なぜ原価管理が土台なのか
- 価格改定:根拠がなければ交渉できない
- 品目の取捨選択:どれが儲かっているか分からなければ判断できない
- 承継:後継者が値決めをできない
- M&A:買い手が最初に求める資料
- 金融機関:説明力が変わる
逆に言えば、原価管理を整えると、これらすべてが一度に改善します。だからこそ最優先の取り組みになります。
ステップ1:集めるデータは4つ
- 原材料の使用量と単価
- 生産数量(品目別・ロット別)
- 作業時間(工程別・品目別)
- 経費(電気、ガス、水道、包材、外注)
いきなり完璧を目指さないでください。まず主力品目の数点から始めます。詳しくは原価計算を始めるをご覧ください。
ステップ2:直接費を積み上げる
品目に直接ひもづく費用です。
- 原材料費:配合表 × 単価。ここに歩留まりを織り込むのが要点です
- 包装資材費:フィルム、トレー、ラベル、段ボール
- 直接労務費:その品目の製造に要した時間 × 時間単価
歩留まりを見ないと、原価は必ず実態より低く出ます。歩留まりとロスの改善をご覧ください。
ステップ3:加工費を配賦する
複数の品目に共通してかかる費用(設備の減価償却、電気、間接人件費、工場の家賃)を、何らかの基準で品目に割り振ります。
食品工場では、次のような基準が使われます。
- 製造時間(ライン占有時間)
- 生産数量
- 直接労務費
基準の選び方で採算が変わります。段取り替えの多い品目は、時間基準にすると実態に近づきます。加工費の配賦をご覧ください。
ステップ4:品目別の採算表を作る
| 項目 | A商品 | B商品 |
|---|---|---|
| 売価 | 100 | 100 |
| 原材料費 | 45 | 38 |
| 包材費 | 8 | 12 |
| 直接労務費 | 15 | 25 |
| 限界利益 | 32 | 25 |
| 加工費(配賦) | 20 | 28 |
| 営業利益 | 12 | −3 |
限界利益と営業利益を分けて見ることが重要です。営業利益が赤字でも限界利益が出ていれば、稼働を埋める役には立っています。品目別採算の作り方をご覧ください。
ステップ5:差異を分析する
あらかじめ決めた標準の原価と、実際にかかった原価を比べます。差が出た理由を、次に分解します。
- 数量差異:使った量が想定より多い/少ない(歩留まり、ロス)
- 価格差異:単価が想定と違う(原材料の値上がり)
- 時間差異:作業時間が想定と違う(段取り、トラブル)
この分解ができると、打ち手が決まります。標準原価と実際原価をご覧ください。
ステップ6:使う
価格改定に使う
原材料が何%上がり、原価が何円上がったか。品目単位で示せると、交渉が具体的になります。原材料高騰と価格転嫁と価格改定の交渉をご覧ください。
品目の見直しに使う
限界利益も出ていない品目は、値上げか撤退の対象です。ただし稼働への影響を見る必要があります。儲からない商品をやめるをご覧ください。
改善の優先順位に使う
どの工程で、どの品目で、いくら損しているか。金額の大きいところから手をつけるのが原則です。
設備投資の判断に使う
投資でどの費目がいくら減るかを試算できます。省人化投資の順序をご覧ください。
始めるときの現実的な進め方
- 売上上位10品目に絞る
- 配合表と歩留まりから原材料費を出す
- 包材費を加える
- 製造時間を実測して労務費を出す
- 加工費は、まず生産時間で配賦する
- 3か月運用して、実態とのずれを直す
最初から全品目・完璧な精度を目指すと、必ず挫折します。10品目でも、見えるものは大きく変わります。
システム化はいつか
表計算ソフトで仕組みを作り、何を集めれば原価が出るかが分かってからシステム化するのが順序です。仕組みが分からないままシステムを入れると、使いこなせません。
原価管理システムの選び方と生産実績の自動収集をご覧ください。