まず前提を整理する
リスケジュール(返済条件の変更)中であることは、事業承継の障害にはなりますが、不可能にするものではありません。
実際に検討できる選択肢は次のとおりです。
- 親族内・社内承継(金融機関の理解が必要)
- 第三者への譲渡(M&A)
- 事業の一部譲渡
- 廃業
選択肢が減ることは事実ですが、ゼロではありません。
親族内・社内承継の場合
難しくなる理由
- 後継者が個人保証を引き受けることへの抵抗が強くなる
- 金融機関が代表者の交代に慎重になる
- 新たな借入が難しく、株式の買い取り資金を用意しにくい
- 後継者が「借金を継ぐ」という印象を持つ
進め方
- 金融機関に承継の方針を早期に伝える
- 経営改善計画を作り、返済の見通しを示す
- 後継者を面談に同席させ、経営を担える人物であることを示す
- 保証の扱いについて協議する
2番目が要です。リスケ中は、改善計画が金融機関との共通言語になります。品目別の採算、価格改定の実績、コスト削減の成果を数字で示してください。利益計画の立て方をご覧ください。
むしろ、「後継者に代わって改善する」という計画は、金融機関にとって前向きな材料になりえます。
M&Aの場合
成立するのか
成立することはあります。買い手が見るのは、借入の状況だけではありません。
- 営業許可を得た稼働中の施設
- 生産能力と余力
- 取引先と販路
- 製造できる人材
- 立地
これらに価値があれば、買い手は現れます。赤字でも売れるのかをご覧ください。
スキームの選択
借入が重い場合、株式譲渡では買い手が債務も引き継ぐことになり、成立しにくくなります。
そのため、次のような形が検討されます。
- 事業譲渡:買い手は事業だけを取得し、債務は引き継がない。売り手の会社に対価が入り、それを返済に充てる
- 一部事業の譲渡:採算の良い部門だけを譲る
- 会社分割:事業を切り分けて譲渡する
ただし、事業譲渡では営業許可を取り直す必要があります。手続きの時間を織り込んでください。事業譲渡のときの営業許可と株式譲渡と事業譲渡はどちらを選ぶかをご覧ください。
金融機関の同意が必要
担保が設定されている資産を譲渡する場合、金融機関の同意が不可欠です。譲渡代金がどう返済に充てられるかを含めて、事前に協議します。
金融機関にとっても、廃業されるより譲渡されたほうが回収額が大きいことが多いため、協力が得られる場合があります。
公的な支援
経営改善や再生を支援する公的な仕組みがあります。専門家の派遣、計画策定の支援、金融機関との調整などを行うものです。
制度の名称や内容は変わることがあるため、取引金融機関、商工会議所、事業承継・引継ぎ支援センターに相談してください。事業承継・引継ぎ支援センターの使い方をご覧ください。
やるべきことの順序
- 現状を数字で正確に把握する(借入残高、返済条件、月次の資金繰り)
- 品目別の採算を出す(どこで損をしているかを特定する)
- 改善の打ち手を実行する(価格改定、不採算品目の見直し、在庫圧縮)
- 改善計画を作り、金融機関と共有する
- そのうえで、承継の選択肢を並べる
3番目を飛ばして承継の話に入っても、選択肢は広がりません。まず収益を改善することが、すべての選択肢を広げます。原材料高騰と価格転嫁と歩留まりとロスの改善をご覧ください。
時間が最大の制約
リスケが長期化すると、設備が更新できず、人が辞め、取引先が離れます。会社の価値は下がり続けます。
だからこそ、早く動くことが最も重要です。廃業も含めて比べたうえで判断してください。廃業とM&A、どちらを選ぶべきかをご覧ください。
※ 返済条件の変更や再生支援の取扱いは、金融機関の判断や制度によって異なります。実行にあたっては取引金融機関および専門家に必ずご相談ください。