金融機関が見ているもの
決算書の数字だけを見ているわけではありません。次のような点を総合して判断しています。
- 数字の推移と、その説明が経営者からなされるか
- 悪い情報が早く伝わるか
- 資金繰りの見通しを持っているか
- 設備投資の計画があるか
- 後継者が決まっているか
最後の項目は、近年特に重視されています。返済期間の途中で経営者が交代する見込みがあるなら、後継者が誰かを知りたいのは当然です。
日頃やっておくこと
1. 月次試算表を毎月提出する
最も費用対効果の高い取り組みです。決算のときだけ数字を出す会社と、毎月出す会社では、金融機関の見方がまったく違います。
経営者保証に関するガイドラインの「適時適切な情報開示」にも直結します。経営者保証に関するガイドラインの使い方をご覧ください。
2. 資金繰り表を作る
食品製造業は、原料の仕入と人件費が先行し、売掛金の回収が後になります。季節性があると、時期によって資金の状況が大きく変わります。
資金繰り表があれば、必要な時期に必要な資金を相談できます。急に「来月足りない」と言うより、はるかに良い対応が得られます。資金繰り表の作り方を参照してください。
3. 年1回、経営者自ら決算を説明する
税理士に任せきりにせず、経営者が自分の言葉で説明します。数字の意味を理解しているかどうかが伝わります。
4. 悪い情報を先に伝える
売上が落ちた、大口の取引先を失った、設備が故障した。後から知られるのが最も悪い結果を招きます。
先に伝えて対策を相談する会社は、信頼されます。
複数行取引の考え方
1行だけに依存すると、その金融機関の方針変更に左右されます。2〜3行と取引するのが一般的です。
メインバンクを明確にする
借入残高が最も多く、日常の決済も行う金融機関をメインとします。重要な相談はメインから始めるのが原則です。
各行に同じ情報を出す
行によって説明が違うと、必ず問題になります。金融機関同士は情報を共有します。
バランスを保つ
1行に集中しすぎず、かといって分散しすぎないこと。分散しすぎると、どこも主体的に支援しなくなります。
承継期の情報開示
親族内・社内承継の場合
早い段階で方針を伝えます。「◯年後に◯◯に承継する」という予告があるだけで、長期の設備資金も出しやすくなります。
後継者を面談に同席させ、段階的に説明を任せていきます。金融機関への説明をご覧ください。
M&Aを検討している場合
ここは慎重な判断が必要です。融資判断への影響を懸念される経営者もいらっしゃいます。
実務的には、具体的な相手が見えてから伝えるケースが多くなります。ただし、借入契約に一定の事由が生じた場合の通知や承諾に関する定めがあることもあるため、契約内容を先に確認してください。
業績が悪化したとき
食品製造業では、原材料の高騰や大口取引先の減少で、業績が急に変わることがあります。
やるべきこと
- 早期に報告する(決算を待たない)
- 原因を特定して説明する
- 対策と、その効果の見込みを示す
- 資金繰りの見通しを示す
「価格転嫁の交渉を◯社と進めており、◯月から◯%の改定を見込む」といった具体的な説明があれば、金融機関の対応は変わります。価格改定の交渉をご覧ください。
やってはいけないこと
- 決算を粉飾する
- 報告を遅らせる
- 他行に内緒で借りる
- 資金繰りが行き詰まってから相談する
設備投資の相談
食品工場では、まとまった設備投資が定期的に必要になります。次を準備して相談してください。
- 設備の年表(導入年・更新見込み・概算額)
- 投資によって何がどう変わるか(生産量、歩留まり、人員、品質)
- 投資回収の見込み
- 補助金を使う場合、その見込みとつなぎ資金の必要性
補助金は後払いのため、つなぎ資金の相談が必要になります。補助金は後払いをご覧ください。
担当者が代わったとき
金融機関の担当者は数年で異動します。そのたびに関係を作り直す必要があります。
会社の沿革、事業の特徴、設備の状況、承継の方針。これらをまとめた資料を用意しておくと、引き継ぎがスムーズになります。工場を見てもらうことも有効です。
※ 融資・保証の取扱いは金融機関や個別の事情によって異なります。実行にあたっては、取引金融機関および専門家にご確認ください。