標準原価とは

「この品目は、通常であればこれくらいの原価で作れるはず」という基準値です。

  • 配合表どおりの原材料使用量
  • 想定する歩留まり
  • 標準的な作業時間
  • 基準となる原材料単価

これに対して、実際にかかった原価が実際原価です。両者の差を分析することで、何が起きているかが分かります。

差異を3つに分解する

1. 価格差異

単価の違いによる差です。

「小麦粉の単価が想定より10円高かった」「包材の値上げがあった」。これは購買・調達の問題です。

打ち手

  • 仕入先の見直し・相見積もり
  • まとめ買いによる単価交渉
  • 代替原料の検討
  • 販売価格への転嫁

原材料の高騰は自社では止められません。転嫁が本筋です。原材料高騰と価格転嫁をご覧ください。

2. 数量差異

使った量の違いによる差です。

「配合表では100kgのはずが、実際は108kg使った」。これはロス・歩留まりの問題です。

打ち手

  • 計量の精度を上げる
  • 原料の前処理でのロスを減らす
  • 設備への残留を減らす(配管、タンク、ホッパー)
  • 不良品の発生を減らす
  • 仕込み単位を見直す

歩留まりとロスの改善ロスの分類をご覧ください。

3. 時間差異

作業時間の違いによる差です。

「標準では2時間の工程が、3時間かかった」。これは工程・段取り・設備の問題です。

打ち手

  • 段取り替え時間の短縮
  • 設備のトラブル対応
  • 作業手順の標準化
  • 教育・多能工化
  • ボトルネック工程の改善

段取り替え時間の短縮ライン稼働率の見方をご覧ください。

分解の実例

A商品の原材料費が、標準45円に対して実際52円だった場合。

要因差異原因
価格差異+4円主原料の単価上昇
数量差異+3円歩留まりが92%→88%に低下
合計+7円

この分解ができると、対応が変わります。価格差異は転嫁交渉、数量差異は工程改善。それぞれ別の打ち手が必要です。

分解しないまま「原価が上がった」とだけ認識していると、値上げ交渉に行くべきときに現場を責めるといった誤りが起こります。

標準の作り方

初回

  • 原材料:配合表 × 直近の単価
  • 歩留まり:直近3か月の実績平均
  • 作業時間:実測値の平均

理想値ではなく、実績の平均から始めてください。理想値を標準にすると、常に差異が出て意味を成しません。

見直しの頻度

  • 原材料単価:月次または価格改定のたび
  • 歩留まり・作業時間:半年〜年1回

改善が進んだら、標準も引き上げてください。標準が古いままだと、改善の効果が見えなくなります

運用のポイント

1. 金額の大きい差異から見る

すべての品目・すべての差異を追うと疲弊します。金額インパクトの大きいものから手をつけてください。

2. 現場と共有する

差異の分析結果を現場に返してください。「今月は歩留まりが2%改善して、原価が3円下がった」と伝えると、改善が続きます。

3. 責めない

差異は「原因を探すための情報」です。担当者を責めると、数字が正しく報告されなくなります

承継・M&Aでの意味

差異分析ができている会社は、「なぜ利益が変動したか」を説明できます

買い手や金融機関から「なぜ今期は利益が落ちたのか」と聞かれたとき、「原材料の価格差異が◯円。うち◯円は価格改定で回収済み」と答えられる会社は、評価が違います。

利益の安定性をどう見せるかをご覧ください。