なぜ構成が評価に効くのか

買い手が見ているのは、「引き継いだ後もこの売上が続くか」です。1社への依存度が高いと、次のリスクが生じます。

  • その1社の方針転換で、売上の大半が一度に消える
  • 価格交渉で不利な立場に置かれ続ける
  • 経営者が代わることを理由に、取引を見直される可能性がある
  • チェンジオブコントロール条項があれば、同意が取引の前提になる

特に4番目は、M&Aの成立可否そのものに関わります。取引先の同意をご覧ください。

目安となる構成比

明確な基準があるわけではありませんが、実務上は次のように見られます。

最大取引先の構成比評価への影響
20%未満分散しており、リスクは小さい
20〜40%やや高いが、許容範囲とされることが多い
40〜60%依存が高い。理由と継続性の説明が必要
60%以上評価に明確に影響。候補も絞られる

ただし、依存度が高くても評価が下がらない場合があります。次で説明します。

依存度が高くても評価されるケース

1. 取引が長期にわたり安定している

20年30年と継続し、双方に代替が効かない関係になっている場合。特に、自社しか作れない仕様で受注しているなら、切り替えは容易ではありません。

2. 契約で保護されている

最低数量の保証、長期の基本契約、専用設備への投資に関する取り決め。これらがあれば、リスクは限定されます。

3. 買い手がその取引先を望んでいる

買い手にとって、その取引先の口座を得ることが買収の目的であれば、依存度の高さは逆に価値になります。大手量販店やコンビニの口座は、新規に開くのが難しいためです。

それでも改善すべき理由

上の例外があっても、構成の改善には取り組む価値があります。理由は、依存度が高い会社は価格交渉ができないからです。

原材料が上がっても値上げを言い出せない。その結果、粗利が薄くなり、調整後利益が減る。結局は評価額に跳ね返ります価格転嫁できない会社に共通することをご覧ください。

改善の手順

手順1:現状を数字にする

取引先別の売上と粗利を、上位10社まで並べます。売上構成比と粗利構成比を分けて見ることが重要です。

売上は大きいが粗利が薄い先、売上は小さいが粗利率が高い先。これが見えると、次の一手が決まります。

手順2:粗利率の高い先を伸ばす

新規開拓より、まず既存の取引を深掘りするほうが早く効きます。粗利率の高い取引先に、扱ってもらえる品目を増やせないかを検討します。

手順3:新しい販路を1つ試す

いきなり構成を変えるのは無理です。まず1つ、性質の違う販路を試します。

  • 業務用(外食・給食)
  • 小売(量販店のPB以外の棚)
  • 直販・EC
  • 地域の小売店・道の駅
  • 他地域の卸

販路ごとの粗利と手間の違いは直販・EC・卸の粗利を比べるで扱っています。

手順4:自社ブランドを持つ

時間はかかりますが、最も効果の大きい打ち手です。PB・OEM中心の会社が自社ブランドを持つと、粗利率も交渉力も変わります。自社ブランドの評価PB・OEM依存からの脱却をご覧ください。

どれくらい時間がかかるか

正直なところ、構成比を大きく変えるには3〜5年かかります。1年では、粗利率の改善や新規販路の試行までが現実的な範囲です。

だからこそ、承継やM&Aを考え始めた早い段階で着手する価値があります。売る前の1年でできる企業価値の上げ方で優先順位を整理しています。

説明で補える部分もある

構成を変えられない場合でも、依存の理由と継続性を説明できるだけで印象は変わります。

  • 取引年数と、その間の受注の推移
  • 自社が担っている役割(他社では代替が難しい理由)
  • 契約上の保護
  • 担当者との関係の深さ
  • 過去の価格改定の実績

資料として整理しておいてください。