食品工場で多い労災

1. 転倒

最も多い類型です。原因は次のとおりです。

  • 床が水や油で濡れている
  • 洗浄後の乾燥が不十分
  • ホースやコードが通路にある
  • 冷凍庫周辺の結露・凍結
  • 照明が暗い

対策は地味ですが効果があります。滑りにくい床材への変更、排水の改善、耐滑性のある靴の支給、清掃手順の見直し。

2. 挟まれ・巻き込まれ

コンベア、ミキサー、包装機、シール機。重篤な災害につながりやすい類型です。機械の挟まれ・巻き込まれをどう防ぐかで詳しく扱っています。

3. 切れ・こすれ

包丁、スライサー、カッター、缶の縁。日常的な作業の中で発生します。

  • 刃物の保管方法
  • 防刃手袋の使用
  • 清掃時の刃物の扱い

4. 高温・低温

加熱釜、フライヤー、蒸気配管による熱傷。冷凍庫内作業による低温障害。熱中症と低温作業をご覧ください。

5. 動作の反動・無理な動作

重量物の運搬による腰痛。食品工場では、原料袋や製品ケースの運搬が該当します。

6. 墜落・転落

脚立での高所作業、タンクの上部での作業、トラックの荷台からの転落。

選任が必要な担当者

事業場の規模に応じて、次の選任が求められます。

  • 安全管理者・衛生管理者
  • 安全衛生推進者・衛生推進者
  • 産業医
  • 作業主任者(特定の作業について)

必要な選任の種類と要件は、業種と規模によって異なります。自社が該当するかを労働基準監督署に確認してください。

食品工場では、ボイラー、危険物、有機溶剤などに関する資格者の選任が必要になることがあります。

安全衛生委員会

一定規模以上の事業場では、委員会の設置と定期的な開催が求められます。

形だけの開催になっていないかを確認してください。議事録を残し、現場の意見が反映される運用が必要です。

健康診断

  • 雇入れ時の健康診断
  • 定期健康診断
  • 特定業務従事者の健康診断(深夜業など)

食品工場では深夜業に従事する労働者がいることが多く、実施の頻度が異なる場合があります。

また、食品を扱う従業員については、検便などの検査を行っている工場が多くあります。これは衛生管理の観点からの取り組みです。

教育

  • 雇入れ時の安全衛生教育
  • 作業内容を変更したときの教育
  • 特別教育(特定の危険作業について)

食品工場は人の入れ替わりが多く、教育の記録が抜けやすい領域です。入社時のチェックリストに組み込んでください。

外国人従業員には、理解できる方法での教育が必要です。多国籍な現場のコミュニケーション設計をご覧ください。

リスクアセスメント

作業に潜む危険を洗い出し、리스크の大きさを評価して対策の優先順位を決める取り組みです。

進め方

  1. 工程ごとに危険な作業を洗い出す
  2. 発生の可能性と重篤度で評価する
  3. 優先順位を付ける
  4. 対策を決める(設備の改善 → 作業手順 → 保護具の順で検討)
  5. 実施と効果の確認

4番目の順序が重要です。保護具に頼る対策は最後の手段で、まず設備側で危険をなくすことを検討してください。

ヒヤリハットの収集

労災に至らなかった「危なかった」事例を集めます。実際の災害の何倍もの数があり、対策の材料になります

集めるコツは、報告した人を責めないことです。報告が評価される仕組みにしてください。

労災が発生したときの対応

  1. 負傷者の救護
  2. 災害の拡大防止
  3. 労働基準監督署への報告(一定の場合)
  4. 原因の調査
  5. 再発防止策の実施
  6. 労災保険の給付手続き

労災を隠すことは重大な問題です。健康保険で処理する、報告しない、といった対応は絶対に避けてください。

承継時に確認される点

  • 過去の労災の発生状況(件数、内容、休業日数)
  • 必要な選任がなされているか
  • 健康診断が実施され、記録が残っているか
  • 安全衛生教育の記録があるか
  • リスクアセスメントの実施状況
  • 労災隠しがなかったか

労災の多い工場は、設備の老朽化や管理体制の問題を疑われます。買い手にとっては、引き継いだ後のリスクです。労務デューデリに備えるをご覧ください。

※ 安全衛生管理者等の選任要件や教育の内容は、事業場の規模・業種によって異なります。実務にあたっては、管轄の労働基準監督署および専門家にご確認ください。