就業規則の基本
常時一定数以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が必要です。変更した場合も届出が必要になります。
また、労働者に周知していなければ効力が生じないとされています。作って金庫にしまっているだけでは意味がありません。
まず確認すること
- 現在の就業規則の原本があるか
- 最後に改訂したのはいつか
- 届出の受付印がある控えがあるか
- 従業員が閲覧できる状態になっているか
- 複数の事業場がある場合、それぞれで届出しているか
「10年以上前の版しかない」という会社は珍しくありません。その間に法令は何度も改正されています。
見直すべき条項
1. 労働時間・休憩・休日
- 変形労働時間制の定めが実態と合っているか
- シフト制の勤務パターンが明記されているか
- 法定休日が特定されているか
- 休憩の付与方法(一斉付与の例外を含む)
食品工場では、ラインを止められないため休憩を交替で取ることがあります。一斉付与の原則の例外にあたるため、労使協定が必要になる場合があります。
2. 賃金・手当
- 各手当の定義と支給要件が明確か
- 固定残業代の定めが要件を満たしているか
- 割増賃金の算定基礎が明記されているか
- 最低賃金の改定に対応しているか
手当の定義が曖昧だと、割増賃金の算定基礎から除外できるかの判断で不利になります。割増賃金の計算をご覧ください。
3. 年次有給休暇
- 年5日の時季指定に関する定め
- 計画的付与を行う場合の根拠
- パート・有期契約者への付与
年5日の年次有給休暇をご覧ください。
4. 休職・復職
休職期間、復職の判断方法、休職期間満了時の扱い。定めがないと、実際に発生したときに判断できません。
5. 退職・解雇
- 退職の申し出の期限
- 定年と再雇用
- 解雇事由の列挙
解雇事由は具体的に列挙する必要があります。定年後の再雇用については高齢従業員の活かし方もご覧ください。
6. 服務規律
食品工場では、次のような固有の規律が必要です。
- 衛生管理に関する遵守事項(作業着、手洗い、健康報告)
- 体調不良時の報告義務
- 私物の持ち込み制限
- 製造情報・レシピの秘密保持
- SNSへの投稿に関する定め
秘密保持の定めは、レシピを守るうえで重要です。レシピ・製法の権利をどう守るかをご覧ください。
7. ハラスメント
防止のための方針、相談窓口、対応の手続き。措置が求められています。ハラスメント対応の体制づくりをご覧ください。
8. 育児・介護休業
制度は改正が続いています。最新の法令に対応しているかを確認してください。
パート用の規則
正社員とパートで労働条件が異なる場合、パート用の就業規則を別に作るのが実務的です。
本則に「パートについては別に定める」と書いておきながら、その別規程が存在しない、というケースがあります。この場合、本則がパートにも適用されると解釈される可能性があります。
変更の手続き
- 変更案を作成する
- 労働者の過半数代表者の意見を聴く
- 意見書を添えて労働基準監督署に届け出る
- 労働者に周知する
労働条件を不利益に変更する場合は、慎重な検討が必要です。原則として労働者の合意が必要とされ、合意がない場合は変更の合理性が問われます。必ず社会保険労務士・弁護士に相談してください。
周知の方法
- 作業場の見やすい場所に掲示または備え付ける
- 書面を交付する
- 電子的な方法で常時確認できるようにする
「事務所の棚にある」だけでは不十分とされる可能性があります。実際に見られる状態にしてください。
承継時の扱い
M&A後、買い手側と労働条件を統合する場面で、就業規則の内容が論点になります。整備されていれば、統合の議論がしやすくなります。
逆に、規則が古い、実態と合っていない、周知していない、という状態だと、買い手はリスクとして評価します。M&A後の労働条件をどう揃えるかをご覧ください。
※ 就業規則の内容や変更の手続は、法令の改正や個別の事情によって異なります。作成・変更にあたっては、必ず社会保険労務士等の専門家にご相談ください。