なぜ承継時が機会なのか
金融機関にとって、経営者の交代は与信を見直す節目です。このタイミングでなら、保証の扱いを議題にしやすくなります。
また、経営者保証に関するガイドラインでは、前経営者と後継者の双方から保証を取ること(二重徴求)は原則として行わないとされています。承継時には必ず何らかの判断がなされるため、協議の入口として自然です。
時系列での進め方
3年前:条件を整え始める
- 個人名義の資産について、賃貸借契約を整える
- 私的費用を会社の経費から切り離す
- 月次試算表の提出を習慣にする
- 資金繰り表を作り始める
この時点では、まだ保証の話を持ち出さなくても構いません。実績を積むことが目的です。
2年前:承継の方針を伝える
「◯年後に、◯◯に承継する予定である」と伝えます。あわせて事業承継計画書を示すと、話が具体的になります。
このとき、「保証の扱いについても、その時期に相談させてほしい」と予告しておきます。突然の申し入れより、はるかに受け止められやすくなります。金融機関への説明をご覧ください。
1年前:正式に協議を申し入れる
次の資料を揃えて協議します。
- 事業承継計画書
- 直近3期の決算書と試算表
- 資金繰り表
- 設備の年表と投資計画
- 3要件についての自社の状況説明
後継者を同席させ、後継者自身が事業計画を説明することが有効です。
承継時:手続きを行う
解除が認められた場合、書面での手続きが必要です。口頭の合意だけで安心しないでください。解除された旨の書面を必ず受け取ります。
使える支援制度
事業承継時の保証解除を後押しする公的な仕組みがあります。代表的なものとして、次のような枠組みがあります。
- 事業承継時に保証を不要とする信用保証の制度:一定の要件を満たす場合に、経営者保証を求めない保証を利用できる
- 専門家による確認を受ける仕組み:外部の専門家が要件充足を確認し、金融機関の判断を支援する
制度の名称や要件は改正されることがあります。取引金融機関または信用保証協会に、最新の内容を確認してください。信用保証協会の保証をどう使うかもご覧ください。
複数行と取引がある場合
メインバンクから協議を始めるのが原則です。メインが応じれば、他行も追随しやすくなります。
逆に、他行から先に話を持ち込むと、メインとの関係に影響することがあります。順序を守ってください。
解除できないと言われたら
1. 理由を確認する
3要件のどこが不足しているのかを、具体的に聞いてください。「財務基盤が弱い」という答えなら、どの指標がどの水準になれば検討してもらえるかまで確認します。
2. 部分的な対応を求める
- 保証の範囲を金額で限定する
- 保証の期間を限定する
- 一部の借入についてのみ解除する
- 新規の借入から保証を付けない形にする
- 自宅を担保から外す
全部か無かではありません。段階的な対応を求めることができます。
3. 時期を決めて再協議する
「◯年後に、この指標が◯◯になったら再度協議する」という約束を取り付けます。目標が明確になれば、経営の指針にもなります。
後継者が保証を引き受ける場合
解除が難しく、後継者が保証を引き受けることになった場合、次を確認してください。
- 保証の金額に上限があるか
- 自宅が担保に含まれるか
- 保証債務の履行時に、一定の資産を残せる仕組み(ガイドラインに定めがあります)
- 将来、要件を満たした場合に見直す余地があるか
3番目は、万一のときに生活の基盤まで失わないための仕組みです。後継者の不安を和らげる材料になります。経営者保証に関するガイドラインの使い方をご覧ください。
先代の保証は必ず外す
後継者が保証を引き受ける場合でも、先代の保証は解除してもらってください。経営から退いた人が保証を負い続けるのは、ガイドラインの考え方にも反します。
ここが残ったまま先代に相続が発生すると、保証債務が相続の対象になり、家族に影響します。相続が起きてからの流れをご覧ください。
※ 保証解除の可否や支援制度の要件は、金融機関の判断や制度改正によって異なります。実行にあたっては取引金融機関・信用保証協会および専門家にご確認ください。