把握が求められる理由

労働時間の把握は、賃金を正しく支払うためだけでなく、健康を確保するためにも求められています。

原則として、タイムカード、ICカード、パソコンの使用記録など、客観的な方法で記録することとされています。

食品工場でずれが生じる場面

1. 打刻位置と作業場所が離れている

タイムカードが事務所にあり、そこから更衣室、手洗い、製造区域へ移動する。この間の時間が記録から漏れます

最も影響の大きい問題です。着替え・手洗い・清掃の時間はどう扱うかをご覧ください。

2. 終業後の作業

打刻してから片付け、清掃、翌日の準備を行う。この時間も労働時間になりえます

3. 残業の申請制が形骸化

「残業は事前申請」というルールがあるが、実際には申請せずに残っている。会社が黙認していれば、労働時間と判断されえます

ルールを作るだけでなく、実際に退勤しているかを確認する運用が必要です。

4. 自己申告制の運用

タイムカードがなく、本人の申告に頼っている。実態とずれやすく、客観的な記録として不十分とされる可能性があります。

やむを得ず自己申告制を採る場合は、実態調査や、他の記録との照合が求められます。

5. 早出の常態化

始業時刻より早く来て準備を始める。本人の判断であっても、その作業が必要で会社が認識していれば労働時間になりえます。

6. 持ち帰り作業

事務・管理部門で、自宅での書類作成や記録の整理。把握が困難ですが、実態があれば問題になります

仕組みの作り方

1. 打刻位置を見直す

最も効果的な対策です。更衣室の入口に打刻機を設置すれば、着替えの時間が自動的に含まれます。

費用はかかりますが、以後の未払いが構造的に発生しなくなります

2. 記録と実態を照合する

定期的に、次を突き合わせてください。

  • タイムカードの記録
  • 入退室のログ(あれば)
  • 生産記録の開始・終了時刻
  • パソコンのログ(事務部門)
  • 実際の作業開始時刻(現場を見る)

生産記録との照合が有効です。製造開始時刻がタイムカードより前なら、明らかにずれています。

3. 残業の管理を実効的にする

  • 申請なしの残業を放置しない
  • 一定時刻に消灯・施錠する
  • 長時間労働者に個別に声をかける
  • 月次で時間外労働の実績を本人に通知する

4. システムを導入する

ICカードやスマートフォンによる打刻、シフトとの連動、時間外労働の自動集計。手作業の集計をやめると、精度が上がり、担当者の負担も減ります

選び方は勤怠システムの入れ替えをご覧ください。

記録すべき事項

  • 始業・終業の時刻
  • 休憩時間
  • 時間外労働、休日労働、深夜労働の時間
  • 年次有給休暇の取得

これらは賃金台帳の記載事項でもあり、一定期間の保存が必要です。

点検の手順

  1. 打刻機の設置場所を確認する
  2. 打刻から作業開始までの動線と時間を実測する
  3. 終業時も同様に実測する
  4. タイムカードと生産記録を数日分照合する
  5. 残業申請の運用実態を確認する
  6. ずれがあれば、原因ごとに対策を決める

2〜4は、実際にやってみないと分かりません。書類上の点検だけでは不十分です。

承継時に確認される点

  • 客観的な方法で記録されているか
  • 記録と実態が一致しているか
  • 着替え・清掃の時間の扱い
  • 残業の管理が形骸化していないか
  • 賃金台帳・出勤簿が保存されているか

労務デューデリジェンスでは、勤怠記録と賃金台帳の突合が必ず行われます。ずれがあれば、未払い額が算定されます。労務デューデリに備える未払い残業が見つかったときの対応をご覧ください。

※ 労働関係法令の具体的な取扱いは、改正や個別の事情によって異なります。実行にあたっては、管轄の労働基準監督署および社会保険労務士等の専門家にご確認ください。