なぜ食品工場で問題になるのか
- パート・アルバイトの比率が高い
- 繁閑によって勤務時間が変動する
- シフトによって実労働時間が契約と異なることがある
- 加入基準が改正されてきており、以前の判断のままになりやすい
特に4番目が重要です。「うちは短時間だから対象外」という判断が、現在では当てはまらないことがあります。
加入の考え方
健康保険・厚生年金保険の被保険者となるかは、労働時間・労働日数、賃金、勤務期間、企業規模などの要素で判定されます。
大きく分けて、次の2つの経路があります。
- 通常の労働者と比べた労働時間・日数による判定
- 短時間労働者に関する適用拡大の基準による判定(企業規模等の要件を含む)
適用拡大の対象となる企業規模は段階的に引き下げられてきています。自社が対象になっているかを、必ず最新の基準で確認してください。
実務でつまずく場面
1. 契約と実態が違う
契約上は週20時間未満だが、実際には繁忙期に週30時間働いている。実態で判定されるため、加入が必要になることがあります。
食品工場では、シフトの都合で契約より多く働くことが日常的に起こります。定期的な実態の確認が必要です。
2. 企業規模の変化を把握していない
従業員数が増えて適用拡大の対象になったのに、判定を見直していない。規模の要件は改正されてきています。
3. 複数の事業所で働いている
同一企業の複数の工場で働いている場合、合算して判定されることがあります。
4. 学生・高齢者の扱い
学生には除外の扱いがある場合がありますが、すべての学生が除外されるわけではありません。また、高齢者についても年齢による扱いの違いがあります。
5. 雇用保険との混同
雇用保険と社会保険(健康保険・厚生年金)では、加入の基準が異なります。それぞれ別に判定する必要があります。
遡って加入が必要になった場合
年金事務所の調査などで指摘されると、遡って加入し、保険料を納付することになる場合があります。
影響
- 会社負担分が一時に発生する
- 本人負担分の徴収が困難な場合、会社が負担することになりうる
- すでに退職した人の分も対象になりうる
従業員数が多いほど、金額は大きくなります。M&Aでは簿外債務として扱われ、価格から差し引かれます。簿外債務が見つかったときどうなるかをご覧ください。
点検の手順
- 全従業員の一覧を作る(雇用形態、契約上の労働時間・日数)
- 直近12か月の実際の労働時間・日数を集計する
- 契約と実態のずれがある人を抜き出す
- 賃金額を確認する
- 自社の企業規模を確認する
- 現在の加入状況と照合する
- ずれがあれば、年金事務所または社会保険労務士に確認する
2番目の「実際の」時間を見ることが重要です。契約書だけを見ても分かりません。
加入を避けるための調整は慎重に
加入基準を下回るように労働時間を調整することは、合理的な範囲であれば経営判断です。ただし、次の点に注意してください。
- 一方的な労働時間の削減は、労働条件の不利益変更にあたる可能性がある
- 本人の意向を確認せずに行うと、トラブルになる
- 実態として基準を超えているのに、記録上だけ調整するのは問題
実態と記録を一致させることが大前提です。
加入させることのメリット
コスト増は事実ですが、次の面もあります。
- 採用の際の訴求力になる
- 定着率の向上につながる
- 「社会保険完備」は求職者が重視する条件
- 労務リスクがなくなる
食品工場の人材確保は年々厳しくなっています。コストとしてだけでなく、採用の投資として捉える視点も有効です。食品工場の採用戦略と定着率を上げるをご覧ください。
承継時に確認される点
- パート・アルバイトの加入判定が適切か
- 契約と実態が一致しているか
- 企業規模の要件を踏まえた判定になっているか
- 過去に年金事務所の調査を受けたか、その結果
未加入が判明すると、遡及分が算定されて価格に反映されます。先に点検して、必要なら是正しておくことをおすすめします。労務デューデリに備えるをご覧ください。
※ 社会保険の適用基準は法令の改正によって変わります。判定にあたっては、必ず年金事務所または社会保険労務士にご確認ください。