導入前に決めること
「何を解決したいか」を1つに絞ってください。すべてを解決しようとすると、失敗します。
食品工場でよくある目的は次のとおりです。
- 原価を品目別に把握したい
- ロットの追跡を速くしたい
- 在庫の実態を把握したい
- 生産計画の作成を効率化したい
- 受注から出荷までの転記をなくしたい
- 実績データを自動で集めたい
目的が違えば、選ぶべきシステムも違います。
その前にやること
システムを入れる前に、次を整理してください。これができていないと、システムを入れても使えません。
- 品目コードの整備:品目に一意の番号を振る
- 配合表(レシピ)の整備:品目ごとの原料と使用量
- 原材料コードの整備
- 工程の定義:どの工程を、どのラインで行うか
- 取引先コード
1番目と2番目が最も時間がかかります。品目が数百ある工場では、数か月かかることもあります。
ただし、この整理自体に価値があります。システムを入れなくても、原価計算の土台になります。原価計算を始めるをご覧ください。
食品工場に特有の要件
一般的な製造業向けのシステムでは対応できないことがあります。
1. 賞味期限・消費期限の管理
- 製造日から期限を自動計算できるか
- 先入先出を管理できるか
- 期限切れ間近を警告できるか
2. ロット管理とトレーサビリティ
- 原料ロットと製品ロットを紐づけられるか
- ある原料ロットが、どの製品に使われたか追えるか(フォワード)
- ある製品が、どの原料から作られたか追えるか(バックワード)
トレーサビリティの仕組みをご覧ください。
3. 歩留まり・ロスの管理
投入量と産出量の差を管理できるか。食品工場では必須の機能です。
4. 重量とバラの併用
kg で管理する品目と、個数で管理する品目が混在します。単位換算に対応できるかを確認してください。
5. アレルゲン情報
原料のアレルゲン情報を管理し、製品のアレルゲンを自動集計できるか。アレルゲン管理と表示をご覧ください。
6. 規格書の出力
取引先に提出する規格書を作成できるか。実務の負担が大きい部分です。
7. 表示の作成
原材料名、栄養成分の計算・出力ができるか。食品表示法の基本をご覧ください。
選定の進め方
1. 要件を整理する
上記のうち、自社に必須のものと、あれば良いものを分けてください。すべてを求めると、高額になります。
2. 複数社から提案を受ける
最低3社。食品業界での導入実績を必ず確認してください。
3. デモを見る
自社の実際の品目・配合でデモをしてもらってください。標準のデモでは、自社特有の問題が見えません。
4. 導入企業に話を聞く
可能であれば、同規模・同業態の導入企業を紹介してもらい、実際の使い勝手を聞いてください。
5. 費用の全体を確認する
- 初期費用(ライセンス、導入支援、カスタマイズ)
- 月額・年額の利用料
- 保守費用
- ハードウェア(端末、ネットワーク、プリンタ)
- 教育の費用
- 将来の機能追加の費用
カスタマイズは慎重に。費用がかさむうえ、将来のバージョンアップの障害になります。
導入を成功させる進め方
1. 現場を巻き込む
選定の段階から、実際に使う人に参加してもらってください。事務所だけで決めると、使われません。
2. 段階的に導入する
すべての機能を一度に稼働させないでください。
- マスタ整備
- 受注・出荷から
- 生産実績
- 在庫・ロット管理
- 原価計算
1つずつ定着させてから次へ進めてください。
3. 並行運用の期間を決める
既存のやり方と並行する期間を設けますが、期限を決めてください。ずるずる続けると、二重の負担が定着します。
4. 複数人が使えるようにする
導入担当者しか操作できない状態を避けてください。マニュアルを作り、複数人が扱えるようにします。
よくある失敗
- マスタが整備できず、稼働できない(最も多い)
- 現場が使わず、結局Excelに戻る
- 入力の負担が増えただけ
- カスタマイズしすぎて、更新できなくなる
- 担当者が退職して、誰も分からなくなる
1番目を避けるため、マスタ整備を先にやってください。システム導入と同時に始めると、必ず遅れます。
承継の観点
属人化したExcelが業務の中核にある状態は、承継の大きな障害です。作った人しか直せず、その人が抜けると業務が止まります。
システム化は、この属人化を解く手段の1つです。承継時のシステム引き継ぎをご覧ください。