が最も大きく、対策の効果も出やすい領域です。
- 扉の開閉時間を減らす:作業手順の見直し、ビニールカーテン、自動扉
- 庫内の整理:詰め込みすぎは冷気の循環を妨げる
- 霜取りの適正化:着霜は効率を大きく下げる
- 凝縮器の清掃:埃の付着で効率が落ちる
- 設定温度の見直し:必要以上に下げていないか(品質要件は必ず確認)
- 断熱の改修:パネルの劣化、隙間
凝縮器の清掃は、費用をかけずにできる対策です。年に数回の清掃で効率が改善します。
加熱の削減
- 配管・釜の断熱:蒸気配管の保温は投資回収が早い
- 蒸気トラップの点検:故障すると蒸気が漏れ続ける
- ボイラーの効率:燃焼調整、水処理
- 排熱の回収:温水として再利用
- 立ち上げ時間の短縮:段取りの改善と連動
- 空焚き時間の削減:稼働の連続化
蒸気トラップの点検は見落とされがちです。故障しても目に見えないため、定期点検の仕組みが必要です。
配管の断熱は、作業環境の改善にもつながります。熱中症と低温作業をご覧ください。
ピーク電力の管理
電気料金には、最大需要電力(デマンド)に応じた基本料金が含まれることがあります。
一瞬でもピークが上がると、その後の基本料金に影響する仕組みです。
対策
- 大型設備の同時起動を避ける(起動時間をずらす)
- デマンド監視装置を導入する
- 冷凍機の運転を分散させる
- 空調の運転を調整する
設備の起動タイミングをずらすだけで、基本料金が下がることがあります。費用のかからない対策です。
稼働の集約
見落とされやすい観点です。同じ生産量を、短い時間で作るほうがエネルギーは減ります。
- 設備の立ち上げ・停止が減る
- 空調・照明の稼働時間が減る
- 待機電力が減る
段取り替えの短縮や稼働率の改善は、そのままエネルギー削減にもつながります。段取り替え時間の短縮とライン稼働率の見方をご覧ください。
契約の見直し
- 電力・ガスの契約プランが実態に合っているか
- 契約電力が過大になっていないか
- 複数社から見積もりを取る
契約の見直しは、設備投資なしで効果が出る数少ない対策です。数年見直していない場合は確認してください。
設備更新との関係
老朽化した設備は、エネルギー効率が悪くなっています。
- 冷凍機:新しい機種との効率差は大きい
- ボイラー:燃焼効率の低下
- 照明:LED化
- コンプレッサー:インバータ化
更新の判断には、エネルギー削減額を織り込んでください。年間の削減額で投資回収年数を計算すると、更新の妥当性が見えます。
省エネ設備の導入には補助金が使える場合があります。老朽化した工場・設備をどう引き継ぐかと省力化投資への補助をご覧ください。
投資回収の見方
次の順で検討してください。
- 費用ゼロ〜数万円:清掃、設定見直し、起動時間の分散、契約見直し
- 数十万円:断熱、ビニールカーテン、LED化、デマンド監視
- 数百万円以上:設備更新、排熱回収
1から順にやってください。効果を確認してから次に進むと、投資判断の精度が上がります。
効果の測り方
- 月次のエネルギー使用量と金額
- 生産量あたりの使用量(原単位)
- 設備別の使用量(計測している場合)
原単位で見ることが重要です。生産量が減れば使用量も減りますが、それは改善ではありません。
承継・M&Aでの意味
エネルギー効率の悪い工場は、買い手から見ると「引き継いだ後のコスト」です。老朽化した設備の更新負担と同じように評価されます。
逆に、原単位の改善実績があれば、管理水準の高さを示せます。設備の評価をご覧ください。