労働条件の明示義務

労働者を雇い入れる際、使用者は労働条件を明示する義務があります。一定の事項については、書面(または本人が希望した場合の電子的方法)で明示する必要があります。

明示すべき事項は改正されることがあります。最新の内容は厚生労働省の情報または社会保険労務士にご確認ください。

書面で明示すべき主な事項

  • 契約期間(期間の定めの有無、更新の基準)
  • 就業の場所と従事すべき業務
  • 始業・終業の時刻、所定時間外労働の有無
  • 休憩時間、休日、休暇
  • 交替制勤務の場合の就業時転換に関する事項
  • 賃金の決定・計算・支払方法、締切日・支払日
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

このほか、制度がある場合に明示が必要な事項(退職手当、賞与、安全衛生、教育訓練など)があります。

食品工場での記載のポイント

1. 就業の場所と業務の範囲

複数の工場がある場合、異動の可能性を含めて記載します。将来の変更の範囲についても明示が求められることがあります。

業務の内容も、実態に合った記載にしてください。「製造」だけでは範囲が不明確です。

2. 交替制・シフト制の記載

食品工場では、早番・遅番・夜勤といった勤務パターンがあります。就業時転換に関する事項として、シフトのパターンと決定方法を記載してください。

「シフトによる」だけでは不十分です。勤務パターンの種類と、いつまでに通知するかを明示してください。

3. 変形労働時間制の記載

採用している場合、その旨と対象期間を記載します。変形労働時間制の点検をご覧ください。

4. 固定残業代の記載

固定残業代を支給する場合、金額、相当する時間数、超過分を支払う旨を明記してください。記載がないと、制度が有効に機能しない可能性があります。固定残業代の設計と落とし穴をご覧ください。

5. 有期契約の更新基準

期間の定めがある場合、更新の有無と判断の基準を明示します。「更新する場合がある」だけでなく、何をもって判断するかを記載してください。

契約書がない場合の対応

長年働いている従業員について、契約書が存在しないことがあります。

手順

  1. 全従業員の一覧を作り、契約書の有無を確認する
  2. 現在の労働条件を整理する(賃金、勤務時間、休日)
  3. 労働条件通知書または雇用契約書を作成する
  4. 本人に説明し、署名を得る
  5. 控えを保管する

注意点:この機会に労働条件を変更しないでください。不利益変更にあたる可能性があります。あくまで現状を書面化する作業です。

条件を変える必要がある場合は、別途、適切な手続きを踏んでください。

パート・有期契約での追加事項

短時間労働者・有期雇用労働者については、次の事項についても文書等での明示が求められます。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 相談窓口

「なし」であっても明示が必要です。記載を省略しないでください。

待遇差の説明についてはパート・有期労働者の待遇差をどう説明するかをご覧ください。

外国人従業員の場合

労働条件を本人が理解できる方法で説明することが重要です。母国語や、やさしい日本語での説明資料を用意してください。

また、在留資格で認められた活動の範囲内であることを確認する必要があります。外国人従業員の労務管理をご覧ください。

就業規則との関係

個別の契約書と就業規則の内容が矛盾していると、トラブルの原因になります。両方を整合させてください

また、就業規則で定めた基準に達しない労働条件は無効となり、就業規則の基準が適用されます。就業規則の見直しをご覧ください。

承継時に確認される点

  • 全従業員について書面が存在するか
  • 記載内容が現在の実態と一致しているか
  • 法令で求められる事項が漏れなく記載されているか
  • パート・有期契約の追加事項が記載されているか
  • 本人の署名または受領の記録があるか

買収監査では、まず書類の有無が確認されます。揃っていないと、それだけで管理体制への評価が下がります。

整備には時間がかかるため、承継を考え始めた時点で着手してください。労務デューデリに備えるをご覧ください。

※ 労働条件の明示事項は法令の改正によって変わります。書式の作成にあたっては、必ず社会保険労務士等の専門家にご確認ください。