なぜ食品工場で労務が問題になるのか

次の要素が重なるためです。

  • シフト勤務:早朝・深夜の作業がある
  • 繁閑差:季節や曜日で作業量が大きく変わる
  • パート比率が高い:社会保険の適用判定が発生する
  • 準備作業がある:着替え、手洗い、清掃
  • 外国人材:在留資格に応じた管理が必要

いずれも他業種にもありますが、食品工場では全部そろうことが多く、論点が増えます。

1. 労働時間の把握

すべての出発点です。客観的な方法で記録されているかが問われます。

  • タイムカードやシステムで記録しているか
  • 記録と実態がずれていないか
  • 着替えや清掃の時間が含まれているか
  • 残業の申請・承認が形骸化していないか

着替え・手洗い・清掃の扱いは食品工場に固有の最重要論点です。着替え・手洗い・清掃の時間はどう扱うか労働時間の把握をご覧ください。

2. 変形労働時間制

繁閑差のある食品工場では、多くが採用しています。ただし要件を満たしていない運用が見られます。

  • 労使協定・就業規則の定めが不足している
  • 各日の労働時間を事前に特定していない
  • 後からシフトを変更している
  • 協定の届出をしていない

要件を満たさない場合、通常の労働時間制として計算し直すことになり、割増賃金の未払いが生じます変形労働時間制の点検をご覧ください。

3. 割増賃金

  • 算定基礎に含めるべき手当が除外されていないか
  • 深夜と休日が重なる場合の計算
  • 固定残業代が有効に機能しているか
  • 月60時間超の割増率

割増賃金の計算固定残業代の設計と落とし穴をご覧ください。

4. 36協定と上限規制

時間外・休日労働をさせるには36協定が必要です。繁忙期のある食品工場では、特別条項の設計が要点になります。

上限規制の遵守状況も確認されます。36協定の点検をご覧ください。

5. 社会保険

パート・アルバイトの加入基準は改正されてきています。以前の判断のままになっていないか確認してください。

遡っての加入が必要になると、会社負担分が一時に発生します。社会保険の適用をご覧ください。

6. 年次有給休暇

年5日の取得が求められます。シフト制の工場では、計画的な付与の設計が必要です。年5日の年次有給休暇をご覧ください。

7. 書類の整備

  • 就業規則(作成・届出・周知)
  • 賃金規程、退職金規程
  • 労働条件通知書・雇用契約書
  • 36協定、変形労働時間制の協定
  • 従業員名簿、賃金台帳、出勤簿

買収監査では、これらが揃っているかがまず確認されます就業規則の見直し雇用契約書と労働条件通知書の整備をご覧ください。

8. 安全衛生

食品工場では、機械への挟まれ・巻き込まれ、転倒、熱中症、低温環境での作業が典型的なリスクです。労働安全衛生機械の挟まれ・巻き込まれをご覧ください。

9. 外国人材

在留資格と実際の業務が一致しているか、労働条件が日本人と同等か。是正が難しく、指摘されると取引の前提条件になることがあります。外国人従業員の労務管理をご覧ください。

承継・M&Aでどう扱われるか

労務デューデリジェンスで問題が見つかった場合、次のいずれかになります。

  1. 価格から差し引かれる
  2. クロージングまでの解消が条件になる
  3. 補償条項でカバーする

先に開示していれば、交渉の前提になります。備え方は労務デューデリに備えるにまとめました。

何から手をつけるか

  1. タイムカードと実際の作業開始時刻を突き合わせる(着替えの扱い)
  2. 変形労働時間制の協定と、実際のシフトを照合する
  3. パートの労働時間と社会保険の加入状況を照合する
  4. 就業規則が最新の法令に対応しているか確認する

1と2で問題が見つかることが最も多く、金額も大きくなります。ここから始めてください。

※ 労働関係法令の具体的な取扱いは、改正や個別の事情によって異なります。実行にあたっては、管轄の労働基準監督署および社会保険労務士等の専門家にご確認ください。