3つの割増

種類対象
時間外法定労働時間を超える労働
深夜深夜の時間帯の労働
休日法定休日の労働

それぞれ最低の割増率が法令で定められています。率は改正されることがあるため、最新の内容をご確認ください

重なる場合の考え方

食品工場では、次の組み合わせが日常的に発生します。

  • 時間外 + 深夜:残業が深夜に及んだ場合。それぞれの割増を加算する
  • 休日 + 深夜:法定休日に深夜まで働いた場合。それぞれの割増を加算する
  • 休日 + 時間外:法定休日労働には時間外の割増を重ねない扱いとされています

3番目が誤りやすい点です。法定休日と法定外休日(所定休日)の区別も重要になります。

法定休日と所定休日の区別

週休2日制の工場で、土日の両方に出勤した場合。どちらが法定休日かによって割増率が変わります。

就業規則で法定休日を特定していない場合、扱いが不明確になります。「日曜日を法定休日とする」といった定めを置くことをおすすめします。

算定基礎に含める手当

割増賃金は、通常の労働時間の賃金をもとに計算します。どの手当を含めるかが実務上の論点です。

除外できるとされているもの

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

これらは限定的に列挙されたものとされています。名称ではなく実質で判断されます。

食品工場でよくある誤り

  • 「家族手当」だが、実際は全員一律:扶養の有無に関わらず支給していると、除外できない可能性があります
  • 「住宅手当」だが、実際は定額:住宅の費用に応じて算定していないと、除外できない可能性があります
  • 資格手当、精皆勤手当、役職手当:原則として算定基礎に含めます
  • 作業手当、危険手当:原則として算定基礎に含めます

食品工場では、冷凍庫内作業手当、早朝手当、衛生手当といった独自の手当があることがあります。これらは通常、算定基礎に含めます。

時給者・日給者の計算

パート比率の高い食品工場では、時給者の計算も確認が必要です。

  • 時給者:その時給が基礎
  • 日給者:日給を1日の所定労働時間で除した額
  • 月給者:月給を1か月平均所定労働時間で除した額

月平均所定労働時間の計算が誤っていると、すべての割増賃金がずれます。年間の所定労働日数と1日の所定労働時間から計算し、年に一度は見直してください

端数処理

労働時間や賃金の端数処理には、一定のルールがあります。

「15分未満は切り捨て」という運用は、原則として認められません。日ごとの切り捨ては、その分が未払いになります。

1か月の合計時間について、一定の端数処理が認められる場合がありますが、常に労働者に不利にならない扱いである必要があります。

月60時間超の扱い

1か月の時間外労働が一定時間を超えた部分については、より高い割増率が適用されます。

繁忙期に時間外労働が集中する食品工場では、この適用があるかを確認してください。給与計算システムが対応しているかも確認が必要です。

点検の手順

  1. 賃金規程で、各手当の性質を確認する
  2. 実際の支給実態と、規程の内容が一致しているか確認する
  3. 算定基礎の計算式を確認する
  4. 月平均所定労働時間が正しいか検算する
  5. 深夜・休日が重なるケースの計算を確認する
  6. 端数処理の方法を確認する
  7. 実際の給与明細で、数名分を手計算して照合する

7番目が最も確実です。システムの設定ミスは、手計算しないと見つかりません。

承継時の扱い

計算方法の誤りは、全従業員・全期間に及びます。金額が大きくなりやすく、労務デューデリジェンスで重点的に確認されます。

誤りが見つかった場合の対応は未払い残業が見つかったときの対応を、備え方は労務デューデリに備えるをご覧ください。

※ 割増率や算定基礎の判断は、法令の改正や個別の事情によって異なります。実務にあたっては社会保険労務士等の専門家にご確認ください。