なぜ順序が重要なのか
設備を入れても効果が出ない典型的な理由は、次のとおりです。
- 律速工程が別のところにあった:改善した工程が速くなっても、全体は変わらない
- そもそも不要な作業だった:機械化する前になくせた
- 洗浄・段取りの負担が増えた:削減した人時が相殺された
- 稼働率が低いまま:能力を上げても、止まっている時間が変わらない
いずれも、投資の前に検討していれば防げたものです。
順序1:作業をなくせないか
最も効果が大きく、費用もかかりません。
- 不要な検品・確認をやめる
- 二重の記録をやめる
- 運搬・持ち替えを減らす(レイアウト変更)
- 包装の仕様を簡素にする
- 品目数を絞る
- 過剰な品質基準を見直す(安全に関わらない範囲で)
「なぜこの作業をしているのか」を問い直してください。慣習として続いている作業が見つかります。
品目数を絞るをご覧ください。
順序2:工程を改善できないか
- 作業台の高さ・配置の見直し
- 治具・道具の工夫
- 作業手順の標準化(速い人のやり方に合わせる)
- 材料の供給方法の改善
- 段取り替えの短縮
- ボトルネック工程の特定と改善
段取り替えの短縮が、最も費用対効果が高いことがあります。段取りが稼働時間の2割を占めているなら、それを半減させるだけで生産能力が1割増えます。
段取り替え時間の短縮とライン稼働率の見方をご覧ください。
順序3:部分的に機械化できないか
全自動でなくても、負担の大きい部分だけを補助する方法があります。
- リフター、昇降台車(持ち上げの補助)
- 簡易な搬送コンベア
- 半自動の包装機
- 電動の運搬機器
数十万円で効果が出ることがあります。まずここから検討してください。
順序4:本格的な自動化
上記をやったうえで、それでも人がかかる工程に投資します。計量・包装の自動化と人手不足を自動化でどこまで補えるかをご覧ください。
投資判断の手順
ステップ1:現状を測る
- その工程にかかっている人時
- 不良率、歩留まり
- 停止時間と理由
- 段取り替えの時間
- 過剰充填の量(計量工程の場合)
測らずに投資判断をすると、効果の検証もできません。
ステップ2:ボトルネックを特定する
複数の工程がある場合、最も遅い工程が全体の速度を決めます。
ボトルネックでない工程に投資しても、生産量は増えません。
見つけ方
- 仕掛品が溜まっている工程の直後
- 常にフル稼働している工程
- 他の工程が待っている工程
ステップ3:効果を試算する
| 効果 | 算定方法 |
|---|---|
| 人件費の削減 | 削減人時 × 時間単価 × 年間日数 |
| 原料費の削減 | 歩留まり改善分 × 原料単価 × 年間使用量 |
| 不良の削減 | 不良率の改善 × 生産量 × 製造原価 |
| 生産量の増加 | 増加分 × 限界利益 |
| エネルギー削減 | 効率改善分 × エネルギー単価 |
ステップ4:増える費用を見込む
- 減価償却費
- 電気代
- 保守・修繕費
- 洗浄・段取りにかかる時間
- 教育の時間
- 設置工事(電源、エア、基礎、排水)
4番目を必ず見込んでください。食品工場の投資判断で最も見落とされる項目です。
ステップ5:投資回収年数を出す
回収年数 = 投資額 ÷ 年間の効果額
これが設備の使用可能年数より短いかを確認します。あわせて、借入の返済期間との整合も見てください。設備資金の返済計画をご覧ください。
選定時の確認点
- 自社の製品でテストする
- 洗浄・分解を実演してもらう
- 段取り替えの時間を確認する
- 設置スペースと工事の要否
- 保守体制(故障時の対応速度、部品の供給)
- 操作を複数人が覚えられるか
2番目が食品工場では決定的です。洗浄に時間がかかる設備は、少量多品種の工場では使えません。
導入後にやること
- 効果を測定する(導入前の数字と比較)
- 操作できる人を複数育てる
- 洗浄・段取りの手順を文書化する
- 日常点検の項目を決める
- 消耗部品の交換周期を決める
2番目を怠ると、新たな属人化が生まれます。多能工化とスキルマップをご覧ください。
補助金との関係
省力化・生産性向上のための投資には補助金が使える場合があります。ただし、補助金の公募に合わせて必要のない投資をしないことが重要です。
必要な投資の時期を、補助金の公募時期に合わせる。この順序を守ってください。省力化投資への補助をご覧ください。
承継の観点
省力化が進んだ工場は、人員が減っても生産を維持できます。人材確保が困難な業界で、これは大きな価値です。
ただし、承継直前の大型投資は、返済負担を後継者に引き継ぐことになります。時期の判断は慎重に行ってください。設備の寿命から逆算するをご覧ください。