年5日の取得義務

年次有給休暇が一定日数以上付与される労働者に対して、使用者は年5日について時季を指定して取得させることが求められています。

本人が自ら取得した日数や、計画的付与によって取得した日数は、この5日から差し引かれます。

パート・アルバイトでも、勤務日数に応じて付与される有給休暇が一定日数以上であれば対象となります。「パートだから関係ない」ということはありません

食品工場で難しい理由

  • ラインを回すのに最低人数が必要で、抜けられない
  • 特定の工程は特定の人しかできない(属人化)
  • 繁忙期は全員出勤が前提になっている
  • 「休むと迷惑がかかる」という雰囲気がある
  • パートが多く、そもそも有給の制度を知らない

2番目が根本的な問題です。属人化が解消されないと、休める体制になりません。多能工化とスキルマップをご覧ください。

方法1:計画的付与

労使協定を締結することで、有給休暇の一定日数について、会社が計画的に取得日を定めることができます(本人が自由に使える分は残す必要があります)。

食品工場での使い方

  • 一斉付与:工場全体を休みにする日を作る(お盆、年末年始、設備の定期メンテナンス日)
  • 班別付与:ライン・班ごとに交代で休む
  • 個人別付与:計画表を作って個人ごとに割り当てる

閑散期がはっきりしている工場では、一斉付与が最も確実です。生産計画と合わせて設計してください。

方法2:時季指定

取得日数が5日に満たない従業員に対して、会社が時季を指定して取得させる方法です。

運用のポイント

  • 本人の意見を聴取する
  • できるだけ希望に沿うようにする
  • いつ指定したかを記録に残す

期末にまとめて指定すると、現場が回らなくなります。年度の前半から進捗を管理してください。

進捗管理の仕組み

次の表を作り、月次で更新してください。

従業員基準日付与日数取得済残り必要日数
◯◯4/112日2日3日

基準日が人によって異なることが管理を難しくします。全社で基準日を統一する方法もありますが、付与のタイミングに配慮が必要です。社会保険労務士に相談してください。

年次有給休暇管理簿

労働者ごとに、取得の時季・日数・基準日を記録した管理簿を作成し、一定期間保存することが求められています。

これがないと、そもそも義務を果たしているか証明できません。買収監査でも確認されます。

取れる体制を作る

制度の設計だけでは、実際には取れません。次の取り組みが必要です。

1. 多能工化

「この人しかできない」工程をなくす。最も効果的な対策です。スキルマップを作り、1つの工程を2人以上ができる状態を目指してください。

2. 生産計画との連動

閑散期を把握し、その時期に休暇を集中させる。生産計画と休暇計画を同じ表で管理すると、無理が見えます。

3. 応援体制

他のラインや部署から応援に入れる体制。日頃から交流があると、いざというとき動けます。

4. 雰囲気を変える

管理職が率先して取る。「休むのは権利」と明言する。経営者の姿勢が最も影響します

取得率が上がることの効果

  • 定着率が上がる(辞める理由の上位に「休めない」があります)
  • 採用の訴求力になる
  • 属人化の解消が進む
  • 労務リスクがなくなる

定着率を上げる食品工場の採用戦略をご覧ください。

承継時に確認される点

  • 年次有給休暇管理簿が作成・保存されているか
  • 対象者全員が5日を取得しているか
  • 計画的付与を行っている場合、労使協定があるか
  • パート・アルバイトも対象に含めているか

未達成の場合、是正が求められます。また、有給休暇の残日数は退職時の買い取り等の論点にもつながるため、買い手は残日数の総量も確認します。労務デューデリに備えるをご覧ください。

※ 労働関係法令の具体的な取扱いは、改正や個別の事情によって異なります。実行にあたっては、管轄の労働基準監督署および社会保険労務士等の専門家にご確認ください。