作りすぎのコスト
食品工場では、作りすぎが直接廃棄につながります。しかも、原材料費だけでなく、加工費も人件費もすべて失われます。
それでも作りすぎるのは、欠品への恐れがあるからです。欠品すると、取引先の信頼を失い、次から発注が減るかもしれない。
この非対称性が、常に「多めに作る」判断につながります。
予測の精度を上げる手順
ステップ1:実績を蓄積する
まず、次のデータを揃えてください。
- 品目別・取引先別の出荷実績(日次)
- 受注と実出荷の差
- 返品・廃棄の実績
- 欠品の発生
最低1年分あると、季節性が見えます。
ステップ2:パターンを見つける
食品の需要には、いくつかの規則性があります。
- 曜日:週末に増える、月曜が少ない
- 月・季節:夏冷やし麺、冬鍋物
- 行事:年末年始、彼岸、行楽シーズン
- 天候:気温、降水(弁当・惣菜で顕著)
- 取引先の販促:特売、チラシ掲載
取引先の販促情報を事前に得られるかが、精度を大きく左右します。営業担当が定期的に確認する仕組みを作ってください。
ステップ3:予測の方法を決める
複雑な手法は不要です。次の組み合わせで十分機能します。
- 過去同曜日・同時期の実績平均
- 直近のトレンド(増加傾向か減少傾向か)
- 販促・天候による補正
表計算ソフトで作れます。AIによる予測は、この土台ができてから検討してください。需要予測にAIは使えるかをご覧ください。
ステップ4:予測と実績のずれを記録する
毎日、予測と実績の差を記録します。これを続けると、どの品目のどの場面でずれるかが見えてきます。
ずれの記録がないと、予測は永遠に改善しません。
仕込み計画への落とし込み
1. 品目をABC分析する
- A品目:数量が多く、安定している → 計画生産
- B品目:中程度 → 予測に基づく生産+調整
- C品目:少量、変動が大きい → 受注後生産、または最小ロット
すべてを同じ精度で予測しようとしないことがコツです。金額の大きいA品目に労力を集中してください。
2. 安全在庫の考え方
欠品を避けるための余裕分です。次の要素で決まります。
- 需要の変動幅
- 製造のリードタイム
- 賞味期限の長さ
- 欠品したときの影響
賞味期限の短い日配品では、安全在庫を持てません。この場合は、予測の精度と、短時間で追加生産できる体制で対応します。
3. 追加生産の余地を残す
計画を100%で組まず、追加生産できる余地を残す設計にします。
「足りなければ午後に追加で作る」という体制があれば、安全側に多く作る必要がなくなります。段取り替えの短縮が、この体制を可能にします。段取り替え時間の短縮をご覧ください。
原料の発注計画
仕込み計画は、原料の発注にも連動します。
- 原料のリードタイム
- 最低発注ロット
- 原料の賞味期限
- 保管スペース
最低ロットが大きい原料が、在庫の滞留原因になります。使い切れる量かを確認し、必要なら仕入先と相談してください。在庫回転を上げるをご覧ください。
取引先との情報共有
最も効果的な対策は、取引先から先の情報をもらうことです。
- 販促・特売の予定
- 棚割りの変更予定
- 新商品の投入・終売の予定
- 過去の販売実績
これを共有してもらえる関係を作ることが、予測精度を上げる最短経路です。「一緒に廃棄を減らしましょう」という提案は、取引先にとってもメリットがあります。
作りすぎたときの受け皿
予測が外れることは避けられません。受け皿を用意しておくことで、廃棄を減らせます。
- 冷凍できる商品は冷凍する
- 別商品の原料として使う
- 訳あり品として直売・ECで販売する
- 社員販売
- フードバンクへの提供
食品ロス削減の流れと事業への影響もご覧ください。
効果の測り方
次を月次で見てください。
- 予測と実績のずれ(率と金額)
- 廃棄額と廃棄率
- 欠品の発生件数
- 在庫回転日数
廃棄だけを減らそうとすると欠品が増えます。両方を同時に見ることが重要です。