設備台帳をつくるところから

更新の議論は、現状把握なしには始まりません。まず次の一覧をつくります。

  • 設備名、導入年、メーカー、型式
  • 主要な修繕の履歴と、直近の修繕費
  • 部品供給の見通し(すでに製造終了になっていないか)
  • リース・割賦の残債と契約終了時期
  • その設備が停止した場合に、生産できなくなる商品と売上

最後の項目が、優先順位を決めます。止まったときの影響が大きく、部品供給の見通しが立たない設備から手を打つのが原則です。

「壊れてから」は最も高くつく

食品工場では、冷凍冷蔵設備やボイラー、殺菌工程の設備が止まると、製造そのものが止まります。緊急の入れ替えは、価格も納期も不利になり、その間の欠品対応も必要になります。

修繕費が年々増えている設備は、更新と修繕継続のどちらが安いかを一度計算してみてください。数年分の修繕費を積み上げると、更新費用に近づいていることがあります。

更新計画は「投資」ではなく「説明」のために書く

承継を視野に入れる場合、更新計画には二重の意味があります。一つは実際に投資するため。もう一つは、買い手や後継者に対して、必要な投資額を明示するためです。

「あと数年で大きな投資が要りそうだが、いくらかは分からない」という状態は、買い手にとって最も見積もりにくいリスクです。逆に、見積書を取り、優先順位と時期を整理して示せれば、それは減点ではなく前提条件になります。価格交渉の土台に載せられます。

補助金の考え方

設備投資・省エネ・省人化・IT導入・事業承継やM&Aに関連する補助金など、食品製造業が活用できる可能性のある制度は複数あります。ただし、対象・要件・補助率・公募時期は年度によって変わります。

実務上の注意点は次のとおりです。

  1. 採択されてからの発注が原則 交付決定前に発注・契約すると対象外になることがあります。
  2. 自己資金と資金繰り 多くは精算払いのため、いったん全額を支払う必要があります。
  3. 事業計画の質 設備を入れて何がどう改善するかを、数字で説明できるかが問われます。
  4. 採択後の報告義務 実績報告や一定期間の財産処分の制限があります。承継のタイミングと重なる場合は事前確認が必要です。

4つ目は承継との関係で重要です。補助金で取得した設備には処分の制限がかかることがあり、事業譲渡などで所有者が変わる場合は手続きが要ります。

投資の前にやることがある

省人化や自動化の投資を検討される際、先に確認していただきたいのが工程そのものの見直しです。段取り替えや作業標準の改善で解決できることに設備投資をすると、効果が出ないまま固定費だけが増えます。

順序としては、①工程と作業の改善 → ②それでも残るボトルネックの特定 → ③そこへの投資、が確実です。

承継スキームとの関係

株式譲渡であれば、設備の所有者は法人のままなので手続きは単純です。事業譲渡の場合は、設備ごとの移転手続き、リース契約の承継、補助金設備の取扱いを個別に確認する必要があります。

工場や土地が社長個人の所有になっている場合は、承継後の使用条件(賃貸借にするのか、譲渡するのか)を早めに整理しておいてください。ここが未整理のまま交渉に入ると、後半で必ず論点になります。

※ 補助金の対象・要件・補助率・公募時期は年度によって異なり、制度そのものが変更・終了することもあります。活用を検討される際は、必ず最新の公募要領および管轄窓口・専門家にご確認ください。