電子化の効果
- 記入の手間が減る
- 記録漏れがなくなる(自動記録の場合)
- 集計・傾向分析ができる
- 探す手間がなくなる
- 保管スペースが不要
- 異常時に通知できる
- 監査・買収監査で速やかに提示できる
2番目と3番目が本質的な価値です。紙のままでは、集計に手間がかかり、傾向が見えません。
電子化する順番
優先度1:温度記録(自動記録)
最も効果が大きく、費用も抑えられます。
- 冷蔵庫・冷凍庫の庫内温度
- 加熱工程の温度
- 保管中の温度
センサーを設置すれば、人が測りに行く必要がなくなります。記録漏れもなくなり、異常時には通知もできます。
温度管理のIoT化をご覧ください。
優先度2:設備の稼働記録
金属検出機の作動確認、加熱機器の温度履歴。機器の出力を保存する形で電子化できるものがあります。
優先度3:日常点検・チェック記録
始業前点検、清掃記録、健康確認。タブレットやスマートフォンで入力する形にします。
ここは人が入力するため、現場で使えるかどうかが導入の可否を決めます。
優先度4:製造記録
ロット、投入量、生産数、不良数。原価計算やトレーサビリティにも使えるデータです。
生産実績の自動収集とトレーサビリティの仕組みをご覧ください。
現場で使える機器の条件
1. 濡れ・汚れに耐えるか
食品工場では、水がかかる、手が濡れている、洗剤が飛ぶという環境があります。防水・防塵の等級を確認してください。
2. 手袋で操作できるか
ゴム手袋をしたままタッチパネルが反応するか。実際に試してから決めてください。
反応しない場合、手袋を外して入力することになり、衛生管理上の問題が生じます。
3. 洗浄・消毒に耐えるか
アルコールや次亜塩素酸で拭ける素材か。頻繁に消毒する環境では重要です。
4. 低温環境で使えるか
冷凍庫内では、バッテリーの持ちが悪くなり、結露も起きます。使用可能な温度範囲を確認してください。
5. 破損時のリスク
製造区域に持ち込む機器は、破損片が製品に混入するリスクがあります。
- 耐衝撃性のあるケース
- 持ち込む区域を限定する
- 破損時の対応手順を決めておく
異物混入を防ぐ体制をご覧ください。
入力の負担を減らす
- 選択式にする(自由入力を減らす)
- 初期値を設定する(前回の値、標準値)
- 異常時だけ詳しく入力する形にする
- バーコード・QRコードを使う
- 入力する場所を作業動線上に置く
紙より入力が面倒なら、使われません。導入前に、実際に入力する人に試してもらってください。
紙をやめるタイミング
二重管理を避けることが重要です。
- 並行期間を設ける(1〜2か月)
- 電子記録に漏れがないか確認する
- 問題がなければ、紙を完全にやめる
- やめたことを全員に周知する
並行期間を長く取りすぎないでください。負担が増えたままになります。
保存とバックアップ
- 保存期間を決める(製品の期限を考慮して)
- バックアップの方法を決める
- クラウドの場合、サービス終了時のデータ移行を確認する
- 誰がアクセスできるかを管理する
- 改ざんできない仕組みか(記録の信頼性)
5番目は監査で問われることがあります。誰がいつ入力・修正したかの履歴が残る仕組みが望ましい形です。
行政・取引先への対応
電子的な記録でも、求められたときに速やかに提示できることが必要です。
- 印刷して出せるか
- 期間を指定して抽出できるか
- 担当者以外も操作できるか
3番目が重要です。監査当日に担当者が不在で、記録を出せないという事態を避けてください。
費用の目安
| 対象 | 費用感 |
|---|---|
| 温度センサー(数台) | 初期数万円+月額 |
| タブレットでの記録(クラウド型) | 初期数十万円+月額 |
| 生産管理と連携したシステム | 数百万円〜 |
まず温度から始めるのが、費用対効果の面でも確実です。
承継の観点
記録が電子化されていると、買収監査で速やかに提示できます。「3年分の温度記録を見せてください」と言われて、その場で出せるかどうかで印象が変わります。
また、記録の運用が特定の人に依存しなくなります。衛生管理の記録の残し方をご覧ください。