取引の適正化に向けた動き
原材料やエネルギーの価格上昇を、取引価格に適切に反映させるための取り組みが進められています。
- 価格協議に応じることの重要性
- コスト上昇分の転嫁に関する考え方
- 取引条件の書面化
協議を申し入れること自体は、正当な行為です。この前提を、まず自社の中で共有してください。
下請取引に関する留意点
製造委託を受けている場合、下請取引に関する法令の対象となることがあります。
この場合、委託者側には次のような義務・禁止事項があります。
- 取引条件を記載した書面の交付
- 支払期日の設定
- 買いたたきの禁止
- 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止
- 不当な減額の禁止
「買いたたき」には、コスト上昇分を考慮せずに価格を据え置くことが含まれうるとされています。協議を求める根拠になります。
適用の有無は当事者の資本金や取引の内容によって決まります。自社が対象になるかは、専門家にご確認ください。
整えるべき取引条件
1. 書面化
口約束の取引は、条件が曖昧になります。基本契約書と、個別の取引条件を書面にしてください。
含めるべき内容は次のとおりです。
- 単価と、その決定方法
- 数量(最低・最大)
- 納期、納品場所、荷姿
- 検収の方法と期間
- 支払条件(締め日、支払日、支払方法)
- 返品の条件
- 不良品の扱いと責任分担
- 価格改定の協議に関する規定
契約書の棚卸しをご覧ください。
2. 価格協議の規定
最も重要な項目です。次のような規定を入れられないか検討してください。
- 「主要原材料の価格が◯%以上変動した場合、いずれかの申し出により価格を協議する」
- 「年◯回、取引価格の見直しについて協議する機会を設ける」
- 「エネルギー費、労務費の変動についても協議の対象とする」
この規定があるかないかで、交渉の入りやすさが全く違います。
3. 数量と条件
価格以外の条件も、原価に影響します。
- 最低ロット:小さすぎると段取りの負担が重い
- 納品頻度:多いと物流費が増える
- リードタイム:短いと在庫を持つ必要がある
- 返品の条件:無条件返品は実質的な値引き
- センターフィー・協賛金:実質的な粗利を下げる
価格が上げられない場合、これらの条件改善で採算を改善するという交渉もあります。物流費の見直しをご覧ください。
相談窓口
取引上の問題について、公的な相談窓口が設けられています。
- 中小企業庁や公正取引委員会の相談窓口
- 下請かけこみ寺のような相談機関
- 業界団体の相談窓口
相談したことが相手に知られることを心配される方が多いのですが、匿名での情報提供や、相談者を特定しない形での対応が用意されている場合があります。
自社が委託する側の場合
食品工場も、原料の加工や包装を外注していることがあります。この場合、自社が委託者としての立場になります。
次を確認してください。
- 発注時に書面を交付しているか
- 支払期日が適切か
- コスト上昇分の協議に応じているか
- 不当な減額や返品をしていないか
承継やM&Aの法務デューデリジェンスで確認されることがあります。法務デューデリジェンスをご覧ください。
環境を整える順序
- 主要な取引先との契約書の有無を確認する
- 契約書がない先について、書面化を進める
- 更新の機会に、価格協議の規定を入れる
- 価格以外の取引条件(ロット、頻度、返品)を整理する
- 自社が委託する側の取引も点検する
3番目は、値上げ交渉とは切り離して進めるのがコツです。「取引条件を明確にしたい」という趣旨で提案すれば、受け入れられやすくなります。
承継のタイミングを使う
代替わりは、契約書を巻き直す自然な機会です。「代表者が変わりましたので、契約書を新しくさせてください」という形で進められます。
この機会に、価格協議の規定を入れておくと、後継者の交渉環境が大きく改善します。取引先との関係を切らさない引き継ぎをご覧ください。
※ 下請取引に関する法令の適用範囲や、取引条件に関する判断は個別の事情によって異なります。実務にあたっては弁護士等の専門家および公的な相談窓口にご確認ください。