減価償却と返済のズレ
設備を借入で購入した場合、次の2つが同時に進みます。
- 減価償却:費用として計上される(資金は出ていかない)
- 元本返済:資金が出ていく(費用にはならない)
この2つの金額が一致していれば問題ありませんが、返済期間が償却年数より短いと、資金が先に出ていきます。
具体例
耐用年数10年の設備を、5年返済で借りた場合。
- 費用(減価償却):10年かけて計上
- 資金(元本返済):5年で全額支出
最初の5年間は、費用として認められる額より多くの資金が出ていきます。利益が出ていても資金が残らない状態になります。
返済期間の考え方
原則は、設備の使用可能年数に近い期間で借りることです。そうすれば、減価償却と返済がおおむね対応します。
ただし、金融機関は返済期間を長くすることに慎重な場合があります。次の材料を用意して交渉してください。
- 設備の実際の使用可能年数(同種設備の使用実績)
- 投資による効果の見込み(生産量、歩留まり、人員削減)
- 返済原資の試算(利益+減価償却費)
- 資金繰り表(返済後の手元資金の推移)
返済原資の考え方
元本返済の原資は、大まかに次で見ます。
税引後利益 + 減価償却費
この金額が年間の元本返済額を上回っていれば、資金は回ります。下回っていると、他の資金で穴埋めすることになります。
食品工場では、この計算を設備投資の判断前に必ず行ってください。「補助金が出るから」「設備が古いから」だけで決めると、返済で苦しみます。
食品製造業ならではの注意
1. 季節性を織り込む
返済は毎月一定額ですが、売上と回収には季節変動があります。閑散期に返済負担が重くのしかかることがあります。
資金繰り表で、最も資金が薄くなる月の返済後の残高を必ず確認してください。資金繰り表の作り方をご覧ください。
2. 補助金は後払い
補助金を活用する場合でも、設備の代金は先に全額支払います。補助金の入金は後です。この間のつなぎ資金が必要になります。補助金は後払いをご覧ください。
また、補助金が入金されたら、その分を繰上返済するのか、手元に残すのかを事前に決めておいてください。
3. 複数の設備の返済が重なる
冷凍機、包装機、検査機。それぞれ別のタイミングで借りると、返済が重なる時期が生まれます。
設備の年表を作り、投資と返済のスケジュールを一覧にすることをおすすめします。設備の寿命から逆算するを参照してください。
承継を見据えた設定
承継の数年前に大きな設備投資をする場合、返済が後継者に引き継がれます。
考えるべきこと
- 後継者が引き継ぐ時点で、残債はいくらか
- その返済を、承継後の利益で賄えるか
- 個人保証をどうするか
- 承継後に別の設備更新が必要にならないか
「更新してから譲る」ことは価値を高めますが、返済負担も引き継がれます。バランスを見て判断してください。老朽化した工場・設備をどう引き継ぐかをご覧ください。
返済が重いと感じたら
1. 借り換えを相談する
複数の借入をまとめ、返済期間を延ばす。金利や条件は変わりますが、月々の負担は軽くなります。
2. 据置期間を設ける
新規の借入では、一定期間元本の返済を据え置く設定ができる場合があります。設備が本格的に稼働して効果が出るまでの期間に有効です。
3. リースを検討する
設備によっては、リースのほうが資金負担の平準化に適することがあります。ただし総額では割高になることが多く、資産として残らない点にも留意してください。
投資判断の順序
- その設備は本当に必要か(工程改善で代替できないか)
- 投資によって何がどれだけ改善するか、数字で出す
- 返済原資(利益+減価償却費)を試算する
- 返済期間と月々の返済額を確認する
- 資金繰り表に入れ、最も薄い月を確認する
- そのうえで決める
1番目を飛ばさないでください。工程改善が先、設備は後です。省人化投資の順序をご覧ください。
※ 融資・保証の取扱いは金融機関や個別の事情によって異なります。実行にあたっては、取引金融機関および専門家にご確認ください。