どんな機関か
国の施策として各都道府県に設置されている、事業承継の相談窓口です。中小企業の事業承継全般を対象とし、親族内承継から第三者への引継ぎまで幅広く扱います。
特徴は3つあります。
- 相談は無料
- 中立的(特定の手法や相手を勧める立場ではない)
- 秘密は守られる
できること
1. 全体像の整理
最も価値があるのがここです。自社の状況を伝えると、どういう選択肢があるかを一緒に整理してくれます。「うちは廃業しかない」と思い込んでいた会社が、他の道を知るきっかけになります。
2. 課題の洗い出し
承継を進めるうえで何が障害になるかを、第三者の目で指摘してもらえます。株式の分散、個人名義の資産、個人保証、決算内容。自分では当たり前になっていることが、外から見ると論点だったりします。
3. 後継者人材のマッチング
後継者不在の企業と、経営に意欲のある個人をつなぐ取り組みも行われています。親族にも社内にもいない場合の選択肢の1つです。
4. 第三者への引継ぎの支援
M&Aによる引継ぎの相談にも対応しており、必要に応じて登録されている民間の支援機関を紹介する形が取られます。
できないこと・限界
公的機関であるがゆえの制約もあります。
- 実行フェーズの伴走は民間より薄い(交渉の代理、資料作成の細部まではカバーしにくい)
- 業界特有の論点への踏み込みには限りがある(食品衛生法に基づく営業許可の承継、HACCPに沿った衛生管理の体制、取引先の工場監査など)
- 相手先のネットワークは民間の専門会社ほど広くない場合がある
食品製造業の場合、2番目が実務上の分かれ目になります。営業許可の扱いを誤ると、引き渡し後に製造できない期間が生じます。食品衛生法の営業許可は引き継げる?は必ず押さえておいてください。
相談の流れ
- 電話またはウェブから相談を申し込む
- 面談(会社の状況、経営者の意向をヒアリング)
- 課題の整理と、進め方の提案
- 必要に応じて、専門家や民間の支援機関を紹介
初回面談に持って行くとよいのは、直近3期の決算書、株主名簿、借入の一覧です。この3点があれば、話が具体的に進みます。
民間との使い分け
おすすめの使い方は、入口として使うことです。
- 公的機関:選択肢の整理、課題の洗い出し、方向性の決定
- 民間:相手探し、交渉、契約、業界特有の論点への対応
いきなり1社の民間に相談すると、その会社が得意な道に話が寄っていきます。まず中立的な場で全体像をつかんでから、実行の担い手を選ぶ。この順番が安全です。
民間の選び方は総合仲介と業界特化とFAと仲介の違いにまとめています。
相談することのハードルを下げる
「まだ何も決まっていないのに相談してよいのか」と迷われる方が多いのですが、決まっていない段階のほうが有益です。決まってから行くと、選択肢を整理する意味が薄れます。
相談したからといって、何かを決めなければならないわけでもありません。まず話を聞くだけ、という使い方で構いません。