個人保証が承継を止める
「会社は継いでもいいが、自宅まで担保に入るのは」。この一言で、社内承継が止まることがあります。親族内承継でも、配偶者が反対する理由になります。
金額の問題ではなく、「万一のとき、家族の生活まで失う」という不安が本質です。ここを解かなければ、後継者は前に進めません。
外せる可能性がある
近年、経営者保証を求めない、あるいは解除する取り扱いが広がっています。その拠り所となるのが経営者保証に関するガイドラインです。
法律ではなく自主的なルールですが、多くの金融機関が対応の指針としています。経営者保証に関するガイドラインの使い方で詳しく扱っています。
整えるべき3つの条件
ガイドラインでは、大きく次の3つが求められています。
条件1:法人と個人の資産・経理が分離されていること
食品製造業で最も引っかかりやすいのがここです。次のような状態がないか確認してください。
- 工場の土地建物が個人名義なのに、賃貸借契約がない
- 会社の車を経営者が私用で使っている
- 私的な費用が会社の経費に混ざっている
- 会社と経営者の間で、貸し借りが継続している
- 役員報酬が業績と無関係に決まっている
まず賃貸借契約を整え、私的費用を切り離す。ここから始めてください。個人名義の設備・車両・土地をどう整理するかをご覧ください。
条件2:財務基盤が強化されていること
- 自己資本が厚いこと
- 安定して利益が出ていること
- 借入に対して十分な返済能力があること
- 資産超過であること
すぐには変えられませんが、数年かけて改善する方向は示せます。品目別の採算を整備し、価格改定を実現し、不採算品目を見直す。利益計画の立て方をご覧ください。
条件3:適時適切な情報開示ができること
- 月次の試算表を作成し、提出できる
- 資金繰り表を作っている
- 年1回、決算内容を自ら説明している
- 業績の悪化を早期に報告している
これが最も着手しやすく、効果があります。月次試算表を毎月提出するだけで、金融機関の見方は変わります。銀行との付き合い方を参照してください。
進め方
- 上の3条件について、自社の現状を確認する
- 不足している点を、できるところから整える
- 承継の方針を金融機関に共有する(早い段階で)
- 保証の扱いについて協議を申し入れる
- 必要な資料を提出し、判断を待つ
3番目が重要です。承継の直前に相談するのでは間に合いません。数年前から「◯年後に承継する」と伝え、条件を整えていく過程を見てもらうことに意味があります。
承継時の3つのパターン
| パターン | 内容 |
|---|---|
| 双方とも保証なし | 先代の保証を解除し、後継者も保証しない(最も望ましい) |
| 後継者が引き受ける | 先代の保証を解除し、後継者が新たに保証する |
| 二重徴求 | 先代と後継者の双方から保証を取る(原則として避けるべき形) |
3番目は、原則として行わないこととされています。もし求められた場合は、その理由を確認してください。
M&Aの場合
第三者へ株式を譲渡する場合、個人保証は原則として解除されます。買い手が借入を引き継ぐ、あるいは返済するためです。
ただし、自動的に外れるわけではありません。金融機関との手続きが必要です。最終契約で、保証解除をクロージングの条件とすることが一般的です。最終契約書の要点をご覧ください。
すぐには外せない場合
条件が整うまで時間がかかる場合、次のような対応もあります。
- 保証の範囲を限定する(金額や期間)
- 一部の借入についてのみ保証を外す
- 新規の借入から保証を付けない形にする
- 事業承継時の保証解除に関する支援制度を利用する
最後の点は事業承継時の保証解除に向けた進め方で扱っています。
今日からできること
- 個人名義の資産について、賃貸借契約を整える
- 私的費用を会社の経費から切り離す
- 月次試算表を毎月、金融機関に提出する
この3つは数か月で実行できます。そして、条件1と条件3に直接効きます。
※ 保証の解除は金融機関の判断によるものであり、要件を満たせば必ず解除されるとは限りません。実行にあたっては取引金融機関および専門家にご相談ください。